ヒルカニヤの虎



 やんでた雨に気付いて

あ、しまった今日カリカオールだ!さすがに今週は無理〜。
カリカオールまでに全部書きたかったのに。もう先に考察を書いてしまいます。ここから先は疑問を並べ立てただけで結論もなにもないですが、もしカリカオールや、あと来週の神保町トークで家城さんがなにかを言ったなら、ぜひ教えてほしいです親切な人。レポ期待!


で、ひっかかりどころを探るための作業として、思い出せるだけ書き出してる途中なんですけど。書きながら考えていること。
メモ読み直しても、やっぱりおかしいのは林ちゃんのキャラクター。
何回も「えっ!?」ってなるところがあって、ずっと、ほとんどずっと違和感があった。1回目に入りこめなかったのはきっとそのせい。私が飲み込めなかったのは、林ちゃんの変化についてけなかったからなのか?

家城さんの演じる七変化のキャラはみんなそれぞれ個性的で奇矯なんだけど、それぞれのキャラの中では矛盾がない。見ていて違和感を感じないし、動機と行動に納得がいく。
対して林ちゃんはすごいブレてるように感じる。そんな簡単に!?っていう理由で人を殺す(「うざい」とか「うるさい」とか)。それは後で人間性の欠如orノルマだったとわかるけど。たとえ林ちゃんが魔族になってから人間らしく成長し人間性を獲得していったのだとしても、ほとんどの場面において共感がむずかしかった、私には。対お下品夫人のときと、対初めての魔王のとき以外。オコチャも王様もみゆき姫も、邪鬼も愛せるのに。2部の子ども、轟さんたち、お下品夫人、魔王も愛せるのに、なんでだろ。
林ちゃんはそういうふうにつくられていない?

お下品夫人に向かい、林ちゃんは殺人についての快楽と罪悪感を吐露する。殺す数だけ林ちゃんの首周りのネクタイは増え、葛藤をエサにネクタイは伸びていく。そうすることで林ちゃんは成長する。
ノルマ達成のために無茶な流れでピストルをぶっ放していた林ちゃん。お下品夫人のときだけ陸奥(みちのく)ぐるぐるタイフーンが出たけど、あれ以外はピストルによって丸腰の弱者を撃つだけの虐殺。それって強いってことなんだろうか。少なくとも魔王の部下らしくはない。魔王ランディという名前=人類共通の仮想的である象徴的権威を振りかざさないで人を殺すことは、あとで明かされる魔王の使命(人間同士の争いをなくすこと)につながらない。魔王軍にとって殺戮は人を守るためのデモンストレーション。でも林ちゃんのは人間が人間を殺して、ただ人口を減らしてるだけのような。んー、コントだから?
2部のコント中、ピストルを撃つときの林ちゃんは一度も魔王の部下だとは言わない。
そう言わなかったのは終盤の気づき「第1部と繋がってたんだ!」のためだけなのかな?

あのニセ魔王とニセ林は、どういうことなの?次元が違うの?時間が違うの?まったくの別人なの?
あの一幕が挿入されることで、時間軸がわからなくなっている。
役名Tシャツを着たデッカチャンとコッセこういちが蘇りを演じ直すところ、あれは1部の単なる反復ではなかった。コッセ林は「お前を殺すために旅をしていたんだ!」「あなたを殺すかもしれませんよ」と魔王ランディに言っちゃう。人間だったころの林ちゃんはせっかくタイガーバームを集めても殺すと言えない、魔王を殺せなかった人。あのときは人間だったから?でも手下になり、No.5になってからも、お下品夫人の前で「私には魔王を殺す資格がない」と言っていた。ああでも魔族として生き返ってから人間らしい心を得た稀有な存在だから、魔王を殺せなくなったのか。でも罪深さにおののいていた演歌好きの林ちゃんは、両中指を突き上げて「ファックオコチャ!」と叫ぶコッセ林と同一人物なのかな?というのがずっとひっかかっている。コッセ林はこれまでの自分の所業(第1部)を魔王からあげつらわれ、「なるほど僕は最低だ」と大笑いする。そしてとても前向きに人を殺すことを誓う。あれは絶望の笑いなんかではない、悪を是とする愉快な笑いだった。この林と魔王の2人は絵に描いたような悪役コンビです。
ひるがえって林ちゃんは、お下品夫人に2部での悪行を列挙される。拾ってきた子を殺し、パンツかぶっておどる人を殺し、不動産屋で轟さんたちを殺した。...「僕は悪でしょうか」「僕はどこまで強くなるんでしょう」それはどういう意味なんだろう。単純に、強くなるにつれ人の心が戻って苦悩が深まり、さらに強くなる、という連鎖の結果?
お下品夫人を前にした林ちゃんと、初めての魔王の間の林ちゃんは同じ人という感じがするんです。服装は違うけど。それ以外の1部とコントは違うような気もする。
お下品夫人を倒して、そこから林ちゃんは着物姿に戻った。物語のはじまり、大量殺戮用の爆弾ロボット(ではなくて実はただの死体)から奪ったスーツは、どういう意味があったんだろう。うーん、なんか大事なこと忘れてるのかなあ…。黄色の垂れ幕が落ちて世界が戻ったのはどこだった?お下品夫人のところだ。そうだ、演歌が流れた。

