ほんの軽口を、 僅かにちょこっと載せただけ。
表面上の言葉に本意は無く、 逢えぬ寂しさと、 募る想いを、 少しだけ形にして、 僅かにちょこっと伝えたかっただけ。
「何時から女の子だっけ。」 「また全部搾り取ってね。」
受話器の切れる瞬間に、 一瞬耳に入って来た貴女の泣きべそ。
貴女の身に起きている異常から、 推測出来る事柄。
俺も貴女もこの腕に抱きたいと、 そう願っている二人の形。
大切だけれど、 其れを捨てても良いと、 俺の覚悟は出来ているけれど。
貴女は決して、 そう想っていない事を。
貴女は切に欲しいと、 そう想って已まない事を。
貴女の、 一瞬の声にならない声が。
軽口の代償だと言わんばかりに、 抉る様に、 俺の胸に突き刺して来た。
掛かり付けの産婦人科医は。
「子供を望むなら。」 「不味いですよ。」
貴女や俺の事情などお構い無しに。
ぶっきら棒に、 出来難い身体になっている事実を伝えたんだろうな。
---------- References Aug.17 2003, 「時が奪って行きませんか」 |