2012年03月10日(土) |
今宵、魚のみる夢は(仮)・9 |
結婚の誓いをよく思わない外野が邪魔をする。それはどの種族でもよくあること。 けどここまでされるとは思わなかった。 「はじめから知っていたの?」 やってきたのは彼女の父親。つまりは大臣と無数の兵士だった。 「私は――」 「人間には人間の伴侶が望ましい。そして君の父上も同じことを考えているのでは」 彼女の声におおいかぶさるように。父親が淡々と声をあげる。 「有能な獣の肉を食べれば富と英知が養われるそうだがそれは本当かね」 「それがどうした」 「君達は本性を砕かれると泡になって消えてしまうそうだね」 「オレを脅迫するつもりか」 「まさか。海の種族とは友好的な関係を築いていきたいのだよ」 そう言いつつも周囲には複数の兵士達がいた。正直な話、躊躇さえしなければ普通の人間程度なら楽にやりすごせる。でもオレ達にとっての急所、本性を砕かれれば一瞬にして滅びてしまう。 本性って何かだって? 言葉通り。生まれながらの性質。本来の性質。生まれもっての姿ってこと。 よく考えてみるべきだった。女の子が毎晩水槽に語りかけてて、同じ頃から得体の知れない男が現れて。知識のある者だったら考えればわかりそうなものなのに。逆説をとれば、それだけ当時のオレは浅はかだった――子どもだったんだ。 「父君と話がしたい。聞き入れてもらえますな?」 魚の父親は良くも悪くも種族を超えて有名だった。父親が有名だと子孫まで調べあげられても何ら不思議はないのにね。子どもは本当に辛いよ。うん。
過去日記
2006年03月10日(金) 「SkyHigh,FlyHigh!」Part,96UP 2004年03月10日(水) 速攻型
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