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■ 犬養道子、途中経過。
大学生のころ、師匠が言及した書がいくつかある。 彼は学生に「課題図書」を課すことなどぜったいに しない人間なので、ときおりだしてくる書名は いつも印象に残る。 犬養道子の『人間の大地』もそのうちの一冊だ。
こう毎日図書館にいるのにPCばかりに 向き合っているのもときに退屈で、 いつも余計な本を引っ張り出してきては 読みふけってしまうのである。
というわけで、『人間の大地』どころか、 分厚い『犬養道子自選集』全七巻を片っ端から 読んでしまうという暴挙に出た。 (でもまだ二巻目。ちなみに『人間の大地』は第三巻にある)
犬養道子がアメリカを目指した『お嬢さん放浪記』から 始まって、祖父の死(五・一五事件)からアフリカに 導かれるまで、その流れがすこしわかってきた。
まだ途中なので、一巻で印象に残ったことばを ひとつだけ記す。
「人間は最も素朴なところで一つである。 驚くばかりに一つである。しかし人の属する集団の ─国と呼ばれる集団の、生まれ育った生い立ちと、 生い立ちを包んだ風土や事情、生い立ちながら身に着けた 文化・社会の特殊性等々は、それぞれ独自なればこそ、 それぞれの集団のそれぞれの人間は、 またそれぞれに独自である。 『理解』という単語の『理解』のしかたひとつ取っても、 国それぞれで微妙な違いのあることを、 私はあの皮椅子の上に坐っていまひとたび思い知った。 素朴なところで一つながらに、歴史や文化の積み重なりが 増せば増すほど、ある意味で互いの『理解』はより難しく なるのではあるまいか…(以下略)」
犬養道子『私のアメリカ』(フレイム・ハウス)より
2004年06月26日(土)
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