@原宿 トーキョーカルチャート by ビームス
かせきさいだぁ 堀込高樹(キリンジ) 本秀康
・半休をいただいて、表参道に着いたのが17時ちょっと前という微妙な時間。雲行きも怪しいのでRAT HOLE GALLERYで開催中の荒木経惟「センチメンタルな空」を見に行くのは後日にして(10月7日までやってるし)、以前から気になってた月光茶房でコーヒーを飲むことにした。 客はワタシひとり。気まずいかなーと思ったけど、店主が手ずから淹れてくれるコーヒーは最高レベルに美味しいし、地下の店内はすっきり清潔で居心地が良いし、スピーカーの音もとても耳触りがいい。落ち着く。最初「Sgt. Peppers Lonely Hearts club band」のLPがかかっていて、次に現代音楽調のアルバムになった。 「今かかっているのは何というアルバムですか?」 「喜多直毅さんというバイオリニストの"spirals are dancing alone"という新譜なんですよ。こういう音楽は大丈夫ですか?」 「ええ、友だちが即興音楽のバンドやジャズをやっているので、こういうの大好きです。きれいな音ですね」 もっとゆっくりしたかったけど18時開演だったので早々に店を出た。 再訪しよう。
・神宮前裏あたりの道に迷ってる感ハンパない。あの辺は裏道突っ切ろうとか思わない方が賢明。
・17時ぎりぎりに会場に入るとすでにほぼ満席。 最終的に立ち見もたくさん出た中、幸い後ろの方の椅子を確保できた。立ち見の方がよく見えたかもだけど、よく見えたら腰砕けてたかも知らんのでまあ良かった(笑)。ほどなく3人が登場。拍手。うっわーついに! この数ヶ月聴きまくり堀りまくってたキリンジ本物とご対面ひいいいー(心の声)。椅子の並びが悪いのか出演者の顔はほとんど見えないが、時折、チェックのシャツから覗く高樹さんの日に焼けた腕とか横顔とか、あとあとなんかエロっちいマイクの持ち方が…! マイクよこせ早く! って言うまでもなく似合ってる、マイク。ヤスじゃないんだからこんなにどきどきするとは正直思ってなかったのに何この心拍数上昇。呼吸苦しい。 チノにチェックのシャツ、黒のニットタイ、帰りがけに見たらグリーンのリュック持ってました。あと高樹さんがほとんど司会進行役みたいになっててお兄さんっぷりを発揮。 以下内容。
・イチオシ曲とか 本さん→ミスターシティポップ 高樹さん→雨のサブウェイ(「高樹の家に行った時もコレがいいってゆってたよね」「んー、ほら売れ線って言うか…サビが70年代風でキャッチーじゃん? 原田真二みたい」 「EPOさんにはどうやってお願いしたの?」 「すげえっしょ、EPOさん。(メンバーの)松本?君の友達の知り合いだったの。で、だめもとで電話してもらって、頼んだら簡単にOK出た。音も聴かないで(笑)。でもレコーディングの時ね、オレの方一切見ないでそのメンバーばっかり見てたから、きっとオレがかせきだってわかってなかったんじゃないかな(笑)。たぶんバンド名だと思ってたんだね、かせきさいだあって」 「高樹が参加したのは6曲目? いい曲だよね」 「参加つってもちょっとコーラスしただけですけどね」 「高樹ん家で録ったんだよね。で、オレずっと見てたんだけど「なんでいるの?」って言うわけ。オレプロデューサーよ? オレなんかずーっとメンバー見てるとこで歌ってるよ?」 「だって恥ずかしいじゃん」 「ライブだってみんな見てる前でやるじゃない」 「それと収録とは違うよ、ひとりで、こう、集中してやりたいの」 「鶴の恩返しかよ! あの時、オレは絶対、高樹は全裸で録音してると確信したね」 「違いますよ」 「すっげえ時間かかったよね」 「え? ああまあちょっと難しいんだよねアレ、最後のとこだけマイナーになるからさあ。でも4時間くらいっしょ?」 (なんで静まる会場! そこ聞きたい聞きたい!) 「じゅうぶんだよ、4時間。あの時わかったのは、いかにオレらが雑かってことだね。ほら以前AORって難しいって話してさ、どうやったらできるか尋ねたら」 「丁寧にやることです」 「そうそう…無理だな、オレには(笑)。そういう商売だもんヒップホップって。でもあのコーラスね、メンバーの外人の子に聴かせたら「日本人にはなかなかない和音だ、黒人かチャントか…」って感心してて、高樹がやったんだよって言ったら「さすがだね」ってベタ褒めしてた」 「あー…そうかもね」 「でもオレが曲作ったって言ったら「ふーん」って…」
