< 幸せな二人に見えましたか >
可笑しさの笑いを必死に堪えたと、 互いに主張しながら。
「顔がにやけてるよ?」
「お前こそ嬉しいんでしょ?」
喜びの笑みが、 相手に捉えられぬ様に。
意地でも我慢する。
「旦那様はいかがですか?」
試食を勧める店員の言葉一つに一喜一憂した、 奴と彼女の顛末を。
奴は照れ笑いしながら口にするけれど。
二人で創り上げた雰囲気を、 其の言葉が指し示しているから。
何より年齢差と言う、 彼女に潜む大きな不安要素が、 否定された事で。
「旦那様だって!」
「姉弟とかに見えないんだよ!」
互いが意地を張りながらも、 喜びに溢れる気持ちは。
極自然な想いだよ。
初めて貴女と、 二人で出掛けた日。
お互い知らぬ土地では無いけれど、 あの時居た世界は、 二人にとって初めての世界。
渡した付届けの効き目が、 強過ぎたのか。
「彼ったらお若いのにねぇ!」 「御食事は全てお持ちいたしました。」 「邪魔しては申し訳ないですから♪」
妙に丁寧な仲居の態度に、 ふと貴女と、 目を合わせて笑ったあの時を。
奴に話して聞かせたんだ。
男女の関係だと、 そう認識された事を。
あの時の貴女も、 本当に喜んで燥いでいたっけな。
---------- References Mar.01 2003, 「これが神が与え賜う褒美ですか」 |
2003年10月25日(土)
---------- History
|