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うたかた
sakurako

2011年09月27日(火)
「夜の指輪を盗むのは誰」 菊地成孔 3DAYS@新宿PIT INN〜デュオwith 大友良英〜

開始前、隣に座ってた子と「大友さんって……お腹空くよね、見てると」とか「南さんが好き」とか話してたらことごとくMCで実現した水曜WANTED!のような夜でした。

黒スーツにDCPRGシャツ(白)、ハットも白。

「最近はオレたち、年に1回くらいしか会わないよね。ここで」
「今年は違うよ、12月に武満トリビュートで会ってるもん」
「あ、そか」
「オレたちさ、武満のあと何かすっげえ怒ってたよね」
「怒ってた怒ってた、大友っちと一緒に楽屋の壁。壊しそうなほど怒ってた……でも何で怒ってたのか全く覚えてない」
「オレも覚えてない。打ち上げ楽しかったことしか」
「楽しかったよね」
「今はね、ナルちゃんが楽屋で食べてたカレー弁当がすごくうまそうだったことしか頭にない」
「へ? ああ、上のカレー屋のね(笑)。うん、あれウマいよ。750円」
「すげえうまそうだった……」
「え? そんなに? 『ちょっとくれ』って言えば良かったじゃない、知らない仲じゃないんだし(笑)」
「言おうと思った時には白ごはんしか残ってなかった」
「そんなにウマそうだったんだ」
「うん」
「よく言われんだよね、オレ。こないだダチと韓国行ってカムジャタンの店に入ったんだけど、余談だけどIKKOが良いって勧めてたからその店にしたんだけどね、知ってる? あの鶏を丸々タライみたいな鍋で炊くやつ、カムジャタンって、それを『おーこりゃウマイウマイ』って食ってたらいつのまにかオレのまわりに人だかりができて、あまつさえ指さして笑ったり何か言ったりしてるわけ。最後には店長が出てきて何か言ってる。ダチに『何て言ってるの?』って訊いたら『あいつは開店以来一番美味しそうに食ってる』だって。看板見たらさ、その店1965(? 怪しいこの年号は)年創業って書いてあるの。オレがガキの頃からやってる老舗で、オレが一番ウマそうにカムジャタン食べたってことだよね」
「オレもその店行った、多分同じ店。で、人だかりできたよ」
「マジで?」
「うん、オレのこと指差したオバチャンが『この人指のこんなとこに毛が生えてる』って」
「全然違う理由で同じ店で人だかりができたってオチだな……じゃ」
「そろそろ始めましょうか」
「2曲くらいね」

1st set
インプロ01.
「長いほうのやつ」。
ゆっくりと旋回してもつれ合いながら上昇していく何か。ガムランにも似たプリペアドギターの音色と、ピアノ。みどりのゆび。まっすぐにのびてゆく。(まあ魔法の指を持ったキクチさんの手が鍵盤に触れるたび、瑞々しい植物がすくすくと育ってゆくイメージというか。そして陳腐かもしれんが映像的には「オープンランカ!」が一番近い(笑)。どんだけ乙女)鰐口クリップでプリペアドされたギターがとても良い音色。ガムラン。ガムラン。ガムラン。
インプロ02.
「短いほうのやつ」。
インド調に聴こえたのだけど、もしかして前説がカレーだったから?
個人的な旅。旅行先の部屋。