・どうやって作曲するかとか 「しかし加藤くんが歌モノやるとはね…キリンジ的ジャッジとしては「加藤くんは死期が近いんじゃないか」って言ってる(笑)。泰行にも「だから早く会っとけ」って言ったんだけど」 「(笑)瀕死のおじいちゃんかよ! それでヤスは何て?」 「ああちょうど今日ラジオの収録で、そこで一緒にやってたから誘ったんだけど「あー…いいや今日は」ってふらって帰ってった」 「らしいなー(笑)。死期なんつったらオレの方が絶対思ってるよ、だって作曲なんて今までなかった能力じゃん? 脳に腫瘍とかができて、それが脳の作曲部分を刺激して作曲ができるようになったんだと真剣に思ってた。だって今までできなかったのに突然できるようになったなんて、オレにとっては超能力じゃん?」 「だから急いでアルバム作った?」 「そう。いつ能力が枯渇するか、この井戸がどんだけ浅いかわかんないから」 「どうやって作曲してるの?」 「だいたいね、鼻歌でメロと歌詞を1コーラス作るの。あとはハグトーンズがコードつけてくれて、オレが「そうじゃない、もっと切ないの」「これじゃないっすか」「もっと!」「じゃあこれ?」「もおおおおおっと!」「これは?」「そう!」みたいな」 「ジャミロクワイみたい(笑)あとJBとかも確かそうだよ。意外だねえ、ちゃんとプロデュースしてるんだ」 「うん、オレ、ジャミロクワイ! 高樹はどうやってんの?」 「まあ鼻歌とか…ギター弾きながら…」 「アナタの楽曲は、こう、変態だよね? なんでああなるの? 鼻歌なんて音程適当じゃん?」 「僕は器楽的に歌が歌えるんです」(へー)
・川島くんのこと 「CDに川島小鳥くんの写真集がついてくるの。初回限定とかじゃなくて「死ぬまで」ついてくる。ちょっと頭おかしいでしょ(笑)でもね、ぶっちゃけ今みんな配信で買うでしょ、1500円で。半額じゃん。そうするとオレらに入ってくるコレも半額になるわけで、CD買って欲しいんですよね。そうすると写真集つけるとかさ」(ごもっとも) 「そもそもなんで川島くんと知り合いなの?」 「最初の写真購入者なんです(威張り)。彼がブレイクするずっと前から好きで、写真展に欠かさず行ってた。ある日写真展に飾られていた鳥の写真を、ほら小鳥くんだから良いかなと思って、買おうとして「幾らですか?」って尋ねたら川島くんも「うわ写真売れたのはじめてだからわかんない…ええと」ってなって、しかもオレその時財布に5千円しか入ってなくてさあ、だって写真買えるとか思わないじゃん、しかも帰りにメシ食いたかったからさ、素直に川島君に言ったの、そしたら「ええっ本当に買ってくださるんですかっ? えー、じゃあ3千円で」(笑)って」 「安ッ」 「でも大事だよね、最初の購入者って。オレも今でも覚えてるもん」 「そんで後から梱包されて届いたんだけど、梱包もすげえ丁寧でさ、ますます好きになった」 「ヤフオクなら「またご縁がありましたらぜひお願いします」ってやつだね」 「いい話なんだかよくわからないなあ」 「いい話じゃん、ほら川島君が有名になってから近づいたのかと思ってたからさ、それだったら嫌らしいなあと(笑)でもそうじゃなかったんだね」 「キリンジもつければいいじゃん、写真集」(ほーしーいー) 「「やすゆきちゃんとたかきちゃん」?」 (大爆笑) 「うん、川島君に撮ってもらってさ、「やすゆきちゃんとたかきちゃん」」 「…やだよ、二人いますからね、自ずと売れ行きに、差が…」(両方買うー、ってゆか二人のやつと3パターン買うー) 「そこは甘んじて受けなきゃ。総選挙。高樹がボーカル取る日もくるかもよ。泰行の曲でさ」 「ないない。あのひとはない」 「今までにないの? そうゆうの」 「うん。「歌おうか?」みたいに言ってみたことはあるけど「あー…今回は…いいやオレが歌うわ」って」 「だろうなあ…じゃあオレに曲つくってよ、てのは?」 「うーん」
