無責任賛歌
日記の表紙へ|昨日の日記|明日の日記
2006年01月23日(月) |
騙されたわけじゃないでしょ/映画『探偵事務所5” 5ナンバーで呼ばれる探偵達の物語』 |
今晩のニュースはもう、ホリエモンの逮捕で持ちきりである。 親父が「また株が下がる」と嘆いてそうだなあ。だから株なんて個人レベルで真剣にやるやつが馬鹿だってんだ。母の生前からそのことは散々言ってきたのに、忠告を無視するからこうなる。もともとはお人好しで世間知らずな親父やお袋が、なぜかトチ狂っちゃったと言うか、妙に色気を出して一攫千金を夢見たりするから、足元を掬われるのだよ。 テレビじゃ、株の暴落のせいでで自己破産しなきゃならないと嘆いている個人投資家の映像とかも流してたけれど、同情する気が少しも起こらない。討論番組じゃ、システムが悪いのかホリエモンが悪いのか、とかなんとか、「識者」のみなさんが言い合っていたけれど、一番悪いのは人間の「欲」そのものじゃないかと私は思う。 谷崎の『刺青』じゃないが、人は「愚か」という「徳」を忘れてしまっているのだ。 実際、自分が馬鹿だと自覚していれば、あまり欲を掻こうって気にもなれないものだ。シロウトに毛が生えた程度の知識しかない未熟者が、海千山千揃いの株の世界に飛び込んでいけば、あえなく騙されてしまうだろうなんてことくらい、見当が付きそうなものなのだが、これがなぜかできない。ヘタに自分をリコウだと勘違いしているから、「自分なら上手く立ちまわれる」なんて思い上がっちゃうのだね。 株はバクチなのである。バクチだから、勝つやつもいれば負けるやつも必ずいる。そして勝つやつよりも負けるやつの方が圧倒的に多いのだ。あんたもあんたもただの馬鹿なんだから、負ける方が自然なの。自分だけが勝てるなんて思ってんじゃねえって。 しかし、選挙でホリエモンに投票した連中、今、どんな気分でいるだろうね。裏切られたとか思ってるかね。けれどもそれがそもそも大間違いなので、人間の本当の腹なんて、見抜けるはずがない。誰かが誰かを信用するということは、もう理屈なんか関係なくて、親鸞がかつて法然を無条件で信じたように、「騙されても構わない」と思うくらいの覚悟が必要なのだ。あとになって「騙されたあ」なんて騒いでるやつはそもそも人を信じる資格がないのだ。 人を信じることもやはり一つの賭けである。そして、賭けに負けたんだから、そこは潔く、損を受け入れるしかないでしょうに。それがイヤなら最初から他人を信じちゃいけないんだって。 私はホリエモンがどうなろうと構わないし、彼に騙された馬鹿どもにだって同情は一切しない。マネーゲームに狂奔した連中が、これからももっと馬鹿な醜態を晒す様子を見て、大笑いしてやろうと思うばかりである。
それにしても、今回のシナリオを書いたのはいったい誰なんだろうね。いや、裏で政府が暗躍して小島社長の証人喚問から世間の目を逸らさせるために特大ニュースを仕立て上げたとかいうトンデモ陰謀説は置いといて、経済界に多大な波紋を呼ぶと分かっていながら、あえてこのシナリオを描いた人物が誰か、ということである。もちろん順当に考えればそれは今回の逮捕劇を「演出」した東京地検特捜部の中の誰かってことになるんだろうけれど、ライブドア内にアンチ・ホリエモンな一派がいて、そいつらが地検に情報を事前にリークしたんじゃないかという気もするのである。 まあ、これも適当な憶測に過ぎないので、本気にしないように。
2月10日から中国で上映される予定だった映画『SAYURI』が、突然上映中止となった。理由がちゃんちゃら可笑しくて、ヒロインの芸者役を中国人の章子怡(チャン・ツィイー)が演じているのが、「中国人に旧日本軍の従軍慰安婦問題を思い起こさせ、反日感情の悪化につながることが懸念される」というのである。 芸者は慰安婦じゃねえっ! もうなんつーかね、芸者と慰安婦の区別もつかない馬鹿どもがさ、反日反日ってお題目みたいに唱えてるのを聞いてるとね、やっぱりこいつら相手に熱くなるだけ時間の無駄だという気にしかなんねえのよ。 私ゃどっちかというとさ、日中戦争を侵略戦争ではなかったと言い張る糞タレな連中に加担したくはないから、明らかに中国の言い分におかしいところがあっても、あえて糾弾するような発言は控えてきてるんだが、ここまで馬鹿だと、やっぱりあいつらは歴史を事実に即して捉えようなんて意識は本当はなくて、反日のための反日、手段のために目的がある糞どもばかりなんだなと思わざるを得なくなる。 京都の芸者さんたちはこの明らかな差別的な措置に対しては激烈に抗議しても構わないと思うな。実際には「中国人の馬鹿相手に怒るのも恥ずかしおす」ってな感じでほっとくんだろうけど。そもそも『SAYURI』自体が芸者を馬鹿にしている映画だし、まあ、あんなもんのために要らざるコブシを振り上げたってしょうがないやな。
