2012年01月10日(火) |
たまにはお花見を(仮)3 |
それにしても。 「どうして私が道案内をしなければならないんです」 「だって君、ここの中は詳しいんだろ? オレ一人で行ってもいいんだけど今度はどこにでるかわかんないし」 城までの道のりはなんとか一ヶ月かけて把握できたんだけどなあとそら恐ろしいことをつぶやかれ、フォルトゥナートは身震いした。彼を拾って――もとい、助けて城まで運ぶよう指示を出したのは他ならぬ主君であるノイシュだ。幸いすぐに生気をとりもどしたため早急にお帰り願ったはずなのだが、結果的に客人が城を出たのは滞在して一週間たってのことだった。彼が城内にとどまることを望んだわけではない。リザという人間――の、姿を形どった者が単純に、極度に、ずばぬけて方向感覚に長けていなかったからだ。換言すれば極度の方向音痴ともとれる。見るに見かねたフォルトゥナートが門番よろしくついていくことになったのだがしまいには彼自身も危うく道に迷うところだった。 「仕方ない。オレ一人で行くしかないか」 一月前の悪夢が脳裏をよぎる。これ以上城内をうろつかれてはたまったものではない。 「呼び止めてごめん。じゃあオレはこっちを――」 しかも、目の前で厨房とは明らかに反対方向へ行こうとされたら見過ごせるものも見過ごせないではないか。 「着いてきてください」 用事を済ませてとっととお帰り願おう。そう心に決めたフォルトゥナートだった。
過去日記
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