無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2002年01月23日(水) 風邪まで引いちゃったよ、どうすりゃいいんだ/『西洋骨董洋菓子店』1〜3巻(よしながふみ)ほか

 風邪引いて仕事を休む。
 感染経路は間違いなくしげなんだけど、全然悪びれてないのな。
 「昼一緒にいられるねえ」なんて喜んでやがるし。
 でも別に何かやれるってわけじゃなくて、ただひたすら寝てるだけだ。変に期待するなよ、病気なんだぞ病気……(ーー;)。

 午前中はただひたすら寝て汗を流す。
 ともかく丹念に薬を飲む。常備薬が結構余ってて助かった。
 昼飯は外まで出る元気がないので、仕方なくお好み焼きを宅配。そんな濃いもの、と言われそうだが、二人してダウンしてるんだから、片方が調理というわけにはいかない。うどんの配達なんて、この近くじゃやってないし。ともかく食い物は食っとかないとカラダが回復しない。
 ピザよりゃマシだろ、と思ってたら、しげは「私はピザ」とか言い出した。「バカ、やめろ」という元気もないので、そのまま頼む。まあ、お好み焼きだって五十歩百歩だしな。
 食いはしたが、やっぱりあとでゲエゲエ吐く。
 胃が受けつけてないんだなあ。体力を消耗し、再び寝る。その繰り返しだ。

 しげはしげで、仕事を早退してきてるってのに、睡眠もろくに取ってない。
 「寝つけないんだよう。だって、平日なのに、昼なのに、アンタがいるんだもの、ドキドキしちゃって」
 なんだなんだ、結婚して十年も経つってのにまだオレにときめきラブ? と思わず赤面しそうになったが、すぐに後を継いで一言。
 「誰といてもドキドキするけどね」。
 ……ただの「動悸」っつーんだよ、それは! 対人恐怖症の後遺症じゃんか。

 寝たり起きたりトイレで血便流したり、合間に本読んだりDVD見たり。寝ても寝ても寝たりないのはやっぱり糖尿が悪化してんだろうなあ。

 DVD『名探偵ポワロ/砂に書かれた三角形』。
 DVDシリーズでいくと3巻目だ。1,2巻目は未見だが、しげはもう見ているので、仕方なく途中から。まあ、順序よく見なきゃならん番組でもないけど、(シリーズ自体が原作をアトランダムにピックアップして映像化してるんだから。原作発表の順序通りに見ようと思ったら、第一作の『スタイルズ荘の怪事件』のあと、『ゴルフ場殺人事件』が発売される夏まで待たなきゃならなくなる)飛ばして見ると、どれを見たかわからなくなりそうで怖くはある。
 原題は“TRIANGLE AT RHODES”で、直訳すれば『ロードス島の三角関係』。これも原作は未読だったので、マジメに事件を推理するつもりで見る。
 冒頭、探偵事務所に誰もいなくて、マンションのパーサーと郵便配達夫が会話をしている。ヘイスティングスは猟に出かけ、ミス・レモンは実家に帰省中、ポワロは地中海のイタリア領ロードスで休暇中、という設定を聞いて、「おお、テレビシリーズなのに海外ロケ! ……金かけてやがるなあ」と日本のテレビ事情に比べて羨ましく思った。
 でも問題だったのはここからで、のんびりするはずだった休暇中、ポワロは三角関係に陥った二組の夫婦・チャントリー夫妻とゴールド夫妻と知り合う。……事件の匂いを嗅ぎ取ったポワロは、それとなく彼らに「忠告」をするのだが……。
 うーん、ミステリの都合で、これ以上はストーリーを明かせないんだよなあ。というのも、この設定でビックリしたのは、「なんだ、これって、『○○○○○○』と全く同じじゃん!」ってことだったのだ。
 もしかしてトリックも……と思ったらまさにその通り。これ、原作は中編なんだけど、クリスティーはこれを元にして長編版の『○○○○○○』を書いたらしいんだな。調べてみると、この『三角形』とその某長編は、全く同じ年、1937年に発表されている。どうやらクリスティーは、同じトリックを使って、中編と長編とでは書き方がどう変わるかを試してみたもののようだ。それとも、前作で使ったばかりのトリックをまた使うとは誰も思うまい、と、読者の意表を突くことが目的だったのか?(まさかそりゃなかろうが)
 確かに短編を長編化したものに傑作が生まれることもあるけれど、せめて探偵役は変えてほしかったよなあ。だってそうでないと、「同じ年に全く同じ犯罪を思いついたヤツがいて、それを同じ探偵が解明する」というスゲー偶然な設定になってしまうもの。
 実のところ、一応礼儀として隠しちゃいるが、トリック自体はかなりチャチなんだよね。どうしてこの長編版も傑作扱いされてるかわからないんだけれど、多分、10人中9人が犯人もトリックも当ててしまうだろう。これじゃ「犯人あて」の楽しみがない。せめて語り口やストーリー展開くらいは変えようよう。殺害方法をちょっと変えただけじゃあ意味がないよう。……それともやっぱりクリスティーはもう「古く」なっちゃったのかなあ。

