2012年01月11日(水) |
たまにはお花見を(仮)4 |
「城の中はどうなんだい?」 厨房へ向かう道の途中。歩きながら二人は会話を交わしていた。 「どう? とは」 「君のボス――もとい、主君が危ない目に遭っていないかってこと。カチコミ――もとい、抗争に巻き込まれてないかとか」 言葉の端々に聞き慣れない不可思議な言葉をみとめながら、フォルトゥナートは曖昧に返事を返す。 「家臣っていうのも大変な仕事だよね。敬愛する主君を身を挺して守るんだろ? 家には帰っているのかい」 「帰れてはいませんが手紙のやりとりならしています」 「あなたはどうなんです。もしかして、家の場所もわからなくなってしまったのですか」 あるいは自分の生家ですら迷ってもどることができないのか。 「わかるよ。自分の家を見間違うわけないじゃないか」 「それはそうなのですが……」 意外な返答にフォルトゥナートは首をかしげる。方向音痴でもさすがに自分の生家はわかるらしい。ならばなぜ帰ろうとしないのか。 「こっそり帰ることにしてるんだ。気づかれたら大変だし何より迎えが大袈裟だから」 「あなたはこちら(ティル・ナ・ノーグ)には友人はいないのですか」 「友人ならいるよ。こうして誘いもうけた。だからこうして会いにきたのさ」 そうこうしているうちに、厨房の入り口についた。
過去日記
2011年01月11日(火) 「描写力がつくかもしれない30のお題」その9 2010年01月11日(月) 「文章修行家さんに40の短文描写お題」その8 2007年01月11日(木) 人気投票最終結果(仮) その8 2004年01月11日(日) SHFH9−7
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