2012年04月10日(火) |
白花(シラハナ)への手紙(仮)・61 |
見慣れないようで見たことがあるような白花の紋様。 「あれ? ここじゃありませんでした?」 コバルトブルーの瞳が不思議そうにこちらをのぞいている。ふわふわのハニーブロンド。年はわたしと同じくらいなのかな。でも着物の上からもわかるスタイルの良さはなんというか、その、コンプレックスを刺激させてられてしまう。 「……うーん」 目の前というか、目下の男の子との一件があった後だと特に。 「申し遅れました。わたしの名前はパティ・パイ。ここ、大衆入浴施設『藤の湯』の従業員です!」 元気で明るいはきはきとした声。きっと従業員さん件、看板娘さんなんだろうな。 話をもどすけれど、クレイアから渡された地図は確かにここであっていた。目の前の男の子に活を入れるのにもってこいだからとも言っていたし、お風呂に入ってこいって意味なのかな。 「はじめまして。わたしは宮本伊織……イオリ・ミヤモトです」 この国の流儀にのっとって自己紹介をする。 「イオリさんですね。入浴施設は初めてですか?」 「はい」 正確にはちょっと違う。そもそも大衆浴場は白花の文化だし、家にだってお風呂はあった。あったけど、『白花に入れば白花に従え』というお父さんのよくわからない格言で強制的に地元の浴場に引き出されていた。体をきれいにすることはなんの異論もないしさっぱりするから気持ちいいのだけれど。人が集まれば当然ながらそのぶんだけ人の体型を目のあたりにするわけで。 「これでもわたしはれっきとした女です」 視界をはるかかなたの故郷に向けて、自己紹介に付け加えておいた。髪を伸ばせば少しは年頃の女の子らしく見えるのかな。そんなことを思いながら。 「お近づきの印にどうぞ」 瓶につめられた茶色の飲み物を差し出しながら、さっきと同じ青の瞳が優しげにのぞいている。本当に目の前の女の子はこの施設の看板娘さんだった。
過去日記
2011年04月10日(日) 「クール系お題」その7 2010年04月10日(土) 委員長のゆううつ。9 2005年04月10日(日) 「SkyHigh,FlyHigh!」Part,50UP 2004年04月10日(土) 「EVER GREEN」5−10UP
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