魔王も同じ。林ちゃんが死んで生き返って13年、「(殺しにきたら)返り討ちにしてくれるわ」と言った魔王デッカがたった13年で「なんかもう疲れちゃった」っつって自殺するのかな。魔王ランディはもともとタイガーバームの神様で、そのあと上の神様にいわれて魔王になったけど、でももうずっと人間界で君臨してた...はず。1部の魔王と、初めての魔王の間の魔王と、デッカ魔王は同じなんだろうか。違う人にとっての重みとしての13年なんだろうか。先に「意義」があるのだから、あとに続く「存在」は誰でもあって、誰でもいいのか。棒みたいに拾われて育てられてふりまわされて捨てられたのは林ちゃんで、でも魔王でもある。彼らは、リンケイソウという人と魔王という人は、ひと続きの・途切れのない・不可逆的な時間の中で生きている同一人物なんだろうか。
初期衝動=剣の名はカリカ。うーん。。。


追加の疑問とか感想とか覚書
・「隅」「角」という概念が何度か出てきた。三角コーナーの汚物、立てかけられた棒きれ、部屋のすみで13年間忘れられた伝説の剣、これらは何を意味するの?
・初期衝動を手にしたままで林ちゃんは魔王になった。林ちゃんの初期衝動は魔王討伐だったのに。どこでカリカの効力は消えたのか?そもそも魔王討伐は初期衝動ではないのか?
・お笑いファンでない後輩(でもこの日記はみてる)から「穿ち過ぎです、てか博論からの逃避だろ」と容赦ないメールがきました。ごもっとも。たしかに、カリカっていう先入観があるからなかなか手放さないで突きまわしてるのかもしれない。でもあの熱量には引きずられるんだよ...
・引っかかりとは別に残る言葉:みゆき姫の「ありがとう」、お下品夫人の「この世の中のあらゆることにおいてね、資格なんてものはひとつもないのよ」「ほんとうは、おきれいと言われたかった」、林ちゃんの「必要悪など認めていたら、人間に進化はないのだ」


うん、だからつまり、いろいろわからないことだらけです!
マルホランドドライブみたいだな、と思ったのは、ある次元でA→B→C...っていう表の物語が進行してて、でも実は裏に違う1→2→3っていう別次元の物語も動いてる。で表に見えているものも一部は裏で、もしかすると順番も違って、間の無意識のところが引っかかってしゃあない、という状態に近いのかなと。

わからない、わからないわ!(@中川パラダイス)
これ後からみたら自分でもわからないだろうなあ。だから何?っていう。
家城さんの考えてることとは全然違う気がするけど、まあでも1週間いろいろ考えておもしろかったからいいや。


脈絡なく思い出されるのはいつかのカリカオールの林さんのことばと、「ムネリンピック」の家城さんの遺書です。
林さんがSなのは家城さんの洗脳によるものうんぬん、という論争が去年のカリカオールであって、そのとき林さんは「結局あなたが支配者で自分は洗脳され手のひらのうえで操られてる傀儡だ」(大意)とすごいテンションで喚いてた。あのとき林さんは天才の隣にいる人なんだなと思った。なんとはなしに。
あとムネリンピックの家城さんの遺書(※いや遺書ではないんですけど)では、「おもしろければいいのか?笑えればいいのか?笑えなくても脳が興奮してればいいのか?」(大意)という自問自答をしていて、なんとなく、カリカのコントは笑いのパートと家城さんの言いたいこととを分けて見るほうがいいのかなと考えたりしていた。笑い=言いたいこと、というときもきっとあると思うけど、なんとなく、分けないとわかんないことのほうが多いような気がして。
家城さんはきっとものすごく伝えたい欲求がつよい人なのに、その伝え方がものすごく込み入っている。あえてそうしてるというより、そうしないと伝わらないことを伝えたがっている、のかな。

2010年06月18日(金)
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