< この画は切り取れませんか >
街の中心部に集まりつつある、 勤め人の流れ。
毎朝産まれる其の大きな流れの中に、 身体を錐の様に捻じ込む。
大河に逆らう小さな存在は、 世間の荒波に背を向け避ける様に、 映るのだろうか。
皆後ろを向けば、 綺麗な画を拝見出来るのに。
一瞬しか生を享けない奇跡の画を、 この目に焼き付けられるのに。
けれども。
振り向くな。 誰も振り向くな。
其の流れに身体を埋めながら、 願いつつある自分に気付く。
この流れは。
其処に貴女を含んで流れては、 居ないのだ。
虹。
光と水が空に描く、 奇跡の画。
目の前の虹は、 必ず貴女の住まう方角に出現する、 夢の架け橋だけれど。
其の画を同時に目にする距離に、 貴女は居ない。
其の画を共に歩く事が出来る程、 貴女は傍に居ない。
だからせめて。
俺の眼の中だけに残る、 虹で居て。 |
2003年10月24日(金)
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