消えてゆく小さなこと


消 え て ゆ く 小 さ な こ と

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1904年07月31日(日)

たっぷりと降りそそぐ雨が屋根をうつ
テラスを 窓の手摺を 庭のバケツを
不規則に歪に響く音
大きく響くとどきりとする
小さくなれば犬のように懸命に耳を立てる
明日には消えているだろう音が妙に気になって
闇の中に目をあけている
真珠をこぼせばこんな音かもしれない
眠ることを忘れさせる


1904年07月30日(土)

たとえ雨でもたとえ風でも
春だとわかる
やっと冬を抜け出たカンカク
気持ちもからだも正直


1904年07月29日(金)

今日はつまらない言葉にばかり出会う
そんな上っ面な言葉を聞かせないで
味気なくて残念です
言葉だけ飾っても上滑り
つまらない
沈んでゆく気持ち


1904年07月28日(木)

ハクレンに光が満ちている
これほどまばゆい白はないと思う
厚い絹布の重みのように
揺るがずに光の真中にいる
その輝きを窓辺で受ける


1904年07月27日(水)

小さな種が光を感じて熱を感じて水を感じて
小さな突起を押し出そうとしている
いくつ無事に育つのだろう
こぼれ落ちたこの種が
いくつ親と同じ樹に育つのだろう
気の遠くなるほどの時間を
何を思って生きてゆくのだろう
私は見届けられるのだろうか


1904年07月26日(火)

お菓子売り場で小さな女の子がねだっていた
母親が おうちに前に買ったのがまだあるでしょ
あれを食べてからでないと残ってしまうでしょ
古くなったら もう食べられなくなって 
ごみ箱に捨てなきゃならなくなるのよ
どう思う? と聞いた

その子は ぽつんと 
かわいそう と言ったのです

そうだね、可哀想だね と母親が言って
そうして二人は別のコーナーへ歩き出した

その時思った
あんな小さな子でも 命というものをわかるんだ と

いくら生命の教育だの いのちあるものを大切にだの言っても
大人が モノを使い切るということをせず 無駄に捨てていれば 
それはそのモノの命を踏みにじっていること
生命でなくても モノに命のあることを
大人は忘れてしまっているのでは と

モノを大切にしない世の中にしてきたのは私たち大人
モノが大切にされないから 
生命まで 大切にされなくなっている
自分の生命でさえ 大切にしなくなっている

大人がモノをきちんと使い切ることで
未来に何かを伝えられる

昔の人たちは 勿体無い という言葉を使っていたけれど
私にはその子の言った言葉が とても新鮮に聞こえた


1904年07月25日(月)

ジュエルだのクラウンだのトロイだの
資産なんて言葉に程遠いパンピーには
縁の無い話ばかりかな
それとも世の基本なのかな


1904年07月24日(日)

最近の新聞の下の方にあった本の広告に
掃除をしない家に幸せは来ない っぽい言葉があった
身にしみます
まだいろいろ整理中だった
ちょっと停滞気味だった
おっとアブナイ でした


1904年07月23日(土)

症状にネーミングの欲しい人なんだね
人に言ってまわりたいから 珍しいのや難しいのがいい
自分のことなどさらりとポピュラーに言えばいいのに
小難しい診断名を嬉々として説明する
他の人にすれば同じことなのに
あなたのどこかが痛くても
他にも同じく痛い人はたくさんいるのに
それにあなたのは軽い
そんなに嬉しそうだもの


1904年07月22日(金)

勘弁してよ
自分のコンディションくらい自分で整えてよ
無謀なことして周りにカバーさせないでよ
仕事ならともかく 遊びで迷惑かけないでよ


1904年07月21日(木)

この窓から私が見ている空は
あなたが想う空とは違う

人それぞれ 心に空の原風景がある
あなたの空を私は共有できない
あなたはあなたの空を
ずっと大切に

わたしには私の空がある


1904年07月20日(水)

きかん気のやんちゃ坊主を
大人たちが静かにたしなめたということなのか
それともおしおきしてるのか
ただ翻弄されているだけなのか
大人でも白馬の騎士を願うのだね


1904年07月19日(火)

急に暗くなって突然降り始める
この時期にこんな強い雨
遠くで雷が聞こえる
怖い音に聞こえる

私から
何もかも誰もかも奪い去ってゆくような


1904年07月18日(月)

駈け抜けようとしたのに
馬柵があって少し高くて
私は下をくぐる
草がやわらかくふれて
ハコベが大きく見えた
春のにおい
ふっと息をした
そうか こういう通り道もあるんだね
生きてゆくのに