・服の話 「今日さ、デニムに革靴で家を出たんだけど、ハグトンフェアの時まるかぶりだったたじゃん? 「あ、加藤くんとかぶる」って思ってバス停から家まで引き返して着替えてきた。正解だった」 「遠いでしょうに、バス停。こないだ行ったけど遠かったよね? 東京にこんなとこあるんだって思ったよ」 「うん…。ところでオレ素直に疑問なんだけど、加藤くんずっとCD出してなかったくせに、何でそんな良い服着てるの? 今日のその靴だってトリッカーズだし、シャツもブルックスブラザーズみたいな…」 「あなた家建てたじゃない。車も買って、奥さんも子供もいるでしょ? ワタシはそういうのすべてを投げ打ってこういう生活をしているのです。金ないのにラーメン屋で1100円のラーメン頼むみたいな(え?)。それにこれ全部自前ですから」 「ジャケ写の服とかも自前? あのジャケット良いよね、なんかアーバンだけどセルフっぽくて、かつ貧乏くさくはないっていうさ」 「あなただってその時計。奥さんが結婚する前にくれた時計をずうううっと、しているじゃないですか(ひゅーひゅー)」 「あーこれは…これ…(少し照れる)、オレのことはいーんだよ!!」 「ジャケ写は自前。写真集は少しビームスから借りたり…高樹は撮影とかどうしてんの、服?」 「スタイリストさんが持ってきたやつを着て…」 「お買い取りしたり」 「しない」 「なんで? しなよー」 「だってオレの日常の服と、そのアー写とかの服とさ、違う…」 「そうなの?」 「そうなの」
・マンガを知らない〜ヤスのギター 「全部で何分?」 「47分かな?」 「いい長さですねー、LPにしたいね、アルバム的にさ」 「うん、アナログカットするよー」 「いいね…「恋の呪文はスキトキメキトキス」はアニメの?」 「そう、さすがの猿飛」 「知らない」 「ええっ、もしかして「ときめきトゥナイト」も?」 「知らない…何ですか、それは「お父さんは心配性」くらい有名なの?」 「「お父さんは心配性」はあんまり有名ではないと思う…高樹なんでそれ知ってんの」 「こないだ家にあったんだよ。嫁がさ「急に読みたくなった」とか言って、どーんと…」 「時計をくれた奥さんが」 「もうその話はいいから」(クールに) 「高樹はさ、アニメとか見ないの?」 「見なくはないですよ…でもまあトトロとか」 「あー…」 「小学生の時はね、アニメージュとか買ってた」 「へえ! ガンダムとか」 「そうそう、でもオレ中学に入って音楽はじめちゃったから、全然見なくなっちゃった」 「「音楽はじめちゃったから」(笑)かっこいー(笑)! ギター?」 「うん」 「アコギ?」 「家にあったからね。親父が長期入院しててさ、暇だからギター買ったとか言って」 「アナタの家、ちょっと変わってるよね」(スティーリー・ダンがずっとかかってる家だもんなあ…バ〜ビロンシスタ〜ズ、シェイキッ!) 「入院中ギター弾けないよね普通」 「チューニングするだけで怒られそうだよね」 「フォークとか? さだまさしとかやってたの? 明星とか見て」 「いや、ビートルズとかのコピーを…」 「そりゃ明星には載ってないねえ」 「うん、だからコードブック買ったりしてね、拙くですけどね、やってた。ギターもカスタマイズして」 「カスタマイズって?」 「あー、なんか中学で筆記体とか習うじゃん? で「I can play the guiter very well」とか(本人真顔、会場爆笑)、あと椰子の実の絵とか、よくわかんないけどあの△が重なったマーク(五芒星?)とか」 「全然合わないじゃん(笑)、絵柄が」 「まあ中学生だから」 「ありとあらゆる想像力の限りを尽くして書いたのね(笑)その頃ヤスはコンピューター?」 「そう! あいつさ、誕生日に買ってもらってマイコン持ってたんですよ。マイコン! で、2週間ずっとプログラミングしてね、エンター押したら花火が上がるってやつ作ってね、リビングにこう、家族を集めてやったわけ「これからエンター押すから見てて」って。そしたらほら、ちょろっと花火が「ひゅうううううう〜〜〜、ぽんっ」って(笑)。それでもう「オレの2週間これだけか…」って嫌んなって、それでもうやめちゃった」 「向いてないよねあいつ」 「向いてない向いてない。アップデートとかもマメじゃねえもん」 「で、話戻るけど、その筆記体でカスタマイズした(笑)ギターを、そのヤスが」 「あーそうだね、オレ高校入ったら自分の買っちゃったから」 「ヤスは「やだ」とか言わなかった?」 「言わなかったね…加藤くんは楽器とかはやんないの?」 