2012年03月08日(木) |
今宵、魚のみる夢は(仮)・7 |
約束っていうのはそう簡単にしてはいけない。破ったらそれ相応の報いがあるからね。指を詰められたり、最悪だと命を奪われかねない。 え。君の国では違うの? シリヤも? オレのところが特別だって? そんなはずないだろ。 話をもどそう。 約束は、ある意味で自らにたてた誓いになる。誓いを破った者はそれ相応の報いをうける。 「お見合い?」 その言葉を聞いたのはさらに一年がたってからのことだった。 「婚約者がいるの。近々結婚させられるんですって」 この頃には彼女は淑女と呼んでも差し支えない年頃になっていた。婚約者という言葉はオレの世界でもあった。家と家の結束を強めるために行う結婚の儀式だよね。でもオレは、オレの家はそんなまどろっこしいことはしない。惚れた女は自分で口説く。それが男ってもんだろ。父親もそうだったし、言われなくても海の男ならそれくらい知ってて当然だ。なんだよ。その意外そうな目は。君達、オレをなんだと思ってるの? 「その人と会ったことは?」 「あるわけないに決まってるじゃない」 なら君は会ったこともない人間の妻になるの? そう訊くと寂しそうな顔をしてうなずいた。 「人間の世界では、そんなしきたりがあるの?」 「私の家ではそうみたい。ごめんなさい。約束守れなくなっちゃったわね」 「君はそれでいいの?」 「いいもなにも、お父様が決めたことだから仕方ないじゃない」 寂しそうな笑顔。それは本来なら快活な彼女が決してみせることがない諦めの色。 「君自身の気持ちは?」 彼女の瞳がゆらぐのをオレは見過ごさなかった。 「私は――」 「今夜、オレはここにいる」 彼女が 「君の気持ちが固まったら教えてほしい」
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