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2005年03月25日(金)
  水が出る! 土を盛る!

 前に古い地名で土地の故事来歴が判るんだって話をこの日記でしましたが、今日は地名ではなく見た目で。引っ越しシーズン、ひょっとしたら貴方のお役に立つかも判りません。

 昨日お姉様とお話ししたことです。
 お姉様は現在、湘南地域の住宅地にあるテラスハウスにお住まいです。海までは歩いて20分ほどだそうなので、海水系の災害被害ってのはさほど考えなくていいかと思うんですが。ちなみに我が家も同じように海まで20分歩けば着けると思います。話の発端は、私が「塩害とかないですか?」と訊いたことからだったんですが(うちは台風の当たり年だったからなのか「塩害はある!」と認識しております)。
「塩害はないんだけどね、うちの辺り、水が出るのよ」
 そう言ったお姉様は、そういえばそうだよ、と言うお話をして下さいました。
「家を探しに来た時は全然気付かなかったし思いもしなかったんだけど、うちの辺り、お墓に盛り土してあるのよね。歩いてると、私の目の高さとかそれ以上の所にお墓があるから、1.5mとか2mくらい。そんで、古い家も土を盛って建ててあるの。これってつまり、この辺はそれくらいの水が出るってことよねー。迂闊だったわー」

 代々、古くからその土地に住んでいる方達は、地名がどう変わろうとその土地のことをよく知っています。数十年単位、あるいは百年単位で、その土地に起こった出来事を記憶しているんです(そして私たち民俗学の研究者というのはそういう方に話を聞いて回るワケですが)。

 大雨が降ったりすると頻繁に川が溢れたりするような地域は、そうと知っていれば当然「水対策」をします。家の中まで水が入ってこないよう、盛り土をして土台を底上げしてから、その上に家を建てる(お城の石垣の小規模版とでも想像して下さい)。お墓が流されてお骨がなくなっちゃったり誰の骨か判んなくなっちゃったりしたら大変(勿論昔は土葬です)だから、お墓も底上げして、その上に造る。経験的に水が出る高さは判っているから、「これだけ底上げしとけばまず大丈夫」って高さも判る。でも、そんなこと知らない新参者や新規参入の大手住宅会社は、水が出ることなんて考えずに普通に家を建てちゃうから、底上げもしないし、下手したら玄関が半地下状だったり、地下室に天窓付けちゃったりする。

 みなさんのおうちの周りや、引っ越し先の周辺をよーく観察してみて下さい。田畑の中で墓地だけ古墳の上に建ってるかの如く底上げされてたりしませんか? 古くから住んでそうなおうちが、揃いも揃って一段高い所にあったりしませんか? 玄関を一段高い所に造ってる古い家が多い地区も要注意です。古くて大きな家の長屋門に、小さな木造船でも括り付けてあった日にゃぁ、ある種トドメです。
「あ、そんな感じかも」
 と思い当たった方、ひょっとしたら其処は洪水被害が起こりやすいかもしれません。
 勿論、治水事業が進んで、現在は水が出ることは考えにくい地域も多くなっているだろうとは思います。また、必ずしも水が出ることが理由でそうなっているワケではないかもしれません(思いもよらない他の理由があるかも)。でも、こういう知識はマニアックな一般論(どないや)として知っておいて損はないですよ。

 あ、あと、坂道の下に位置するおうちは、坂道の上方に向けて玄関造ると、大雨降った時に坂の上の方で降った雨水が流れ込んでくる危険性があります。玄関は坂の下に向けて造った方がいいですよ。
 東京の夏場の集中豪雨で被害が出るのは、大体坂の下の地区です。渋谷然り。アスファルト上に降った雨は、下水で処理しきれないとぜーんぶ坂道下って流れてきます。コンクリートジャングルの外からやってくる方、ご注意あれ。


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・過去の「今日」。

2004年03月25日(木) 瀬戸内の空気
2003年03月25日(火) 雨の夜

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