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あみの秘密日記
水城あみ

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2004年07月12日(月)
松田優作になりたい男。




昨日、電車の中で自分の事を、かっこイイと思っている男と会った。

彼の名前は、高田俊平。

姉・理子の元彼である。




真っ白いTシャツにGパン、黒いサングラス。

サングラスは、必須アイテムらしい。




あみ 「いつもサングラスしてるね、どーして?」

俊平 「あぁ〜これ?!人に目を見られたくないからなんだ!」




あみ 「恥ずかしいの?」

俊平 「フッ まぁ〜そんなとこかなぁ ハハハハッ」


席が空いたので、私は座ったが、彼は座らなかった。




あみ 「ここ空いてるよ! 座らないの?」

俊平 「あぁ 俺はいい」


私の前で彼は、吊革につかまりながら、本を読み始めた。

何の本を読んでいるのか見てみると。

大薮春彦の『野獣死すべし』だった。




あみ 「大薮春彦 好き?」

俊平 「好きだよ、ほとんど読んでるしね」




あみ 「松田優作も好きなんじゃない?」

俊平 「でー好きだよ!」


やっぱり彼は、ハードボイルドが、好きな男なのだと思った。





あみ 「音楽は、矢沢永吉なんて、好きなんじゃない?」

俊平 「でー好きだよ! あみちゃん良く知ってるねぇ。」


実は、理子から聞いていたのである。




彼は、自分が松田優作だと思っている。

てか、松田優作になりたいと思っているのだ。

彼は、優作になる為に、こんな事を毎日やっているらしい。




まず、毎朝『めざましテレビ』は、必ず見ているらしい。

めざましテレビを見て、優作になれるのか不思議ではあるが、

彼にとっては重要な番組らしい。




はみがき粉は、デンターライオン、朝食は、いつも牛乳と

ゆで玉子と生のトマトをまるかじり。




そして、豪快にお金を使ってしまうのが、かっこイイ男だと

思っているようだ。

ゲーセンやパチンコで1度に1万円から2万円は、使ってしまうのだ。




こんな事、屁の河童っぽいが 普通の大学生は、やらないだろう。

ケチったり 節約などしないし、けして貯金なんてしないのである。




そして彼は、身体にも気を使っている。

週に2,3回トレーニングジムに通い 筋肉をきたえている。

彼の辞書には、デブになったら死ね!!

らしい。。。





一途な男でもあるようだ。

2年前に理子と別れたのに、まだ想っているみたいだ。



俊平 「理子は、元気か?」

あみ 「うん!元気だよ」



俊平 「彼氏は、いるのか?」

あみ 「うん、いる。」

俊平 「そ、そっか。」


ひくひくと頬を引きつらせていた。

まだ、好きっぽかった。




しかし俊平は、ハードボイルドな男を、演じなければいけないので

もう何も言わなかった。





彼は、普通の暮らしが、できない男なのだと思う。

理子の話だと、自分の過去は、暗ければ暗いほどかっこイイ

と思っているらしい。




なんたって松田優作なのだから。


何度も彼は、理子にこう言っていたそうだ。



「実は、俺の両親は、ホントの親じゃなかったりしてな。

ホントの親は、もう死んでいてさぁヤクザとか、殺し屋がホントの

父親だったらカッケーんだけどなぁ〜」

と、本気で言ってたとか。




小説というモノは、こんなにも人を、バカにしてしまうのだろうか?

将来の夢は、「昼間は、普通のサラリーマンで夜は、殺し屋
なんてカッケーなぁ」


と、本気で言っていたらしい、ここまでくると本物のバカである。


彼は、普通がいやなんだと思う。

人が経験しないような事をしたいのだ。



この先彼は、結婚しても離婚を繰り返し、いろんな所に子供がいる、

そんな男に憧れているに違いない。



間違っても、日曜大工なんかして妻を喜ばしたり、家族旅行

をするマイホームパパには、絶対になりたくないと

思っているのだ。




なんたって、松田優作なのだから。



そんな彼が、「大っ嫌い!」と理子が言っていたと言ってやろうかと

思ったが、余計なお世話なのでやめた。




情けない男と思わせといて、実はどっこいカッチョいいんだぞ

と思わせる作戦なのかもしれないが、

バカが先に見えてしまうのが悲しい。





駅で別れる時、彼のママが迎えに来ていて、ママの車に乗って

彼は、帰って行った。


彼がママを見つけた時の笑顔満開の顔を、私はずっと忘れないだろう。