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■ 大丈夫
6年前に 23歳年上の
当時 私の通う大学の講師であった人に
初めて抱かれた夜も
同じように 私の肌という肌を
両手のひらで くまなく撫でられ
太い腕や脚は
ゆるく けれどもしっかりと
絡めあうように 私を包んで離さない。
そういう抱かれ方は
20代や30代の人からは
されたことがないので
それがかえって 私の心に深く深く
染み込む。
理事長がシャワーを浴びているその時に
ドア一枚隔てた ホテルの廊下から
低い話し声と足音がして
まさに 私たちの部屋の
真向かいのドアが
開く音 そして閉まる音。
若手の男性だけの
慰労会から 戻られたのでしょう。
シャワーを浴び終えた理事長に
そのことを告げます。
今出ると 危ないな
ちょっと待とう。
お互い 再びベッドに横になり
後ろから 背中越しに抱きしめるように
ぴったりと 理事長は私を包みます。
他の県の、事務局員の女性からね
どうしてあんなに素敵な事務局長と一緒に居て
好きにならないのかって聞かれました。
ははは
で、何て答えた?
まず、私は事務局長のタイプじゃないからって
それと
私は、ぼーっとしているから
たぶん、性格的に合わないって
そう 言いました。
情事のあとの こういう会話は
その情事以上に 官能的なものです。
でもね、本当は違うんです。
会話は 笑みを含んで続けられます。
隣に、それ以上に素敵な男性が座っているのに
どうしてわざわざ 斜め前に意識が向きますか?
理事長の私を包む力が
少しだけ 強くなります。
うまいねぇ…
そういうことも 君は言うんだな。
あの部屋の 各自の机の配置は
理事長と事務局長が向かい合い
私は理事長の隣に座っています。
生意気を 言いました。
互いの 微笑は
いつまでも途絶えることはありません。
もう、大丈夫だ
鍵を。
はい。
現実に 独りに
戻る瞬間です。
私は カードキーだけを
来るときと同じように握り締めて
理事長の部屋を出ました。
大丈夫、大丈夫だから…
自室に戻って
繰り返しリフレインされる言葉
部屋を出る瞬間に
耳元で囁かれた その台詞が
その言葉の意味以上に とてもとても切なくて
私は独りのベッド
深く眠れないまま
プロジェクト最終日を 迎えました。
2008年11月01日(土)
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