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■ 夢のようだ…
5分だけ…
5分だけ こっちに来ないか。
シャワーを浴びた直後
全裸に バスタオルだけを羽織った私が
携帯ごしに耳にした
理事長の台詞は たったそれだけで
私は 笑いながら
ちょっと ちょっと待っててくださいね。
今 行きます。
とだけ 答えます。
塗れた体と髪を 荒くタオルで拭い
Tシャツにスウェットを穿いて
カードキーだけを手に
自室のドアを再び 私は押し開きました。
ドアストッパーによって
数センチだけ開かれた 理事長の部屋からは
薄く オレンジ色の光が漏れていて
2度の 軽いノック
それに答える 返事
するりと その隙間に自身を滑らせると
テレビの淡い光と ベッドサイドの照明だけ
そこには
さきほどの その部屋と
同じものと思えないほどの
ある種の雰囲気が 漂っていました。
彼の肢体は すでに
ベッドの上にありました。
お風呂に 入っていたので
…お待たせを
ごめんなさい。
こっちに
彼は 枕元を軽く叩きます。
私は一瞬たじろぎ 躊躇する。
言い換えれば それだけの躊躇
でしか ありえなかった。
いいから。
そんな私の心を 見透かすように
否
ある意味では 誤解だったかもしれない
その躊躇を 見透かすように
イタズラは しないから。
表情は見えない
けれども笑いを含んだ 彼の声だけが
薄暗い 部屋に響きます。
彼が 右手を大きく広げ
左手で布団をめくった その空間に
私は するりと身を滑らせました。
彼の右肩と 右腕の間に
私の濡れた髪が触れ
私は自身の右手で その右腕をゆるく掴みます。
5分でいいから。
5分経ったら 帰っていい。
はい…。
私の右手は 無意識に
彼の右手から 左手へ
その対象を変え
自由になった 彼の右手は
私の右肩を 抱きます。
テレビからは モノクロの
フランス映画の音が流れていました。
唇を 先ほどと同じように
彼の首筋へ這わせます。
そこから徐々に 顎へ頬へ口角へ
目が合った その瞬間に
3度目のキス。
彼の右手が 私の乳房を撫で
彼の左手は 私の腰を撫でます。
何度も何度も
唇を合わせました。
Tシャツを押し上げるようにして
今度はその唇が 私の右胸を愛撫する。
たまらなくなって
声が出る。
私は 自身でその邪魔なTシャツを脱ぎ捨て
下半身は 彼の手によって
一糸纏わぬ姿にされる。
彼の身体に覆いかぶさったのは
私の肢体であったのか
それとも 精神であったのか
夢のようだ…
若いというのは 素晴らしいことだ…
耳について離れない
酔いに含んだ 彼の言葉。
そのままで そのままで…
離れないで そのまま。
全身を くまなく撫でられるように
私は 理事長に抱かれました。
5分が10分
10分が15分
気づけば 3時間だ。
つぶやく声に 互いにクスクス
笑い合いました。
朝は 別々の方がいい。
そろそろ、戻ろうか。
い や 。
こういう口のききかたをしたのは
初めてでした。
その言葉に 理事長は
マイッタナ という顔を一瞬して
その夜 何度目かも分からなくなったキスを
優しく してくれました。
2008年10月31日(金)
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