あおい世界
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2009年06月13日(土) 父、逝去。

夜中12時半頃、自宅の電話が鳴りました。
携帯ではなく、固定電話。
母からでした。





お父さんが亡くなりました。





急いで桜と桃を起こし、実家へ。
酸素を外し、苦しみから解放された父が安らかに眠っていました。
母と、桜と、桃と四人で父に触れながらいっぱい泣きました。


  母はこれからの介護に備え、いつも1錠飲む安眠剤を2錠飲み、
  寝室のベッドではなく父の姿が見えるソファに横になったそうです。
  12時前に一度目が覚め、父の様子を見たときには相変わらずの状態だったので、
  またソファに戻り、うつらうつらしてしまった後のことだったと言います。
  酸素を付けていても父の精根は尽きてしまい、生涯を閉じたのです。
  退院して半日も過ごさないまま。


夜中にもかかわらず、介護センターから二人の介護士が来てくださいました。
担当医も駆けつけてくださり、父の死亡診断書を書いてくださいました。
部屋の中にあるたくさんの皐月の花を見渡し、
介護士と担当医は、自宅で看取りたがった我が家の意思を納得していたようです。

担当医は病院に戻り、残った介護士の方と一緒に父の身体を綺麗にしました。
あたしは顔、腕、胸、背中、足の指などを丁寧に拭きました。
痩せ細ってはいましたが、介護士の方は身体が綺麗な状態だと言っていました。
髭を剃った後、着替え。
肝臓を悪くしたのに黄疸が出ず、色艶のいい肌でしたから、
母とあたしの意向で化粧はしないことにしました。
返ってそれがあまりにも自然で、ホントに眠っていると錯覚しそうでした。

お父さん、いびきかいでいいんだよ!


すっかり整えていただいた後、介護士の方たちは帰っていきました。
本当ならこれからずっとお世話になるはずだった方たち。
短い、ホントに短い間でしたけど、母とあたしにとって、
介護士の方や担当医の行動、言葉一つ一つが有り難く感じられました。


桜と桃は父の身体を綺麗にする前に母の寝室で寝かせておいたので、
母と二人きりになり、お茶を飲みながら父の最期をかみしめました。
これが病院での最期だったら、ろくに父に触れることもなく退室させられ、
父の身体を一緒に拭くこともできなかったでしょう。
そういうことを全部全部含めて、母は自宅で看取りたがったし、
父もそのように息を引き取ったので、両親の思い通りになったと思います。
それだけが救い。


朝3時、お茶を飲んだ後、朝まで少し休むことにしました。
母は父の近くのソファに、あたしは娘が眠っている寝室に横になりました。
しかし全然眠れず、
朝4時、あたしは会社へと車を走らせました。
少しでも多く休めるようにと、前日残した仕事を片付け、
休んでいる間、できるだけ迷惑をかけないように段取りし、1時間で退社。
その足で今度は自宅へ。
宿泊や喪服の荷物をまとめ、洗濯をし、
洗濯が終わるまでの間、風呂掃除をし、
洗濯を室内に干し、除湿機を掛けてから自宅へ着いたのが、朝7時。

そこからは怒涛の流れでした。
両親は元々、一般的な葬儀を出すつもりはなく、
いろいろ省き、シンプルにすると言い切っていたので、
あたしと兄貴は母の好きなように任せると話してあります。
そういう意味では、父への思いに関係ない煩わしいことは最小限になるはず。

とりあえず今夜はこのまま自宅で通夜。
新聞掲載も、祭壇も、僧侶も、戒名もなし。
告別式を簡略化させたお別れ会をしてから火葬にしたかったのですが、
明日は火葬場が一年に一度の炉の点検日に当たっているとのことなので、
火葬とお別れ会の日程が逆になってしまいますが、
その分、父は長く自宅に居られることになります。

良かったね、お父さん。



道路や玄関に葬儀の案内札を立てなかった割に、
近所の方々や、親戚などがお焼香に来てくださいました。
夜遅く、お焼香に来る方はもう居ないだろうという夜半過ぎ、
泊まってくれた従兄、兄貴、母、トシコさん、あたしの順でお風呂に入り、
2時過ぎには、全員就寝。


ここまで母が堂々と簡素化できる理由は、
父の書棚から出てきた遺言があったからです。
それは、A4を四つに切った位の大きさで、
筆ペンで書かれたメモ書きのようなものでした。


   遺言
   尊厳死
   無理な延命しないでください
   無駄な治療しないでください   
   葬儀無用 ソウギムヨ

   

いつ書いたものなのか分かりませんが、母は数日前に見つけたそうです。
明らかに父の手書き。
お世辞にも綺麗とは言えない走り書き。
正式な遺言としては通用しませんが、紛れもない父の遺志。
疑問な顔をする人たちに、母がこの遺言を見せることによって、
誰もが納得してくれるという強力なものになるでしょう。


お父さん、あなたという人は本当にすごい人ですね。

(記載 6月17日) 


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