あふりかくじらノート
あふりかくじら

■■■
■■
■ 造り酒屋だった。

京都で桜を待っていたのだけれど、
田舎の祖母が亡くなったとのことで
久方ぶりに父方の田舎に戻る。

徳島の山奥にある古い元造り酒屋は、
その蔵とか母屋とか古い道具やらを
すべて手放すことになるのだろう。

子どものころから転勤族だったせいで、
親戚づきあいに慣れていない。
それでよかったと思っている。
これで、また少し縁遠くなる。
こちらも三十路近くなったというのに、
あら大きくなったわねぇ、と言われる。

永い一週間だった。
祖母と二人で、あの古い家で過ごした
夜のことを思い出す。

また、京都に舞い戻って桜を迎えた。

2004年03月31日(水)

■■■
■■
■ 旅先のとんぼ玉。

京都に来ている。
アフリカの、親指ピアノを聴くためだ。

本日京都初日。
たまたま写真がうつくしいからと購入した雑誌に、
今日は東寺で「弘法さん」と呼ばれる縁日市が
おこなわれているということで
足を向けた。

たくさんたくさん観るものがある。
骨董とか古着物とか、陶器。たくさんたくさん。

そのなかで、わたしはとんぼ玉に見せられた。
大粒で、直径3センチほどもある。
グラデーションが買った円筒形に
細いラインで上品な模様がきちんと描きこまれている。
ふたつとして同じものはない。
雲の切れ間の陽が射すなか、
たくさんていねいに並べられていた。

ちょっと割高なので、買うことはできなかったけれど、
じっと見つめてたら満たされてしまった。

色とりどり。
きらり。

2004年03月22日(月)

■■■
■■
■ くじらの目的とは何か。

通訳者であり、環境ジャーナリストである枝廣淳子さんの
著書やメールニュースなどに目を通していくうちに、
自分の頭の中がきれいに整理されてきた感覚を覚えた。

「バックキャスティング」とは彼女の言葉であって、
それはたとえば、目標や理想などの大きなゴールがあり、
そこからその場所へたどり着くまでのいくつかの
要素や手段に分解していき、さらに各要素を
実現する方法を考えていくというやり方である。

これは「旗」の話に似ている。
高校生のころ、お世話になっていたある先生が
わたしに話し聞かせてくれ、わたしは以来そのことを
ずっと心にとどめていた、というものである。

まず、遠くに「大きな旗」をたてる。
そして、そこへたどり着くまでに、「小さな旗」を
いくつもたてるということである。
マラソンで、次の電柱まで、と自分を励ましながら
走るというやり方に似ている。

自分でわかっていたことを、完璧に体得しているのか
どうかはわからないけれども、目的と手段とを
明確に理解していくということは大事なのだろう。

手段が目的化してしまわないように。

2004年03月20日(土)

■■■
■■
■ 本格小説読後感。

水村美苗は、この物語を書くべくしてそれを天から授かった
ということを、強く感じさせる物語である。
前編に撒き散らされたかけらたちは、後編に進むごとに
ひとつずつ寄り合わされ、そして人生の永い時の流れ深みに
読者を引き込んでいくような作品だ。
読んだあと読者は、フミコの人生を生きてしまった感覚を
どこかでおぼえてしまうだろう。

水村美苗、この物語に人生を取り込まれており、
日本と米国との境で生きている人間であるから、
これは彼女の筆をもってしてのみ世に生み出せる
ものであっただろう。

流れるような日本語はとろりとして濃く、
饐えたような空気が匂い立つ文章の中で、
東太郎の絶望的な孤独と強烈な引力から逃れられなくなる。
見たことがあるはずもない東太郎のまなざしが、
脳裏に焼きついて離れそうにない。

これは、夜通し読み聴かせてもらう、明け方の物語である。
そして読者はまた、誰かに読み聴かせなくてはならない、
かもしれない。

***

水村美苗 著『本格小説』(上・下)新潮社

…覚悟してください。




2004年03月18日(木)

■■■
■■
■ 陽がこぼれる、風が吹く。

強い風が吹く。
街が夕暮れていく。

もうすっかり春の陽気の割合が高くて
桜色のほころびる季節となっていることに気づく。

この地球上で生きている生命体は
この地球上の一部であり、
循環する大自然のサイクルの中で
生を営んでいる。

だから、風にはかなわない。
風にはさからわない。

世界が狂ってしまわないように。
ひずみが、おおきくならないように。
揺らがないように。

2004年03月17日(水)

■■■
■■
■ 南アフリカの十年。

アパルトヘイトが終焉し、南アフリカの民主化から
十年の月日が流れた。

作家ベッシー・ヘッドがみることのできなかった
南アフリカの十年は、過去の傷跡はぬぐいきれなくとも、
深い意味をもったであろう。
世界で唯一人種隔離政策を施行した国は、
そして気候の良い、うつくしい国でもある。

