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■ 発してはならない臭い
「臭い」をね させないように
そう気をつけていないと 駄目なんだよ…。
九州各県の それぞれの理事長が集まった
このプロジェクト。
この組織は その理事長直属で共に働く
事務局員という役職があります。
事務局員は そのほとんどが
若い女性であり
私の県でも それは例外ではありません。
理事長にとっては
若い女性が自分の下で働くってことに
特別な感情を抱くものなんだよ。
私は ゆっくり頷きます。
いい年した オヤジのロマンとでも言うのか
(苦笑)
ほとんどの場合
そういう感情は表に出さないもんだし
出してはいけない。
ご法度なんだよ。
わかります。
すごくよく わかります。
理事長は 苦く笑います。
そういう感情が表に出るとね
臭いが するもんだから…。
話題は 私の恋愛の話に移ります。
もう あれは完全に終わったのか?
ええ、完全に。
理事長が あれ という私の恋愛は
今年の7月に終焉を迎えた
横浜の彼 との恋愛のことです。
彼と別れたその翌日に
私は恥ずかしげもなく 理事長に
その話をしたことを 思い出します。
空いたグラスに バランタインを注ぎます。
私はロックで
理事長には ごく薄めの水割りを
そうさせた私の感情は
私に残された唯一の理性だった気がします。
もう、誰にもするまいと
そう固く誓った 2年前に終わった「先生」との
あの恋愛のハナシを 私はしました。
それが始まった当時、私は19で成人もしていない
今よりもっともっと子供でした。
でも、きっと彼も
子供に戻りたかったんだと思います。
だから、あの恋愛があったんだと
そう今では 思っています。
23も年の離れた 男との恋愛に
理事長は静かに耳を傾けてくれます。
もう、戻るか?
…そうですね。
互いの言葉には 確かに
別れへの 互いへの 名残が滲んでいました。
私が立ち上がり
グラスの片づけをしていると
側に 理事長の香りと
バランタインに起因した
その肢体から発せられる 熱を感じ
無意識のうちに
互いに腕を伸ばし
私たちは 抱き締め合いました。
理事長の大きな腕が
私の背中を大きく包み込みます。
私も自身の腕を伸ばし
理事長の肩に 首に
その腕を 絡ませます。
私の肩から 腰にかけての
決して美しいとは思えないラインを
理事長の掌が 何度も何度も往復し
その動作に クスクスと
くすぐったさを声にしながら
酔いに火照った その唇を
私は強く 目前の首筋に押し あてがいます。
同時に
強く求めるように
互いの唇を 私たちは寄せ合いました。
そして また強く 抱擁。
一度身体を離し もう行きます、と
カードキーを手にドアに向かったものの
再度 ドアの前で
引き寄せられるようにまた強く
抱擁を交わし
私たちは 2度目のキスをしました。
おやすみ と言ってくれた
ドアの隙間から垣間見えた
理事長の酔いに崩れた笑顔が
思い出されます。
自室に戻った私は
2本 煙草を吸って
シャワーを浴びました。
濡れた身体を バスタオルで拭いていると
その時の私の感情は 確信 でした。
件の「臭い」の話を
今だけ忘れようと 淡くそう思いながら
私は再び ホテルのドアを押し開きました。
2008年10月30日(木)
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