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■ 旧校舎
今日も何もない為自炊ショートショート小説
「旧校舎」
暗い長い筒のなかを下降している。加速して着地に向かい今も下降中。
わー。
手のひらで胸を押され淵から下降は始まった。
わー、
僕は校内の旧校舎の裏に呼び出された。 そこは立ち入り禁止だが、上級生からの呼び出しや人目を避けるのにかっこうな場所だった。
取り壊しは決まっているがいつになっても旧校舎の取り壊しは始まらなかった。
僕は、人に隠れて取り引きをしていた。 毎月一回、取り引きのために僕はここへ来ていた。 誰か先約がいてなかへ入ることが出来ないときは、時間をずらしあたりが白けてきた明け方にここで落ち合うのが常だった。
僕は情報を売っていた。 引き換えに金を受け取っていた。 でも今回は、これで辞めたいと言い金を受け取らないことにしてまだ家族が眠っている明け方、家をしのび出た。
僕が取り引きをすることになったのは•••
高校入学からしばらくして家庭の事情で転校したこの学校に馴染めずにいた。
高校の転校なんてあまりないから周りからの特異な視線に耐えられなかった。 授業をサボって見つけたのがこの旧校舎。
旧校舎の中に入ってみると意外ときれい。たまに蜘蛛の巣がはっているけど手入れすればまだ使えそうだ。
それから僕はたびたび旧校舎へ入り時間をつぶした。
転校して半年が経とうとしてた秋。文化祭の準備中クラスメートと意見が対立した。おもしろくない僕はしばらくぶりに旧校舎へ立ち入った。
がここへ来た少し前に誰かがここにいたらしく床にキラッとひかるものを見た。
小さな鈴のついたチャーム。 あれっ、女の子のものかな。 僕はそれを拾って校舎から出た。
「待てよ」 誰かに呼び止められた。 振りむこうとすると背中に何かがあたり振り向けなくて背後の誰かの声を聞き続けた。
「チャームをよこせ。 何も見なかったことにしろ。」
「お前のクラスにMがいるだろう。Mの動向を知らせろ 引き換えにご褒美やるからいいな」
最初はご褒美って殴られたりひどいことをされるのかと思った。 違った。 僕がいじめられないように学校生活が円滑に過ごせるようになんとかしてくれた。 そして少しお金をくれた。
Mは学校に来たり来なかったりするし非常につかみどころがない奴だ。 学校生活がテキトウなのに成績がよく不思議だった。
でも僕は気づいてしまった。 なぜいじめられないように僕を守ったりお金を掴ませてまでMのことを知らせなくてはならないか。
最初に拾った女の子のチャームといい、旧校舎がいつまでも取り壊されないでいるワケといいそしてMのこといい。
僕は転校生だから何も知らない。この街のこと、クラスメートの中学校時代のこと、 この学校に僕が来るまでにあったことに。
僕で都合がよかったんだ。 学校の小さなクラスでのことだけどみんなは知っていて僕だけが知らずにピエロじゃないか。
Mはそんなに悪いわけじゃない。 Mを悪者にしたててみんなの関心を流動していたんだ。 僕はスパイの一人として動かされていたんだ。 それは女の子のチャームを取り上げ、僕に金をつかませ、いじめからは守るということで片棒を担がされていたんだ。
全てがわかった僕は今も暗い筒を下降中。
2018年11月26日(月)
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