2012年03月11日(日) |
今宵、魚のみる夢は(仮)・10 |
父親を呼ぶことは簡単だった。音を奏でればいいだけのことだから。 不思議な顔するんだね。意外かもしれないけど海と音って密接なつながりがあるんだよ? あと月の精霊とも。 本性をおさえられたとはいっても逃げようと思えば逃げれた。でもそうしなかったのはテティスのことが気になったから。あとは考え事をしていたからかな。 海と人間は相容れないのだろうか。 彼女の本当の気持ちはどこにあったんだろう。 そんなことを考えながら密室で一晩を過ごしていると、ふいに部屋の鍵があけられた。 「テティ――」 「静かにして」 言葉を遮られて強引に手を引かれて。一体どうやってここまで来たのかはわからなかった。 「ごめんなさい」 でも彼女の声が。息づかいが。本物だと言うことをものがたっていた。 包みの中から取り出されたのは光を放つ魚――オレ自身だった。精霊であれば姿は見えても実体がない、あっても常時はとれないから意味がなかったかもしれない。けど悲しいかな。魚には妖精の血が流れていて。実体があったんだ。実体をやられても本性をやられても同様にダメージを受ける。もちろんそれを上回る体力と再生能力もあるんだけどね。 とにもかくにもこうして本性をとりもどしたんだ。こんなところにいる理由はなかった。 けれど。 「君は知っていたの? こうなることを」 「本当にリールの息子とは思っていなかったの」 それは肯定の声。
過去日記
2006年03月11日(土) テレビを見て 2004年03月11日(木) お金
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