つれづれ日記。
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2012年01月12日(木) たまにはお花見を(仮)5

 厨房に人はいない。当然だ。時刻は真夜中なのだから。
「ここに何の用があるんです」
 周囲に視線を巡らせても人はおろか鼠一匹もいない。当然だ。ここは由緒正しきブランネージュ城の厨房なのだから。
「招待を受けてるんだ」
 だが目前にいる男はそんなことは関係ないとばかりに声をはりあげる。
「シリヤ。いるかい?」
 それが彼を呼び出した人物の名前らしい。もっともリザの成り立ちが人間の
それとは異なるためそうとは言い難いのだが。
「シリヤー」
 加えてリザがどれだけ呼びかけても返事はまったくないのだが。
「ここにそのシリヤという方がいるんですか?」
「いるはずなんだけど」
 見かねたフォルトゥナートが声をかけるも返ってきたのは頼りなさげな声がひとつ。
「シ――」
「何度も呼ばなくても聞こえていますわ」
 声とともに現れたのは柔らかくしなやかな身体を持つ女性だった。
 否。女性と呼ぶのには少々語弊があるのかもしれない。ピーコックブルーの瞳に腰まで届く長い黒髪。それだけを見れば人間であるも、異なっていたのは身体を覆う灰色の毛並みだった。褐色の肌の人間はいるのかもしれない。だがところどころに縞模様の入ったそれは人と呼ぶよりも獣――猫にふさわしいものだ。もっとも女性や目前のリザですらも膨大な魔力と引き替えに視力を失ったフォルトゥナートにとっては外見など意味をなさないのだが。






過去日記
2011年01月12日(水) 「描写力がつくかもしれない30のお題」その10
2010年01月12日(火) 「文章修行家さんに40の短文描写お題」その9
2007年01月12日(金) 「EVER GREEN」11−3UP
2006年01月12日(木) 私事ですが。
2005年01月12日(水) 明日です
2004年01月12日(月) 成人式
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