「ブラジル行きたいな」
「ブラジルにはカレーないよ」
「なんか豆の煮込みみたいのしかないよね」
「インドにはカレーしかないけどね」
「しかし毎年飽きずによくやってるよなオレら」
「7回目だもんね。こっそり全部録音持ってる人とかいないかな」
「CD出せるよな……ええと警察に突き出したり責めたりしませんので、全部録音してる人がいたら申し出てください。買い取ります。140万で(笑)」
「高ッ」
「馬鹿だな、買って、CDにして、回収すんじゃねえか」
「7年間……長いね。毎回こうやってだべってるけどね」
「今ラジオやってんだけどストレスたまるんだよね、ラジオ。言えないこと多いじゃない? だからここで解消する」
「オレもラジオやってるけどそんなことないなあ」
「あ……そか。でもアナタのはアート系だから。ワタシのラジオはエンタメ系だから、ストレスたまるのよ」
「あーオレさ、アーティストっぽい格好しようと思って服買いに行った」
「それでそれ?」
「うん、いつもと同じ……ナルちゃん、ラジオでどんな話してるの」
「ジップのアナウンサーの人(ドリカムの人の妹と嘘をつくキクチさん)が鈴木杏樹の時だけ笑わないとか」
「え、鈴木蘭々?」
「昭和だなあ……和田アキ子と優木まおみが似てるとか、内田春菊とジュジュが似てるとかね」」
(しばらく昭和ネタ続く)
「初めて会った時からだとオレたちもう何年の付き合いになる?」
「20年以上じゃない? うっわーよく持ち堪えてるね」
「アナタ意外と人付き合い短いもんね……オレは人付き合い、長いのよ」
「うん、オレは最高で持ったバンドで7年かな?」
「そのバンドにワタシいませんでしたっけ(笑)」
「いたいた、そういえば(笑)」
「屋形船乗ったりしたよね。バンドメンバーの嫁とか彼女とか連れてさ、すっげえ盛り上がってオレなんか着物着ちゃったりしてさ、で、みんなアナゴの天麩羅がうまいうまいとか言って盛り上がってる最中にオレと大友っちだけ……」
「船酔いでへろへろ(笑)」
「しかも酔い止めばりばり飲んだら船を降りるころにはなんかもうへろへろのふわふわになってたんだよなあ」
「薬と酔いで」
「大友っちは、それでバンドやめたんだっけ?」
「違うよ(笑)!」
「今日もオレ、薬飲んでるんだよ。週末から風邪引いちゃってさ。病院好きなんだけど……知ってるか、でも連休で休みだったからさ、ベンザ的なものを一瓶飲んだら気持ちよくなっちゃって」
「病院! 薬! オレも好き!」
「ね。ほらオレら対外的なアピールでも何でもなく、ノンドラッグじゃん。市販薬で、こう……気持ち良いよね」
「うん。ケミカルなものを身体に入れて体調が変わるとか、すげえ好き。面白い」
「で、呂律回んないんだよねあんまり……あのワインを少々飲んでの人何て言ったっけ? 惜しい人を亡くしたよ。名前何だっけ、あの政治家?」
(客席から「中川」の声)
「ああそうそう。ほら、ワイン飲んで……あれくらい呂律が怪しい」
(再び客席から「自殺」「暗殺」の声)
「え? 暗殺説があんの? へー」
「はじめて観客と交わした会話が「自殺」と「暗殺」(爆笑)」
「とにかくよく持ち堪えるなあという話だよね。オレさ、日本に入る前からロクシタン使っててイキがってたんだけど、とうとうシャンプー変えた。スカルプDがいいよ(笑)」
「持ち堪えるって、そっちの話(笑)?」
「うん。水道橋博士に勧められて以来、使ってる。成果は……まあ楽屋で」
「水道橋博士友達なの?」
「うんまあ知り合いってとこ。怖いよ水道橋博士……そういや南さん今フランス行ってんの知ってる? もうフランスから時間を問わず写メ届きまくんの」
「へー何しに行ってんの?」
「そりゃもう……言わずもがな(笑)。じゃ時間も少なくなってきましたし、2nd行きましょうか。100曲くらい(笑)」
「1曲2秒とか(笑)」

2nd set
01. ゆるめボサノバ(たぶん「プリペアード・アコースティック・ギターとアルト・サックスによる無調ヴォサ・ノヴァ、ストリングス・クラウス・オガーマン・ソース」のアレンジ)
02. 早めボサノバ
03. 何か聴いたことあるようなボサノバ

「ええとずっとプリペアドでやってきたけど、次どうします? 普通の聴きたい人……あんまりいないね……じゃあプリペアドが良い人? あーこっちか」
「まあアコギのプリペアド、ナルちゃんとしかやんないからねえ」
「あ、大友っちさ、今ちょっとネガティブなこと考えたでしょ」
「うん……」
「『オレがキレイに弾いたって誰も聴きたくないけど、プリペアドなら珍しいから聴いてやろうかなって観客は考えてる』って思ってるでしょう」
「うわっ、その通り」
「相変わらずだなーなにそのO型のネガティブ思考」

ほんと仲良しだなあ。ていうかそれがわかるキクチさんすげえ。
いつも思い出すのが、大友さんがギター再開したのはキクチさんのおかげって話。

04. アコギボサノバ

「さっきも言ったように風邪引いてて声ががらがらなんで歌はやめとこうと思ったんですがそれもまあ味ってことで1曲だけ」
夜電波にリクエストしたくらい好きだったから嬉しかった。
1曲だけって言ってたけど、06もスキャットのみで歌う。染みたな。

05. マイルスデイビス
06. You don't knou what love is.
07. All the things you are(ボサノバ)

enc. 「ボサノバじゃない曲やりましょうか」
追悼というか賛歌というか。壮大だった。
MCばっかり記録してるけど、すごい聴いて良かった夜でした。