貴女へ贈った言葉は、 決して拒絶の言葉では無かった。
貴女へ贈った言葉は、 貴女を避ける為の言葉では無かった。
「来なくて良いから」
貴女の相手として、 あの男が存在していた時。
事実を覚られてはならなかった。
だから貴女は、 俺の街へ来る度に俺を隠し、 冬は大人しく姿を隠したんだ。
俺の相手として、 法の壁が存在していた時。
発覚は即ち別れを意味していた。
だから貴女は、 俺の街から戻れない事を恐れ、 飛行機の飛ばぬ日を恐れたんだ。
「来なくて良いから」
貴女へ贈った言葉は、 決して拒絶の言葉では無かった。
貴女へ贈った言葉は、 貴女と俺を護る為の言葉だった。
今はもう、 貴女の身体は何者にも束縛されない、 自由な身体なのに。
「何時がレースなの?」 「小坊主の姿が見たい!」 「小坊主の姿を見るだけで良い!!」
そう願う貴女を、 集中出来ないと言う理由だけで止めた。
言い張る貴女を、 相手出来ないと言う理由だけで止めた。
相手は出来ないけれど、 来い。
迎えに行けないけれど、 迷子になっても知らないけれど、 来い。
そう言ってやれない俺に、 貴女を束縛する資格があるのだろうか。
「来なくて良いから」
貴女へ贈った言葉は、 やはり拒絶の言葉に違いない。 |