真っ新な帆布に、 一筆、 一筆、 意思を加える事で。
一つの画が、 描かれるのだと。
そう、 勘違いして居るだけで。
其の実。
埋め込まれて在る、 定められた糸を。
唯、 可視化して居るに過ぎないのだろうか。
其れ故に。
一つ、 一つ、 其の縁が。
固く絡み、 解れては行かぬのかも知れない。
初めから。
存在したのだから。
駅の、 喧噪の中で。
「あのね。」 「一緒に住んでいた人とすれ違ったんだ。」
あの子が、 唐突に口火を切った。
「何時?」 「今?」
「私は素通りしたけれど。」 「向こうは気付いて振り向いたかな。」
「全然分からなかった・・・。」
嘗て、 あの子が杜に居た頃の。
もう、 十数年を経た後の、 腐れた紐に。
何故に。
いとも簡単に、 触れて了うんだろうね。
---------- References Dec.20 2001, 「気になり始めているのですか」
|