安定した愛情は、 必要無い物なのだろうか。
揺さ振らねば、 僅かな変化が起きなければ、 感じられぬ想いなのだろうか。
この手の類の想いは、 失ってこそ感じる愛情なのだろうか。
仕事を始めたばかりの彼女へ、 負担が掛からぬ様に。
時間を合わせ、 都合を合わせて来た奴。
其れでも合わせられぬ都合を見越して。
明日に響かぬ様に先に寝ろと、 彼女へ言った奴。
全て其の彼女と、 話し合って決めた行動だと言うのに。
「先に寝てる。」
其の文を受け取った後の、 夜半過ぎの突然の電話。
「彼氏二号と呑んでたの♪」 「お泊りちちゃおうかなぁ♪」
明らかに酔った声で、 呂律の回らぬ甘えた声で、 予想だにしない状況を報告する彼女。
試されたと理解しつつ、 冗談だと認識しつつも。
「泊まれば?」
奴は捨て台詞を残し、 電話を切った。
「小坊主、何で試すんだ?」
「俺の彼女は犬だからなぁ。」 「こんな事しないよ。」
「俺だって犬だよ?」 「時々猫だけれど。」
「お尻突き上げて脱走する猫だもんな。」
「ははは・・・」
そう言う奴の言葉には、 ほとんど力が無いのだけれど。
彼女が奴を求めたからこその言葉だと言う、 其の理解はきっと正解で。
其れが在る限りは、 奴は立ち直って彼女へ向かって行くのだろう。
今まで何度も、 酔って吐き出して来た彼女だから。
普段は口にすら出来ない言葉を、 何度も吐いて来たから。
「まずは彼女の話を聞いてあげな。」
俺は一言、 奴にこう答えた。
---------- References Aug.12 2003, 「言葉に踊らぬ術が身に付きますか」 Jul.27 2003, 「対等の土俵に登れますか」 |