無責任賛歌
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2005年08月01日(月) |
無意識の戦争/舞台DVD『仮装敵国 〜Seven 15minutes Stories〜』 |
これも先に但し書きしておかないとまた誤解を招きそうなんで一応断っておく。 私はもともと、スポーツは決して嫌いじゃない。生まれつき体が弱いから苦手ではあったが、小学校時代、マラソン大会はいつもビリだったがリタイアしたことは一度もないし、地域の子供相撲大会とかに参加した思い出はあるし、平和台球場に野球観戦に連れてってもらったことだって何度もある。 じゃあ、大人になってスポーツに全く興味を示さなくなったのはなぜかと言うと、ひとえに世間のファンの熱狂ぶりが鬱陶しくてたまらないからだ。 特に世界大会の類になると、どうしたって政治や国際情勢と無縁ではいられなくなるから、純粋にスポーツを楽しむことはほぼ不可能になる。 何度もこの日記でも書いてきたことだが、国家間のスポーツ試合が「代理戦争」になっていることを憂える人間があまりに少ないことは極めて危険な状態なのだ。だって、「負けた悔しさ」は絶対「雪辱」とか「復讐」という次なる「より過激な」戦いを誘発する要素にしかならないから。 つか、実際にそうなった例はいくらでもあるというのに、相変わらず「○○○国倒せ」とか平然と言ってられるってのは、心の底ではみんな戦争がしたくって仕方がないのだとしか思えず、暗澹たる気分になる。クーベルタンの「オリンピックは参加することに意義がある」ってのは、スポーツが政治に利用されることを戒めることが目的であったのだが、真剣にこの言葉の意味を噛み締めてる人間がどれだけいるのだろう。 「自分は純粋に試合を楽しんでるだけだ」と思ってらっしゃる方、でも周囲の人々、あるいはネットの匿名掲示板に群れ集ってる連中を見て御覧なさい。あなた以外のファンが本当に「スポーツだけを楽しんでる」と断言できるかどうか。 ここしばらくの世間のサッカー熱もいい加減でどうにかしてほしいと思ってたのだが、何が一番いやな気分になるって、「絶対に負けられない戦いがある」ってあのキャッチフレーズだ。 選手がそういう気分で戦うのは別に構わないけど、マスコミが煽るこっちゃねー(怒)。なんであんな選手無視の言葉が堂々とまかり通るってんだ? これまでのスポーツの歴史の中で、こういうマスコミや世間の過激な煽りのせいでダメになっちゃった選手の例、いくらでも挙げられるだろうが。そういう批判を避けるつもりかどうか知らんが、「誰のために」「何のために」負けられないのか、曖昧にしているところがこのフレーズの特にいやらしいところだが、またそれに簡単に乗っかっちゃうアタマ軽いファンがゴマンといるってことも情けなくてね。 で、東アジア選手権で、日本は北朝鮮に1−0で敗退しちゃったわけだけど、ネットをあちこち覗いてみると、予想通り、日本チームをもう小汚く罵倒する連中の多いこと多いこと。 こないだ勝ったとき北朝鮮をからかってたやつらと同じ連中かもしれないが、勝ったときに有頂天になりすぎてた感じだったから、負けたらいったいどんな反応するだろうと思ってたんだけど、日本チームへの慰めとかねぎらいの言葉がホント少ないのね。どうしてまあ、あれやこれやと欠点をあげつらうことばかりに血の道あげられるのか、神経を疑うよ。 そりゃ、北朝鮮のファンの方がアタマはとことんイカレちゃいるんだが、ありゃ国家戦略で洗脳されてるんだから狂ってるのは当たり前だ。でも、日本人の場合、マスコミの影響だけでなくって自ら狂おうとしてるやつの方が多くはないか? 何も北朝鮮に対抗して、自分たちまでアチラのレベルにまで下がってやる必要はないんじゃないか? 負けたら負けたでいいじゃん。ドイツに行けることは決まってるんだしさ。照る日もあれば曇る日もあるって、どうして鷹揚に構えられないかね? 中国も北朝鮮も韓国も民度は低いが、日本だってあまり熱狂が過ぎると威張れたものではなくなるのである。今は本当に北朝鮮憎しとか韓国憎しとか中国憎しとか、敵愾心をあらわにしたにわかファンが増えてるから、「自分はそうではない」と冷静に自己認識ができるのなら、そいつらに同調するような応援の仕方にならないように自重したほうがいいと思うのである。 しばらく日本チーム(「ジーコジャパン」って言い方も意味不明で好きになれないのでこう呼ぶ)も負けが込んだほうが、にわかファンも減って、本当のサッカーファンだけが残るんじゃないかね。 「好きなチームが負けても決してファンはやめずに応援する」これが本当のファンってものじゃないかね。 ……あ、それで今気づいたけど、俺って、「選手」のファンになったことはあっても、スポーツ自体のファンになったことはなかったなあ。長嶋は長嶋、大鵬は大鵬だから好きだったのである。だから未だに野球のルールとか全然知らないんだけど。