人種差別の根は、ここ日本でも存在しうるということを
忘れてはならない。
世界のどこかの国でおきた哀しい出来事も、
他人事のように感じている場合ではない。

たくさんの血が流された、二十世紀を。

そしてひとり、お世話になったあの方が
南アフリカに帰国されるのでした。
南アフリカに、帰られるのでした。

わたしは、わたしが生まれたこの国に残るのでした。
わたしとして、書かねばならないことがあるからでも
あるわけなのです。

2004年03月12日(金)

■■■
■■
■ あるミュージシャンの旋律。

そのひとは、とてもやさしい表情をしていた。
身体からやさしさがあふれ出ていて
やわらかいムビラ<親指ピアノ>の音色が
とてもよく似合っていた。

なんてきれいな心の持ち主なんだろう。

彼の人生のなかで
哀しいことやつらいことが たくさんあったぶん
音楽はうつくしくすきとおり
とてもやさしく明るく照らしてくれる。
だれかの心に とどいてくれる。

そのひとは、ほんとうに
うつくしい生を歩んでいる。

ジンバブエの空のしたで
いつかまた
彼のムビラに耳を傾けたい。

ゆうべは、そんな夜だった。

2004年03月07日(日)

■■■
■■
■ ぜいたくな車窓を。

わたしはこの風景をひとりでながめているのです。
あまりにもったいなくて、好きなひとにメールしてしまうくらい。

金色の夕焼け。蒼のせまる空。くすんだブルーと淡いピンクのグラデーション。
夜があとほんの少しで降りてくる刹那の地球。その、雲のうつくしさ。
ほら、はやくみてちょうだい。
いま、わたしと同じ地球に生きている、たくさんのたいせつなひとたち。

この贅を、分かち合わん。

(車窓より、深いうつくしい色をした東京湾をながめながら)

2004年03月06日(土)

■■■
■■
■ あふりかくじら的『私小説』

読み進んで行くにつれ、こんなにずっと継続して、
ある種、潜在的な意識レベルに内在していたものについて、
ぐんぐんと引き上げられるような感覚を
おぼえる本というのははじめてかもしれない。

こんなに苦しく、こんなに快感を覚え、
胸の底の方にたまっていたものを
突き刺した針の穴からすぅっと抜き出していく。
子どもみたいに、無力さに泣き出しそうになる。

水村美苗は12歳のときにアメリカに渡る。
以来、20年の時をアメリカで過ごしてしまった
精神性を語る。

わたしも、11歳でアメリカに渡った。
3年経たないうちに帰国することになってしまったけれど
あのとき感じたこと、太平洋の広さに打ちのめされたこと、
英語という言語、日本語という言語、
日本人という存在、アメリカという国、
地球という星にすむ人々の不平等。
それらを、わたしはずっとずっと、
胸に抱えて生きてきた。
今ここで、この本にすくい取ってもらうまで、
それらはあまりにも重たかった。

だからわたしも、やっと書きたいと思う。
16年経った今。

アラスカに暮らしたこと。
「くじら」の原点を。

**********もういちど****

水村美苗 著『私小説』新潮文庫


2004年03月05日(金)

■■■
■■
■ ごく小さな世界に。

ごくごく小さな世界に生きるくじら。
わたしは、
わたし自身の人生をいきることに精一杯で、
もしかしたらそうやって生きているひとが
ほとんどなのかも、などと期待を抱きつつ
私小説を読みふける。

魂をかけて愛してみたいけれども、
それはこんな小さなくじらさんにとっては
無理なご相談なのです。

ただ、大好きなひとを大好きと思う
そういう幸せのことだけ考えて
それからわたしは
わたしを何とかしなくちゃいけない。
食わせなくちゃいけない。

自分の中にあるたいせつなもの
たくさんのものをはきだして
テーブルの上にことばとしてならべて
ながめてみたい。

*****ところで

・読みふける私小説
 →水村美苗 著『私小説』新潮文庫

・月刊『アフリカ』に拙稿掲載


2004年03月03日(水)

■■■
■■
■ そぎ落とし、いまを見つめ。

パンクしそうなので
ひとりになることを怖がらずに
ひとつひとつ並べてみて
考えてみると
すごくシンプルな生き方が残った。

わたしはとりあえず、
自分の人生をおとなしく生きよう。
ひとつだけ、ひとつずつ
追い求めてみよう。

そうしたら、ずいぶん余裕が出るもの。
そして、わたしの人生にも
やっぱり限りはあるのだから
いまの瞬間を大切にするという
そういうあたりまえのこと。

ひんやりとして、みぞれが降ってた。

2004年03月01日(月)
≪ ≫ 初日 最新 目次 MAIL HOME

エンピツランキング投票ボタンです。投票ありがとう。

My追加


★『あふりかくじらの自由時間』ブログはこちら。★




Rupurara Moon 〜ルプララ・ムーン〜 ジンバブエのクラフトショップ



『あふりかくじらの自由時間』 を購読しませんか?
めろんぱん E-mail


【あふりかくじら★カフェ】 を購読しませんか?
めろんぱん E-mail


 iTunes Store(Japan)