自分を駆り立てる力と、 自分に備わる狩猟本能は、 全く同じ支配を受けているのだろうか。
何時の間にか抜かれた牙。 何時の間にか削られた爪。
闘いの為に備わった雄の武器が、 錆付いて崩れている。
幸せと言う魔物が、 自分の能力を削り取って巣食う生き物なら。
俺は既に、 その魔物に半分以上力を吸い獲られてしまったのかも知れない。
「今度逢う時、どうやって抱いて欲しい?」
昼休みに仕掛ける、 小さな悪戯。
仕事の合間に、 束の間の休息を取っただけなのに。
「午後からずっと顔が笑ってたよ・・・」 「小坊主のせい。」
昼休みに仕掛ける、 普段の悪戯。
俺の目論見通り、 貴女を潤んだ目で半日を過ごさせたと言うのに。
「小坊主は?」
「普通。」
精一杯の強がりに、 戸惑いの想い。
貴女との幸せを感じれば感じる程、 俺は狩りの能力を奪われ、 自分を駆り立てる力を磨り減らして行くのだろうか。
貴女はゆっくりと、 俺の手足に蜘蛛の糸を張り巡らせて来たのだろうか。
何時まで経っても、 今日は目の前に貴女が居る。
何時まで経っても、 貴女は目の前でほくそ笑んで居る。 |