「このアルバム合宿でレコーディングしたんですけどね、その時にギター買おうかって話で盛り上がって、何が必要かなー、チューニングする機械、ほら挿すやつとか」 「あると便利ですね。挟むやつがいいよ」(真顔) 「まあいろいろネットで見てて、その気になって買おうとしたらメンバーが「ネットで楽器買うか!」って…だからまだ買ってない。でも楽器屋行くと試奏しなきゃいけないじゃん、ほらオーケンがギター弾けなくてさ、ギター買うために猛練習してるみたいな」 「高級な服屋に服買いに行くのにいい服着ないと、的なね…キーボードは? 作曲するならキーボードの方が良くない?」 「キーボードはある」 「あ、そうなんだ」 「以前PVのちょっとした曲つくるのに買ったの。でもあれさ、すごいね…何つーか、上手く弾けないじゃん、うまくテンポが揃わなくて、2日2晩汗だくんなってやってさ、ふと見たら「スケールを揃える」っていうボタンがあって、アレ押したら一発で揃うんだもん、オレの2日間を返せ!」 「何「スケールを揃える」って」 「よくわかんない…」 「グリッドに添って並べるみたいなやつかな?」 「そうかも」
・次回作 「ベイビーサイダーをやろうかと思ってる。高樹コメント書いてよ」 「えー、書きそうな人が書いてもつまんないよ」 「じゃあ永六輔さんにコメントもらって、カトウカケハシ力で(笑)。あと本さんとね、展覧会もやります。高樹も描けば、絵」 「オレはいいよ…絵は」
・イベント終了後、かせきさんにサインをもらう。歌詞カードの表紙に書いてもらおうとしたんだけどカードがうまく取り出せなくて焦っていたら取ってくれたかせきせん、優しい! 雰囲気が和んだので「ワタシも先週ギター買ったばっかりなんですよ、これから練習しようと思って」と話しかけたら「幾らくらいの?」だって(笑)。「さ、三万円くらいのです…」「それくらいだよねー、うん」「がんばりましょうね」「や、オレはまだギター買ってもいないけどね」「あ、そか…ええと頑張ってくださいね、応援してます」「ありがとうございます」 真摯で、優しい握手と、サングラス越しのまなざし。 いろんな人が彼の周りに集まるのがよくわかる。 そしてせっかくフラゲしたからとその夜のうちに聴いたアルバムはマジでめっちゃ良かったのでした。きゅんとする。うたごえも好き。太くて、なのにどこか哀愁漂う声で。永積くんみたいかな、ちょっと。で、高樹さんのコーラス聴いて「うわっ変な和音使ってるしかも4回とも変えてる! 変態(褒めてる)!」って腹抱えて笑いながら寝ました。
・まあ寝たころには「素敵な方ですよねうふふ」的な余裕を取り戻していたんだが、実はサインをもらう前、椅子を片付けちゃうから避けて、みたいなアナウンスがあって壁際に移動したところ、なんか隣に背の高い人がいると思ったら高樹さんが普通にビール飲んでて! 気付いた途端意味不明に腰砕けそうになりました。何あれ色気? それともワタシがそんなに好きだったの? ヤスじゃないんだよ? ヤス直視したらどうなんのワタシ? ひいいほんとに膝がくがくいってるよーとかなり挙動不審になってたこと請け合い。なんかこう、処女切られた気分だわ(笑)、高樹さんに。キリンジ処女。でもきっとこれくらいフレンドリーなんだよね普段から。ほかのファンの人どうしてんの? 卒倒したりしないの(しねえよ・笑)? 慣れてんの? 思い起こせば晴れ豆でキクチさんがシークレットでサックス吹いた後、普通に客席に降りてきて間近にいらした時も膝震えたなあ…今じゃもうすっかり先生ですけど、こんなの久々。キクチさんの時は「ワタシこの人に会ってしまったらどうなってしまうのか」と本気で思っていたから、ライブに通えるようになるまでも時間がかかった。あのころの状況もあって撞着したキモいファンと認識されずに済んで良かったのかもしれないけど、でも見逃したスパンクハッピーやDCPRG1期はかえってはこないのだ。 過ちは繰り返すまい。キリンジのライブは絶対行くよ! 明後日BBL予約開始!
・あと小ネタ ・フラゲっていつから言うようになったんだろうね→スピリッツフラゲ ・本当はかせきさんはスカイプで衛星中継みたいにして登場したかった
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