丁度一年前、 貴女は何をしていましたか。
旦那と言う同居人を斬り捨てる行為と、 小さな彼に対する母性愛と、 貴女を取り巻く環境と、 そして俺への想いと。
丁度一年前、 俺は何をしていただろうか。
アイツと言う彼女を斬り捨てる行為と、 アイツに湧く情と、 俺を取り巻く環境と、 そして貴女への想いと。
丁度一年前。
「戻りますか?」 「元の関係に戻りますか?」
貴女が別れの言葉を口にした事を、 未だ覚えているのだろうか。
お互いが深い傷を負い、 必ず誰かを傷付ける事が宿命であった関係には、 違いなかったけれど。
俺は貴女に怒りの刃を向けた。
事の大きさを感じて、 どんなに酷い不安に陥っても。
一線を越えた以上、 決して逃げてはならないんだ。
自分達で踏み出した以上、 言葉や想いに責任を持たなければならないんだ。
ただの弱気で、 単なる不安で、 想ってもいない言葉を口にする事は、 最大の罪なのだ。
きっと俺は、 貴女と繋がっていたいと言う欲望の為に、 理由を創って主張したんだ。
貴女を勇気付ける為でも無く、 貴女を励ます為でも無く、 己の欲望を満たす為の虚言だった。
願わくば。
この一年と言う期間が、 俺の罪で傷付いた人の癒しとなっていますよう。
この一年と言う月日が、 深い爪痕を修復し得る癒しの時になっていますよう。
そう願った俺は、 この一年と言う時で何も変われていない。
そう願った俺は、 未だに偽善者で勝手極まりない。 |