振れぬ袖だと、 両手を挙げる事へ。
想いは、 疑念を植え。
振れぬ袖を、 目一杯振って魅せる虚が。
想いに因って、 真へと差し替えられる。
自身に無い経験を、 埋めようとする術は。
情報から取り出すしか、 無いけれど。
其処に想いを混ぜれば。
人から得る情報が、 情報では無くなってしまうから。
決して、 自身の想いの蓋を、 開けてはならぬのだ。
花見の宴で。
「今年はどうされるんですか?」
唐突に、 後輩が問うた。
持ち合わせぬ情報に、 脚色を加えても。
何の益も無いのだから。
「去年は『来るかも』とか言ってたけれど。」 「お嬢次第じゃない?」
そう答えたけれど。
後輩には届かない。
自分は、 何の情報も持たぬ事。
そして後輩は、 情報を欲して居る事。
明確な事は、 其れだけの筈なのに。
年に一度の体育の日。
気分屋である筈の、 御嬢が。
或る行事の相手役に、 四年間続けて俺を選んだ事。
想いを有した後輩には、 鋭い爪痕に、 成って居るから。
「GWは来るらしいですよ。」
「おお、そうなの?」 「連絡無いから良くわからんよ。」
必死に彼は、 要らぬ情報を残して行った。
何だよ。 何処が大丈夫なんだよ。
---------- References Dec.21 2003, 「見えるから見えぬ物でしょうか」 Nov.20 2003, 「爪の先に甘い毒を仕込むのですか」 |