2012年04月04日(水) |
白花(シラハナ)への手紙(仮)・56 |
「お土産?」 首をかしげる彼に、お願いしますと伝えた。期日をあらためて施療院に伺うと言伝はしたものの、手土産の一つもなければ失礼だろう。そう思ったからだ。それを伝えると、ユータスさんはそう言うものなのかと首をひねった。 「私の生まれた場所ではそうなんですけど、こちらでは違うんですか?」 「よくわからない。兄弟子たちには聞いてない」 相変わらず首を捻ったままの男の子。兄弟子という言葉が気になって尋ねてみるとなんと彼はすでにどこかのお弟子さんなのだそうだ。 「すごい! そんな若さで工房を持っているんですか?」 成り行きとはいえ身近にそんな人がいるなんて思ってもみなかった。中ば興奮して尋ねるとそれも少し違うと言われた。 なんでも弟子入りしたのは早かったものの、今は卒業制作に明け暮れている最中なんだそうだ。 作ろうとは思っていても、何を作ればいいのかわからない。デザインのヒントになればと山を散策中にペルシャを見つけ、そのままうたた寝していたところを私に発見されたと言うわけだ。 「じゃあ、自分の工房は持たないんですか?」 「……よくわからない」 周りには独立しろとつつかれているらしい。だけど、自分から率先して何かを作りたいという情熱はなく。兄弟子たちに教わりながら技術を習得する日々が性にあっているそうで。 「そういうものなんですか?」 「……よくわからない」 さっきと同じ返事が返された。 「あんたはどうなんだ?」
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