あふりかくじらノート
あふりかくじら



 しあわせホテル。

ひとりで旅に出るとき、このホテルに泊まりたい
ということを先に考えることがある。
あまり高級ホテルではないけれども、じつに快適で
しあわせな気分になれるホテル。

友人と泊まったギリシアのサントリニ島にある
Volcano View Villasは、その中でも最高に
うつくしい風景とぜいたくな白と青の空気に
満ちていて静かだった。

ニューカレドニアでとまったビーチリゾートも、
ひとりだけの休日でじつにささやかな贅沢であった。

どこか遠い場所で、ひとりになれるというのも魅力的だ。
昔は、旅に出るのにホテルなんて高すぎて
泊まれなかったけれど、快適できれいで静かであれば、
その夜は誰よりもしあわせな気分になれる。
ちょっとお酒を買い込むのもいい。
大人になるって、自由でいい。

「ホテル」という名がつく小説を見ると、思わず
手にとってしまう。
どこか遠い場所で、でもゆったりと安らぐ夢を、
無意識に欲しているのかもしれない。

世界中のホテルばかり泊まり歩いていて、すごく
すてきな写真がたくさん載った本があった。
彼は一級建築士だ。

2003年11月28日(金)



 スプートニクのくじら。

すっかりくたびれた文庫本の「スプートニク」を、
いつか読んでくれたらいいなと思い、彼の部屋にこっそり
置いておいて数ヶ月、やっと読み始めたらしい。

村上春樹の作品を何度も何度も読み返した時期は、
一度だけではなかったはずだ。
その、きちんと丁寧にたどっていくあまりにも
あっさり正確な描写と登場人物の動きなんかは、
わたしに自然とつながっていったし、
それでいて、わたし自身との微妙な相違の中で、
奇妙なずれの快感が麻薬のように支配した。

江国香織にもすこし似たようなことが
言えるんじゃないかと思う。

とにかくわたしは、自分のことを「村上春樹好き」であると
第三者に評されたときに激怒した。
個人と小説との関係は、すくなくとも私自身の中におては
そんなに馬鹿みたいに単純なものではない。
脳を冒す、麻薬のようなのである。

自分自身の小説を書くペースが、いまでは酔っ払った亀の
ように遅くなってしまい、なかなか人前に出せるような
まとまったものにならなくなってきた。

それでも、ことばは降り続けてくるので困る。
毎日毎日、ごまかしているけど。

しかしまぁ、するりとまとまる物書きさんは
ちょっぴりうらやましい。

2003年11月26日(水)



 幸福のおすそ分け。

ウェディングの二次会パーティ。
きれいにドレスアップしたひとたちがあつまる。

こういうところにお呼ばれする機会はほとんどなかった。
ゲームでプレゼントを頂戴することになり、お二人の
幸福のおすそ分けをいただく。

それは、「まったり」という名前の物体だった。
それが入った袋に名前が書かれており、なんだか、
まるっこくて細長くてやわらかくて気持ちがいい。
なんというか、幻の「つちのこ」のようだ。
調査してみると岐阜県東白川村というところでは、
その「幻のつちのこ」というので村おこしをしているらしい。
というと、これはやはりラッキーアイテムか。

ところで、まったりということばは、辞書を引くと
「味わいに、まろやかさ・こく・深みなどがある感じ」という
意味を持つ関西方言だそうだ。

いただいたものは、抱きしめて寝るか、パソコンをつかうとき
腕の下におくか、赤い布が張られた口の中に手を入れて
落ち着くか(マイナスイオン効果があるらしい…ううむ)
するものであるらしいので、あんまり食べるものでは
ないだろう。

いまではずいぶん違った意味としてつかわれていることばだ。

とりあえず、うちの「つちのこ」に名前をつけるか。
つちのこっていうのはかわいくないし。

2003年11月25日(火)



 チャレンジするのは良いことだと思う。

人間やはり、物理的な視野も狭いし脳みその容量も
限られているわけだから、考え方も偏りがちだ。
できるだけそれらをせわしなく働かせて
広い世界に触れていかねばならないわけで。

そういうとき、やっぱりy=axの原点に戻って
aという係数を変動させていく努力をすべきなのだろう。

高校生のときに日曜学校(クリスチャンではないが)に
通っていて、そのときに教えていたある先生が語った
ことを思い出した。

つまり、嫌いな人とつきあうにはどうすればよいか。
嫌いな人に、ちょっと僕は君が嫌いなんだけれど、
と言ってみるのである。そうすると相手も、あぁ、
僕も君が嫌いなんだよ、といって何だか打ち解けあう。
そしてお互いに相手のどういうところが嫌いかを
知らせあうのだ。
それで仲良くなるケースはあまりないとは思うが、
少なくとも誤解や先入観、偏見などは解ける。
そういう話である。

視点を変えてみる。
そこにある壁を打破できるかもしれない。

ということで、苦手な自己紹介文を書いてみた。
どう?

