かたほうだけのパンプス
敦子



 界面上のはなし(掌編小説)

最近、人工知能AI、ビックデータ、拡張現実などの次世代型の機能、仕組みの整備発展が著しい。
そんなことに張り巡らされる現実に田舎者の私は気おくれしている。
このエピソードは、そんな日常で起こること。
ものぐさの私は度々、SNSを更新することを忘れる。正しくは、忘れるのではなく間に合わないのだ。
気づけばすでに翌日、朝になっていて「まるまるなう」は、「まるだった」となってしまう。
SNSをはじめとするネット投稿更新は、鮮度が大事。他者が読むときは、すでに過去情報だとしても新鮮情報が求められ、優先される。
気付けばいつの間にか、私のタイムラインは、去年の私のことが今情報としてそれらしく投稿されている。昨日の私が最新の私として私ぜんとして居座っている。
「なんなの、勝手に」
ビックデータから私AのA'(エーダッシュ)がせっせっと投稿、SNS友達へのイイね!をまめにしてくれている。
友達は、そんな現状をうまく使いこなして余暇を旅行にパーティへと楽しんでいるという。
「そんなにうちを空けてご家族はどう言ってるの」
聞けば、ビックデータから友達に限りなく近いキャラのプロジェクトマッピングとAIの本物そっくりのA'が拡張現実の設定のなかに生活してもらっているという。
友達は、代役をたてて現実生活をこなしてもらっているのだ。
ほかの友達も、近所の医院も八百屋さんもバーのマダムの飼っている毛足の長い犬もこのサービスを利用しているという。
「はー?お医者さんが?あの八百屋のおっちゃんも?動物も?」
私はわけがわからなくなっていた。
私の見て居るこの現実は、代役たちに演じられた現実とみまがうような仮想現実なのか?
どちらが本当か何が現実なのかわからなくなってきていた。
と、いうことが私のタイムラインに書かれていた。
読後その投稿にイイね!をしておく私は、A'。


2017年06月14日(水)
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