仕事帰りにシネ・リーブル博多駅でしげと待ち合わせ。 一緒に映画を見るつもりだったのだが、財布を家に忘れてきたことを思い出した。時計を見ると、まだ上映まで40分ある。しげにメールを入れると、「もう家出たよ」。家から博多駅までは車で15分くらいのものだ。何もそんなに早く出なくても、と思ったが、それがせっかちというより神経過敏なしげの習性なのだから仕方がない。 すぐに取りに帰ってもらうが、じきに今度はしげから直接電話があった。 「財布見つからんよ!」 「パソコンの机の前にないか?」 「ない」 「ないはずはないよ。下に落ちてるか、隣の棚のあたりにないか?」 「ない!」 これもしげのいつもの習性なのだが、目の前にあるものでも「もしかしたら見つからないのではないか」と思い込むと、それが本当に見えなくなるのである。だから「ない」なんてことはありえないと念を押して言った。 「あるよ、絶対。よく探せ」 「でも、ないもん」 「あるって!」 「ない、ない……、あ、あった!」 どうやら見えなかったものが見えるようになったらしい。 「どこにあった?」 「隣の棚んとこ」 やっぱり目の前にあったものを見つけられなかったのである。これも一種の病気だと思うのだが、治療法はないものなのかね。関口君は別に診療を受けていたような形跡はなかったが。
映画は、『探偵事務所5” 5ナンバーで呼ばれる探偵達の物語』。 シリーズ化を目論んだ第一作で、と言ってもこれまでに林海象監督が作ってきた『夢見るように眠りたい』や『濱マイク』シリーズともリンクしているという、ちょっと変わったムードの探偵物語である。更には主役の探偵591・小林芳雄(成宮寛貴)は、あの『少年探偵団』の小林少年の孫なのだ!
創立60年の歴史を持つ探偵事務所5”。そこに所属する探偵たちはすべて5で始まる3ケタのコードネームで呼ばれる。事件の依頼があれば、その事件に最もふさわしい探偵が選ばれ、調査に乗り出す。しかし新米探偵591には実績がないためにひたすら待機状態が続いている。ひょんなことから会長・500・宍戸錠(宍戸錠)の娘、宍戸瞳(貫地谷しほり)と知り合い、彼女の親友が失踪したことを知った彼は、その義侠心から事件の解明に乗り出すことを決意する。
事件はあるが本格ミステリーというわけではなく、謎はあるが論理的に解決されるのではなく、ハードボイルドほどに探偵たちはストイックでもない。まだ半村良の『下町探偵局』に近い雰囲気か。けれども登場する探偵たちは、みな黒のソフトに黒のスーツ、黒のネクタイという、MIBみたいなスタイルを制服にしている。そんなんじゃ一発で探偵だってバレるじゃん、なんて突っ込みはこの映画にはしちゃいけない。いみじくも探偵オフィスの壁に『多羅尾伴内』のポスターが貼られていたことからも分かる通り、これは「スタイリッシュだけれども人情厚き探偵たちの、愛と冒険の物語」である。
探偵522(宮迫博之)が言う。 「探偵にとって一番必要なことは何だか分かるか? 依頼者を家族と思えるかどうかだ」 本当の探偵が、こんな意識で仕事をしているのかどうかは知らない。けれども、そういう気持ちで調査に当たってほしい。これはそういう「夢の探偵」たちを望む人たちのために紡ぎ上げられたファンタジーなのである。 物語は、第1話『私立探偵591 〜楽園〜』と、第2話『私立探偵522 〜失楽園〜』に分かれている。 しかしこの2話は前編・後編の役割を果たしており、1話で591が探索したカイン美容外科が2話にも登場し、メインの探偵が522にバトンタッチされ、前半で提示された「闇の整形」の実態が、後半で暴かれる、という趣向になっている。なんとなく映画を見ているというよりは、テレビシリーズの1話・2話を連続して見せられたような印象で、ちょっとスケール感がなく、これが効を奏しているかどうかは微妙なところだ。 登場する探偵たち、犯人たちのキャラクターも悪く言えばステロタイプなのだが、何より物語が「探偵たちへの愛」に満ちているので、その陳腐さも悪印象を与えることはない。特に濱マイクの瓜二つの弟(?)とかいう内偵モリヤマ(永瀬正敏)の活躍ぶりは楽しい。 けれどこれがヒットしてシリーズ化されるかどうかは難しいんじゃないかねえ。なんたって地味だから(苦笑)。
2005年01月23日(日) 時事ネタまでは手が回りません/映画『レイクサイドマーダーケース』ほか 2003年01月23日(木) アニメの実写企画って……/『ロケットマン』4巻(加藤元浩)/『はじめてわかる国語』(清水義範)ほか 2002年01月23日(水) 風邪まで引いちゃったよ、どうすりゃいいんだ/『西洋骨董洋菓子店』1〜3巻(よしながふみ)ほか 2001年01月23日(火) ハードな日/『時の果てのフェブラリー』(山本弘)
日記の表紙へ|昨日の日記|明日の日記
☆劇団メンバー日記リンク☆
藤原敬之(ふじわら・けいし)
|