2003年11月22日(土)



 愛情たっぷり?

母親とショッピング。
そういうのって実に久しぶりだった。
ふたりで歩いて、色んなお店をのぞいて、
それからアメリカのデザイナーさんのすてきな
服がおいてある店をみつけた。
すごくすてきだったけど、「ニッポンジン向け」に
7号か9号しかおいてないんですって。
身長170センチあるニンポンジンギャルはどうしたら
いいのでしょう。

夕方、大学の図書館。
友人にメール。あわただしく職場を去るところを一瞬ゲット。
図書館で借りている本の延長をしようと思ったら
たくさん図書館カード持ってるためカウンターであたふた。
図書館を散策していたら、「未開文明について」という
昭和19年の本を発見。今日のテーマは「レトロ&クラシック」。
インドネシアの「部族」について書かれたすごい本だった。

その後、件のイベントスペースへ。
カフェは開店前だし、お仕事中だったのだが、長時間居座ってしまった。
居心地良し。不良娘ぶりをちょっと反省。
何よりひとがあったかくてファミリーなところがいい。
それから、椅子がいい。

アコースティックのライブをやったりするそうだ。
わが弟たちも、参加すればいいのに、と思うが。

何だか、生きていくうえで色んな人たちに会うのって
とてもよいことだと思う。
孤独を感じることが多いけれども、わたしはこれで意外と
順調に進んできているような気もする。



2003年11月21日(金)



 あ、ごめん。寝てた?

愛想が悪いのだろうか。
とにかく何本かに一本の割合で、かかってきた電話の相手による
第一声が「ごめん、寝てた?」だったりする。
もちろんとくに寝てなどいない昼間でも、だ。

やっぱり愛想が悪いんだろうか?
怒ってる?ってきかれるときもあるし。
別に怒ってないのにそういわれるとちょっといやな感じだ。

最近自宅で作業をすることが多いため、どうしても夜型になって
しまいがちだ。
なので、今朝世の中の会社員がばりばり働いている時間帯に
会社のひとから電話がかかってきて「寝てるとこ、わりぃ」
って言われた。まじ寝てたからやだ。てへ。
どうしてわかったの、もー。
書類のありかを訊かれたのだけれど、二本目の電話の時には
ちょっと愛想の良い声を出してみた。意味ないか。

夜、仕事帰りの彼から電話。
こちらは急遽、グレード高いキュート声を演出。
すると一声、「ごはん食べてんの?」だと。
…ご名答。まだ食べてた。

どうもだめだ。
しかし電話は顔が見えないので、やっぱり相手には優しく
したほうが良いんじゃないかなと思う。

この愛想の悪さ、日常的な態度にも出てる。
つまり、頬杖とか足を組むとか行儀の悪い格好をしていることが多い。
入社前は浅かったお辞儀も、営業職ということもあって必要によっては
すんなり最敬礼するようになったけれども、友だちなどに
「なんか、かっこつけてんの?」と大真面目に質問されたこともある。

態度が悪くて愛想がない。
まぁ、こういうスタイルなのだからとわりきってしまえば良い、
というわけにもいかないだろうが。

2003年11月20日(木)



 行間の気持ちが想う。

自己紹介文を書くというのが、苦手なのだ。
つまり、ごく一般的に、わたしはどこそこ出身で
どこに所属していて何をしていて、などなど
現在のわたしには一言で説明しきれないものばかりを
いわなきゃならないことになる。

わたしは生まれたのは仙台だが、住んでいたことが無いため
「出身」ではない。いわゆる転勤族というやつだったので、
「出身地」に相当する土地が無い。
出身地というところに根を下ろしているという感覚で
ある意味ほっと安心しているひとは少なくない。
わたしにしてみればそんな感覚はないし、逆にひとつところに
いるということで落ち着かなくなる性分だ。

そういうわけで、わたしの苦手なジャンルのひとつに
「自己紹介」というのがある。ましてや文章にするなど苦しすぎる。
それから「日記」だ。きょうはどうしたああした、などという
平坦な文章を書くことほど息苦しいものはない。

だからこのページも「日記」というタイトルがついているのが
正直いって気に食わないのである。

最近、自己紹介文を手直しされることがあって、自分は素直に
明確な文章を書いていないということが良くわかった。
つまり、逃げている。
はっきりしていて、ちょっとつまらない文章になおされていた。
フツーだった。
でも世間的には非常に無難だ。

