2012年02月11日(土) |
白花(シラハナ)への手紙(仮)・28 |
見つけてしまった以上、届けないわけにはいかない。 男子が歩いて行った方を目指して草村を走り抜ける。時間はそんなにたってないからすぐ追いつけるはずだったのに。 「なんでいないの?」 体格と歩幅の違いなんだろうか。道はあってるはずなのになかなか追いつけない。それとも走っていったとか? でも返さないわけにはいかないし。 歩いていたのが早歩きに、早歩きから走りだして。しばらくすると街はずれの変な場所に出た。 不思議な雰囲気の場所。森、なんだろうか。 光の玉のようなものがあちらこちらに浮かんでいるようにも見える。まるでおとぎの国に来たみたい。そうこうしているうちに霧まで出てきて。ここはいったん引き返すべきか迷っていると、目の前を小さなものが通っていった。 魚……鳥? 手乗りサイズのそれがふよふよと浮かんでいて。目をこらしてみると右も左も魚もどきだらけ。そして、そんな中に男子はいた。 「あの……?」 正確には獣だらけの中で眠っていた。一本の木にもたれかかって瞳を閉じて。ご丁寧に寝息までたてている。その隣にはスケッチブックが置かれていた。ページが開いたままになってたからそっと視線をやると、目の前にいる魚もどきが描かれていた。もしかして獣を描くためにここまで来たのかな。だったらちょっと可愛いかもしれない。 霧が出ている以上無理に出歩かないほうがいいだろう。男子の隣にちょこんと座って魚もどきをながめることにした。 二人の男女の周りを鳥だか魚だかわからないものがふよふよと浮かんでいく。それは不思議で神秘的な光景。後になって、空飛ぶお魚のことを『ペルシェ』と呼ぶこと、普段なら人に危害を加えるような怪物はほとんど現れないということを知る。言い換えればそれは、よくも悪くも運がよかったということになる。
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