< 貴女の過去は幻ですか >
貴女の想いは、 より一層深い所にあったんだ。
「私が何を考えているか分かる?」
貴女の言葉が、 受話器越しに俺の耳へと届く前に。
一瞬の沈黙で、 ほとんどを察していたと言うのに。
俺の脳裏に浮かんだ想いなど、 貴女の想いには、 到底及ぶ程の物では無かったのだ。
俺の脳裏に浮かんだ想いなど、 貴女の想いに、 辿り着く気配すら無かったのだ。
それ故に。
何を意図した言葉か、 瞬時に理解は出来なかった。
言葉を失うと言う表現には、 きっと値しない。
貴女の言葉から、 胸中の動揺が絶句と言う動作を生じさせる程、 俺自身は機能して無かったのだから。
「大きい子より小さい子の方が良いのかな?」
五秒余りの時を経て。
小さな彼と、 この世に産まれる事の出来ないかも知れない子とを、 貴女が秤に掛けたと理解出来て以来。
過去に一度、 水子の苦しみを知った筈の貴女が、 何故この言葉を吐いたのか。
今も理解出来ない。
---------- References May.09 2003, 「仲間の輪はもう縒れませんか」 Apr.11 2003, 「歓べないのですか」 |
2003年05月11日(日)
---------- History
|