かたほうだけのパンプス
敦子



 冷めたキャンドル

※何もトピックスがない私の投稿は今日も自炊ショートショート小説です。

未成年だということを隠して働いているナイトバー。

カウンターは人気のマジシャンのテーブルマジックで湧いている。

奥のテーブル席に静かに中年美女がひとりいた。

その人を見るなり、普通では感じない身体の未知の感覚が震え出した。

どっかで見たことがあったかなぁ。
その人に注文をとりに行く。

テーブルのキャンドルのアロマが気にいらないから取り変えてくれ。

と言われアロマのキャンドルを探して持って行った。

キャンドルに火が付くとアロマの香りとともにそこだけのゾーンが浮かびあがるよになっていた。

匂いとキャンドルの炎で立っている感覚、その人の存在が現実のものと何かちがっていた。

その人が
「わかる?」 と言ってゆっくりとまばたきをして白い手をグラスにのばした。

だんだんその人が誰でどこで以前会ったか遠い記憶が蘇って来ていた...

そのとき
カウンターの奥から
「オ―イ」 と呼ぶ声がしてその声に反応した途端、その人との不思議な空間は壊れてしまった。

我にかえった。
その日夢のなかに店にいた中年美女の客が現れた。

彼女は友達の母親だった。
友達が亡くなったことで私たちは会っていたのだった。

友達が最後に残した手紙に書かれている人のことを私に尋ねようとしていた。
夢はそこで終わった。

会話の続きを現実の世界で夢より前に見ていた。

夢の内容の前後が入れ替わって私をとりまいていた。

そうか、友達は死ぬのか...。

長い夏休みが終わってナイトバーで働くのを辞め学校に戻った。

友達は元気で学校に通って来ていた。

友達は死んでいない。


学校での私はナイトバーで働いていたせいか、学校のなかに馴染めなくなっていた。

みんなの声が耳鳴りのような感じに聞こえてくる。疲れているのかなぁ?

キャ―キャ―ワイワイと楽しそうな学校。

静かなトイレで
「そいうえば、あなた亡くなったんだよね」と言う声が聞こえた。


2018年11月25日(日)
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