1904年07月17日(日)

想像力をフルにしても
あなたの言葉はわからない
繋がるものがない
青い鳥は哀しみの鳥
わかったのはそれだけ
小さなトリックブックも青い


1904年07月16日(土)

大縄跳びにとび込むタイミングを計るように
どきどきして見据えて
おたおたして見過ごして
結局のところやり過ごして
いったい何をしてるのでしょうか
埒があかない


1904年07月15日(金)

言葉には力がある
それは真実だと思う
君の刺すようなコトバに辟易する
そういう意図が見えるから

でも言葉を吐くだけでは人は生きていけない
生きることを 行動しなくては


1904年07月14日(木)

名付けるならば 
宙の彼方 海の底

夢はそこからやってくる
青いものを抱えて


1904年07月13日(水)

からだに甘くてやさしい薬を3粒と1包
それが日課となって毎日の愉しみ
からだと頭が軽やかになって
人間らしい気持ちを大切にしたくなる
自然の力って優しい


1904年07月12日(火)

まだほのかにあたたかい洗濯物をたたむのが好き
やさしい気持ちになる
だから衣類乾燥機も好きです
天気の悪かった日は最後の仕上げに使う
私にはトースターと同じほど必需品です
でも食器洗い機は全然欲しくない
ゆっくり一つずつ綺麗に洗うのが好き

今日はとても重い雨が降っている
草がみな重そうにしている
地面もどっしり重くなった
うつむいてクリスマスローズがたくさん咲いている


1904年07月11日(月)

小さな綺麗な青をたくさん並べて
何度も大きくして見ていたら
海の底に吸い込まれるように
ふわりと優しくなった

心ばかりの贈りもの


1904年07月10日(日)

むくむくの茶色の毛の生き物よ
きみを抱きしめたくて抱きしめたくて
たまらない


1904年07月09日(土)

雪解けの冷たさの土に
春を告げる深い色
座禅の草
こうやって迷いを取るのだよ と


1904年07月08日(金)

いろんな場所がずいぶん遠くなったなと思う
本当に遠くなった
この窓辺から離れられずにいるから

窓から遠い空ばかり見て
自分の何が変わるというのだろう

風に手をのばしても
何もつかめないとわかったから
もう手をのばさなくなった

でも土の上では 
このあたたかな風に
杏も李もぐんと蕾が膨らんでいました


1904年07月07日(木)

休みの前は街がにぎやかです
ざわついている
空気が違う
あたたかな雨の後の甘く重い空気だけれど
何かが満ちて動いている
何が起こるのか期待して
犬も笑っている
人が何か行動しようと思っているのがわかるから


1904年07月06日(水)

ガイドマップをそこへ置いたのは
ここ良さそうだね行ってみようか と
ぱらりと見た誰かが言うかもしれないと思っただけ

でも誰も興味なかったね 
だから何処へも行きません 


1904年07月05日(火)

古い卒業名簿を整理していたら
キミのお姉さんらしき名前を見つけた
同じ苗字で キミと同じ住所だった
そうだったの
私たちが入学した時 一年前に卒業した人だったんだ
そんなこと話になったこと無かったね
お姉さんと妹がいることはいつか聞いたけれど
本当に何もお喋りできていなかったんだとわかった

あんなに焦がれていたのに
だから 距離がありました
だからあの時 どうすればいいかわからなくなった

戻らない時だけれど
それが私だったんだなと思う
違う私にはなれなかったんだと思う


1904年07月04日(月)

後悔も 
ひとつの出口


1904年07月03日(日)

大らかに伸び伸びと屈託無く
いじけずに育つということは素晴らしい

けれどそのまま
引け目というものを感じたこと無く育ってきた人って
引け目を感じるという感覚のない人って
自分の存在にゆるぎない確信を持っているような
どこか図々しいような感じがあって
つきあいにくい

人は畏れを知る生きもの
不安も震えも微妙な気持ちの揺れもあってこそ

思いやる気持ちって そういうものから生まれると思う


1904年07月02日(土)

省略という世界
言葉の省略かと思っていたけれど
背景の省略 見えるものを省いてゆく
思いの省略 というより引き絞る
そういうことかもしれないと思った


1904年07月01日(金)

春の雪

花のように大きなぼたん雪が
つめたいのか あたたかいのか 静かに降りしきる

薄暗いのに華やかです




天窓より          


−ともすれば消えそうになる自分を見失わぬよう−       

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− ささやかに −          

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日付は通し番号として記しています         


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