朝起きたらまた手足が痺れていて動かない。ものは何とかつかめるが、握力がなくて強く握ることができない。立ってもふらついてコケそうになってしまう。ちょっとシャレじゃない状態だったので、仕事を休む。薬も飲み始めたし、休み明けには調子も戻るだろうと思っていたのだが、そううまくはいかなかったようだ。 年を取ったんだなあと自覚するのは悲しいが、ちょっと夜更かしが過ぎたりすると、すぐカラダに来てしまうようになってしまった。つかこれ、明らかにこないだのカラオケの影響だろう。もちろん体調のいいときなら多少の無理は利くんだが、体調のいいときの方が少ないんだから、もう無理はしちゃいかんということである。 多分、毛細血管があちこち詰まりかけているのである。風呂に入っちゃ出、指先、足先を揉み解して半日過ごす。その間、しげが何をしているかというとやっぱり寝ているのである。もう文句を言う元気もないが、役に立ってほしいときに絶対に役に立たないんだよな、こいつは。
舞台DVD『AGAPE store #10 仮装敵国 〜Seven 15minutes Stories〜』。 G2演出の舞台はたいてい福岡か北九州には来るのだが、これはなぜか福岡での公演がなかった。DVD発売は何より嬉しい。「AGAPE store」としての公演だから、当然主役は松尾貴史である。『ガメラ』とか映画でのチョイ役出演や、バラエティ番組でのアンチ・オカルト・コメンテイターとしての彼しか知らない人には、舞台役者としての、喜劇役者としての彼をぜひとも知ってほしいところだ。 今回は七人の作家による七つの短編オムニバス。どうしてもスケッチの羅列になってしまう分、松尾貴史が持っている天性の狂気と言うか毒と言うか胡散臭さと言うか、それがエスカレートしていく面白さは今ひとつ味わえないが、作品ごとに変わるキャラクターの変化、各作家の力量の差が見えるのが面白い。 いや、一応、どの作品も水準以上の出来ではあるので、「差」と言っても部分的な視点における比較対照の問題でしかないということをお断りしておく。目安の意味で、今回は「点数」を付けてみることにする。 共演は辺見えみり・コング桑田・八十田勇一・福田転球・久ヶ沢徹・春風亭昇太。
1,長塚圭史「素晴らしい愛をもう一度」55点。 バスが自爆テロに遭って、妻(辺見)を失った夫(松尾)。彼は案内人(昇太)に連れられて、遺体が収容された公民館で妻と対面するが、妻は死んでいるにもかかわらず起き上がり、夫の浮気を責め立てる。そしてそれに同調するかのように他の遺体たち(コング・八十田・福田・久ヶ沢)も目覚め始め……。 舞台でホラーをやるのはなかなか難しい。まあホラーというよりはブラックコメディだから特に怖くなくてもいいんだけれど、オチがオチだけに、笑いの中に一抹の怖さを漂わせることができれば本当はもっといいのである。起き上がるまではみんな死体っぽくていいんだけど、いったん目覚めると死体らしさがさらっと消えちゃうのが弱点。あと、冒頭の松尾と昇太の掛け合いがやや「外し」てるのもツカミに失敗している印象。案内人がわざと別の死体を教えるなんてイタズラ、いくらなんでもリアリティがないよ。
2,倉持裕「MEAT DOLL」70点。 自己啓発セミナーで、3人の男(八十田・福田・久ヶ沢)が、指導官(昇太)から、「自分の肉体はあくまで『肉人形』に過ぎず、それを操る精神こそが自分なのだ」と洗脳される。その結果、ついに彼らは「他人の肉体」まで動かせるようになるのだが……。 他人の体も動かせるようになる、という設定には無理があるが、3人のロボットチックなマイム、他人を動かすことによって生じるトラブルが面白く、そういう無理は気にならなくなる。発想は二人羽織なんだろうけれど、それを「一人」で演じるところがミソ。 3,土田英生「潜入」60点 忍者七人が、敵の城に潜入して殿様を暗殺しようとする。ところが直前になって部下たちが次々と「草」(つまり二重スパイね)であったことが判明、味方はどんどん減っていく……。 まあ、結局「そしてだれもいなくなった」って結末になるのは見えているが、その「去り方」にそれぞれのキャラクターに合わせた工夫をしているので決してつまんなくはない。コング桑田がくノ一というムチャな設定も笑わせるし、最も忍者らしからぬ春風亭昇太のトロくさい演技も微笑ましい。けれど「『忍たま乱太郎』だよこれじゃ」という印象もぬぐえない。
4,千葉雅子「危険がいっぱい」50点 元漁師の清掃夫二人(コング・福田)が、ちょっとワンテンポ遅れた感じの後輩(久ヶ沢)をイジッてからかっている。けれど後輩の方はどこ吹く風。二人は適当にサボりながら好き勝手なことを喋っているが、突然後輩が倒れて仰天する。そこは原発で、漏れた放射能に後輩も二人も汚染されていたのだった。 途中までは女の話なんかしていかにも俗っぽい先輩二人と、実は事故で脳に損傷のある後輩とのボケとツッコミのやり取りが楽しいのだが、落ちが唐突で脈絡がなく、「はあ」という感じの一編。原発に関する知識が全くないってのも不自然っぽいが、でも現実に原発事故で死んだ人はホントに知識がなかったりしてるから、リアリティがないわけではないんだが。