 買い物くらいはしないと、食料がないので、あふあふ言いながらしげと近くのコンビニへ。
 外はちょっと雪降りである。
 寒い。とことん寒い。
 こりゃ明日はまた病状が悪化しそうだ。


 アニメ『ヒカルの碁』第十五局「ネットに潜む棋士」。
 おお、今回の作画レベル、今までで最高じゃないか?
 インターネット碁を始めようとするヒカルに、三谷の姉さんが説明するシーン、この姉さん、名前も判ってないチョイ役キャラなんだけど、実に丹念に描きこんである。……しかも原作よりセリフ増えてないか?
 「ネット碁」というものを説明するために必要、という理由もあるかもしれないけれど、もしかしてスタッフがこの姉さんのファンで、出番を増やそうとしたとか、そんなんじゃないだろうな(^o^)。
 単純だけど、椅子に座ってるヒカルに、脇からかがみこむようにして、マウスの使い方を教えていくカット、実に大胆な構図が多くてドキドキさせられる(^^*) 。姉さんとヒカルの頬が近づいたり離れたり、あるいは胸越しにヒカルの表情をとらえたり。うーん、ほのかなエロスが。
 心なしかヒカルも「きれいなお姉さん」のそばで照れてるように見える。そうだよなあ、中学生になったばかりだもんなあ、年上の人に憧れる気持ちってあるよなあ。
 単調な印象に陥りやすいシーンを、堅実なカットの積み重ねで見せていく様子が実にうまい。何回か前のザツな作画がウソのようだ。
 ……と思ってスタッフ表を見てみたら、キャラデザインの本橋秀之さん本人。
 こりゃリキ入るはずだわ(^^)。
 それにしても、CMだと『テニスの王子様』のDVDはもう発売だというのに、『ヒカ碁』はまだ全然告知がない。
 ……まさかまたいきなりBOXで発売……?


 『ウンナンのホントコ』を漫然と見ていると、「24時間恋愛」という企画が立ちあがってて、これが結構おもしろい。
 『未来日記』の応用編みたいな感じなのだが、見知らぬ相手と1日に1時間だけ24日間、会い続けることができたら100万円、というなんだか冗談みたいな企画なのである。
 相手と会うのがイヤになり、約束をすっぽかしてしまえば、100万円は手に入らない。だから二人とも時間厳守で指定された待ち合わせ場所に向かう。
 しかし、果たして人は金のために見知らぬ他人と会い続けていられるものだろうか。ごく普通の道徳心を持ち合わせている者にとっては、それはかなり気持ちに負担をかけてしまう行為ではないのか。
 そこで、そのフラストレーションから脱却するために、人は自分に「ウソ」をつき始める。自分の「悪行」を正当化するために、無意識のうちに「言い訳」を考え始めてしまうのだ。わかりやすく言うと、事実を補強するための理屈をあとから作り出して行ってしまうってことなんだね。
 ……特に女のほうが。
 どういうことかと言うと、この企画に金のために乗ったはずの女性、本気で相手を「愛している」と思い始めてしまったのである。
 もちろん、それがこの企画のプロデューサーのまさに「狙い」であろう。つまり故意に「ウソから出たマコト」を狙って演出しているわけなんだね。
 なんだか他人をマインドコントロールしてるみたいでイヤだ、と思われる方もあろうが、それだったら「見合い」だって似たようなものだ。日常でもそれと知らせず誰かが誰かを演出するということは頻繁に行われている。「躾」や「教育」だって所詮はマインドコントロールだ。
 この企画のおもしろさは、「24時間」という限定性の中でも恋を演出することができるのか、という「実験性」にある。言い方は悪いが、「罪にならない人体実験」なのだ。さあ、来週はどんな展開になってくれるか、楽しみである。


