貴女に毒の矢を突き刺したのは、 他でも無く俺だ。
貴女に刃を向け抉ったのは、 他の誰でも無く、 俺自身なのだから。
僅かな空き時間を利用して、 貴女の声を聞いて、 疲労回復を図ろうなどと言う行為は、 虫が良過ぎたに違いない。
「何であの人の名前を・・・」
貴女の問い掛けは、 極当たり前の行為なのだ。
例え話し合ったとは言え、 一度切りの会話で、 事の収拾を図ろうなどと言う行為は、 虫が良過ぎたに違いない。
言葉に詰まった俺に対して、 無口になった俺に対して、 貴女は同じ言葉を言い続ける。
「何で黙るの?」 「何で黙るの?」 「何で黙るの?」
貴女の問いは正解。 俺の行為が不正解。
貴女の問いは当然。 俺の行為は不自然。
それをどんなに理解していようとも。
事実と想いと行為が噛み合わないのは、 紛れも無く貴女への甘えなのか。
もう話し合ったじゃない。 もう解決したじゃない。
何故疲れ切った今、 その話で俺を追い落とすの?
貴女は俺を支えてくれないの? 貴女は俺の状況を察してくれないの?
交錯する想いが、 開かぬ口をますます閉じる。
もう切らなければ。 もう行かなければ。
こうやって電話を切れなくなるんだったら、 五分だけ声を聞かせようなんて、 そんな想いはやっぱり捨てるべきだよな。
自分で考え、 自分で結論付けて。
自己中心的な想いが、 開かぬ口をますます閉じる。
「考える余裕もない時に言うことじゃない。」 「責めるような事言ってごめんなさい。」
貴女から届いた深夜の手紙。
何も言わなかったのに。 何も言えなかったのに。
貴女はちゃんと、 俺の想いを把握して理解していた。
感謝。
貴女はちゃんと成長しているのに、 俺はちっとも成長していないな。 |