ありきたりの自己紹介文なんてつまらないし、死んでもいやだ。
だから印象的な文章で、いつも余韻をたくさん残す。
読む人に感じ取ってほしいといつも想ってる。メルマガもそうなのだろう。

だから、誤解される。
正反対の意味にとられてしまうこともある。
まったく理解されないこともある。
逆に、感激され、愛されてしまうこともある。

自己紹介文や、この「あふりかくじらノート」を、
「すてきな詩だね、詩人だなぁ」と言われてしまったこともある。
はなはだしい誤解である。
その評価は、こう言うのも悪いけど、あまりにもセンスが無い。
詩人といわれるのは、大嫌いなのだ。
ほめことばじゃなくて、理解されていないことの証明みたいなもんだ。

それでも、これでもかというほど行間の余韻をたっぷりさせた
文章を好むのである。

どうか、ちょっとだけゆっくり読んでいただきたい。


2003年11月19日(水)



 コーヒー・ルンバの記憶。

じつに「はれんち」だったんだわ、あのとき。
あの魅惑的なメロディ。
それが実は大好きだったことを思いだした。

幼稚園のころ住んでいたあの街。
くすのき幼稚園の「おゆうぎかい」の出し物が、
その「コーヒー・ルンバ」だったことは、はっきり覚えている。
真っ赤なビキニと、葉っぱを模した緑色の小さなパレオ。
ちっちゃな女のコたちがリズムに合わせてはだしで踊ってた。
もちろん、当時5歳だったわたしもだ。

夕べ、OL時代(?)に同時通訳の機材などでお世話になっていた
会社さんがカフェをかねたイベントスペースを開業するということで、
プレオープニングのライブにうかがった。
和やかなムードで温かくにぎわうなか、アルパデュオの演奏が行われる。
アルパとは、パラグアイあたりの大きくうつくしい竪琴だ。

コーヒー・ルンバはその中の一曲だったけれど、
甘くて深い琥珀色の想い出とともに、わたしのなかに届いた。

ベネズエラのホセ・マンソ・ペローニというひとが作曲したらしい。
たくさんのひとが歌い、またアルパでの演奏もされている
じつにうつくしく、心地よく響く旋律。
踊りたい…。

手作りカフェの温かさが、みんなの笑顔を誘うなかで、
時を忘れてワインを呑んで、おしゃべりした。
ひとびとの集う場所。
ホストの人柄が、またやわらかい空気をつくる。

それにしても、劇的においしいサンドイッチであった。

カフェ・ニーシュ http://www.neesh.co.jp/cafetop/cafetop.htm



2003年11月17日(月)



 くじらの帰属意識。

どこにも属しているといえず、自分の無職っぷりを
茶化したりもする。
会社に属しているということは、それはそれで安心感もあり、
非常に精神的に楽である。
だが、そのことが同時に、自分自身の守備範囲を初対面の人に対して
無条件に制限してしまうことになることを、いつも恐れる。
それだけに、今の状態もまた、気持ちが楽なこともある。
まったく、私はひとつところに落ち着かない性分だ。

会社員というステータスもやめたし、先週末は敬愛する
先輩の手伝いで集中セミナー&シンポジウムの運営に携わったわけだ。
コンベンション会社に勤め、まぁ、セミナーやら同時通訳の現場
やらに何度も立ち会ってたことが若干役立ったのかもしれない。

テーマは「現代アフリカの宗教と呪術」。
なんとも怪しげなテーマ。
そしてとにかくアカデミックだった。
わたしも頭のリハビリが必要。

集まっていたのは、やっぱり人類学者が多い。
人類学というものに対して言及するのはここでは控えるが、
百人くらいの人間が集まって、アフリカの宗教と呪術について
熱心に討論する様子というのは、それだけで人類学的調査の
価値があるような気もしなくもない。

わたしは、人類学者にはなれないと思った。

じゃあ、「アフリカニスト」なのだろうか。
「文学研究者」という人種ははっきりいって好きじゃないし、
第一わたしは文学研究などしていない。
いわゆる普通の会社員なんかは、「研究」というと、白衣着て
実験室でフラスコ握りながら黒ぶちめがねかけている人物を
想像しながら「何をケンキュウしているの?」とたずねる。
「アフリカ研究」というと「へぇすごいね。」と腑に落ちないように
いわれてしまう。何をケンキュウしているのだろう。

とりいそぎ、「物書き」がいいのだろうか。
「あふりかくじら」じゃあ、わけがわからないしねぇ。

とにかく、多くの人々に会えたのは、これまた収穫。
酒のほうも、リハビリが必要だ。
酒が呑めなきゃお話にならない。


2003年11月12日(水)
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