 マンガ、よしながふみ『西洋骨董洋菓子店』1〜3巻(新書館・各546円)。
 よしひと嬢が熱烈なファンらしく、テレビ化された『Antique』を見て激怒しておられた(^o^)。
 テレビの方は見てないので、批評は控えるが、監督が『踊る大捜査線』や『サトラレ』の本広克行だから、あまり積極的に見る気が起きない。どーせ意味もなくタメて、かえって間延びしたシーンやカットの連続なんじゃねーのか(←偏見)。見てる人がいたら、ご感想を聞かせてほしいものだ。

 けれど、マンガのほうはスゴかった。
 なんかもー、ムズムズするおもしろさとでも言ったらいいだろうか(なんじゃそりゃ)。
 だいたい、よしひと嬢が好きなマンガや小説は、ある種の「偏り」があって、視点そのものはおもしろいのだが、場合によってはこちらが「引く」ことも多々ある(一生懸命遠回しな表現してるなあ)。
 だもんで、第一巻の1ページ目から、学ラン姿の二人が向かいあって、「なんだよ話って」「君の事が好きなんだ」で始まってるのを見た途端、正直な話、私は本を投げ捨てたくなった(^_^;)。

 だから私、ダメなんだってば、ホ○は。
 その方々の権利を侵害する気はないが、やっぱり耳元に吐息をかけてくれるのは女に限るのよ。
 アンタこれで、男同士の濡れ場(死語)が随所で展開されてた日にはよ、多分、夢でもうなされることになってたと思うよ。
 でも、展開が違ってたねえ。
 次のシーンで、「ゲロしそうに気持ちわりーよ!! 早く死ね このホ○!!」だよ。
 そしていきなりシーンが切り替わる。
 「ぶーす!!」
 おそらくさっきとは別のどこかの中学校、制服を着ないで歩いている女生徒がいて、男子から、からかわれている。そして「ぶす」の声につい反応してしまった別の女生徒のモノローグ。
 「なんで中学校ってこんなにびくっとしちゃうんだろう」
 さらにまたシーンが飛んで。
 若い少年ボクサーに、ジムの会長が「やっぱり網膜剥離だったってよ」と告げる。
 「俺やめんのやだよう」と泣く少年。
 またまたシーン変わって、ここからが現在の話(今までのは全て回想シーンだったのである)。
 いかにも堅物そうな父親が、居間でテレビを見ている長男を追い出して、冷蔵庫からおもむろにケーキの箱を取り出す。
 そして、にんまりと笑い、その中からイチゴのショートケーキを、崩さないようにそおっとつまみ出すのだ。

 ……いったい、これらの全く連続していないように見えるシーンに、どのような意味が、繋がりがあるのか。
 ここで、私はこのマンガ家さんの「語り口」に見事にハメられたのだ。
 実際、「繋がり」はあったのである。
 うーん、その辺の紹介については今回はやめとこう。ミステリと同じで、「謎」が解かれる楽しみは未読の人のために取っておくものである。

 でも一つだけ書いとけば、これはもうただのホ○マンガではなかったのだ。
 冒頭に出てきたホ○、ただのホ○ではない。
 「魔性のホ○、恐ろしいホ○伝説のホ○、好みの男はオールゲッチュ、厨房は一瞬にして情事の舞台になるという」究極のホ○だったのである。
 あああ、こんなにホ○ホ○ホ○と書いてしまった(-_-;)。夢に出るぞ夢に出るぞ。
 でも、これは確かに、いい脚本家と演出家に当たれば、上質のシチュエーションコメディとして成立するだろう。
 キャラクターの一人一人の個性がこれだけ綺羅星のごとく輝いていながら、その個性にストーリーが引きずられてもいない。過去の謎が一つ解かれるたびに、また新たな謎も生まれる。現在の時間そのものはただゆったりと流れているだけなのに、ドラマは大きなうねりを見せていく。
 何という構成力の妙であろうか。
 気になることを一つだけ挙げると、絵柄が明智抄さんに似てる気がするんだけど、ただの偶然なのだろうか。それともアシストかなんかやってたのかなあ。

2001年01月23日(火) ハードな日/『時の果てのフェブラリー』(山本弘)



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