自身を掴み離さぬ大きな幹を、 捜し求め続け、 未だ其の途に在る故に。
寄居虫の様に、 手頃な仮住まいを纏い、 猶も迷い、 複数の貝を被る。
其の行為が、 是か非か。
判断を下すのは、 飽く迄当事者のみに与えられた権利だけれど。
宿木を複数所有すると言う、 事実の自覚と。
自身の信を相手に見せぬ以上、 相手の信を得られぬとしても当然であると言う、 覚悟の自覚と。
其れは全てに於いて、 自身が選択し創り上げた物だと受容する、 責任の自覚と。
最低限の義務を果たした上で、 当事者に与えられる権利だと思うから。
「選べなくても良いですよね。」
俺に許容を求めた御嬢へ。
「選べないじゃない。」 「選ばないだよ。」 「人に依存しないで自分で何とかしなきゃ。」
足りぬ自覚を伝え、 鼓舞した心算だったのに。
「三番目でも四番目でも良いですから。」
潤んだ瞳に乗せる牝狐の言葉は、 的確に雄の本能を揺さ振り。
悟られぬ様に、 俺は手掌の脂汗を隠した。
自身を軟着陸させ得る存在と、 自身を厳しく追い立てる存在との間を、 交互に行き来して。
ただ自身を肯定する柔らかい存在が、 今は心地好いだけだから。
御嬢は俺に許容を求めるんだ。
きっと次は。
今御嬢が振り向こうとしている雄が、 優し過ぎると。
其の言葉を持参して、 俺の元に来る。 |