5,故林広志「理想の部屋」65点 開戦を目前にして、シェルター内で討議を続ける総理大臣(昇太)・厚生大臣(松尾)・官房長官(コング)。評論家(久ヶ沢)。会話が盗聴されているということで、急遽「暗号での会話」に切り替えるが、その暗号コードが「カップルの会話」を模しているために、緊迫した状況が痴話げんかのように聞こえてしまう。ところがそこに厚生大臣の恋人(辺見)が現れて、本当に痴話げんかを始めてしい……。 これもよくある「言葉の取り違え」ギャグだけれども、かなりな部分までエスカレートされていて、まあまあ高水準の出来。けれど、閣議に関係ないけどなぜか紛れ込んでしまったという評論家っておいしいキャラを後半の展開では生かしきれなかったことと、もっと混乱させてテンポを早くすることもできるんじゃないかって疑問が出て来る点で、若干消化不良が残る。 6,後藤ひろひと「ONE ARMED FORCES」70点 戦場で、塀の上に横たわり、落ちてきた爆弾を片手にぶらさげ、必死になって重さに耐えている兵士(福田)。手を離せば当然爆弾は落下して大爆発を起こしてしまう。そこにニトログリセリンを本部に運ぶ途中の上官(松尾)がやってくるが、彼も左腕を負傷してい助けることができない。衛生兵(八十田)がやってきて二人を助けようとするが、うっかりニトロを受け取ってこれまた身動きできなくなってしまう。そして最後にやってきた女性兵士(辺見)は……。 一編のスケッチとしては一番まとまっている。最終的にどう考えても脱出のしようがない(つか、手榴弾のピンを抜いているから、数秒後にはどうしたって全員爆死である)状況なのに最後がとぼけたセリフで終わるのもツボを押さえたオチだ。まとまっているだけにさらに「この状況から脱出できたらもっとすごいスケッチになるよな」とつい期待したくなるのは欲深な要求か。
7,ケラリーノ・サンドロヴィッチ「スポンサー」75点 旅行先の料亭で、不倫カップル(松尾・辺見)が別れ話をしている。そこに仲居(昇太)が茶碗蒸しを持ってやってくる。茶碗蒸しを食べた夫は突然苦しみ出して絶命。実は女と仲居は共謀して夫を毒殺しようとしていたのだった。 ……というのは実は2時間ドラマのクライマックスシーン。三人はみな役者だった。ところがそこにプロデューサーから連絡があって、スポンサーに製薬会社がいる関係で毒殺はNG、撮り直しという事態になってしまう。急遽脚本が練り直されるが、脚本家(八十田)が考えたストーリーはとんでもないものだった……。 スポンサーの横槍でドラマが混乱ってのは三谷幸喜『ラヂオの時間』にもあった設定で、話がどんどん非現実な方向に進んでいくのも同工。殻は同じでも中身が違うから模倣した印象はないが、だったら三谷幸喜よりも面白くならなきゃいけない。まあ「すごく」とまではいかないが、死んだ仲居を二人羽織で操るギャグが秀逸なので、「少し」面白くなってるというところか。 ラスト、全体を総括するに当たって、これまでのスケッチをこき混ぜた演出は、一見不条理劇的であるが、実は喜劇の定番のカタストロフ・エンディングである。ケラさんが「筒井の子」であることがよく分かって面白い。
でも、全体を通してみると、「そこそこに面白い」印象はあっても「すごく面白い」ことにならないのはどうしたことか。これがオムニバスの持つ欠点の一つで、各エピソードに出来不出来が生じた場合、全体的な印象はどうしても「不出来」の方に引きずられる結果になるのである。シティボーイズやラーメンズのようなハイレベルな舞台であっても、それは起きてしまう現象で、それを回避するには「突出して面白い」エピソードが一つは必要になるのだが、今回はそれがなかった。「そこそこ面白い」が、全体として「今ひとつ」という雰囲気を作り出してしまっているのだ。 先述した通り、松尾貴史の毒を充分に発揮させられなかったこともちょっとネックになっている。でも、こういう「合作スケッチ」の試みはもっともっと作られたほうがいいと思うんで、第2弾、第3弾とシリーズ化してくれると嬉しい。
2004年08月01日(日) あなたへ 2003年08月01日(金) 引用は盗用じゃないぞ/映画『茄子 アンダルシアの夏』/『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』 2002年08月01日(木) MANGA ATACK!/テレビ特番『パワーパフガールズムービー』/『トランジスタにヴィーナス』4巻(竹本泉)ほか 2001年08月01日(水) 掲示板変更&21世紀の夏/『日本はなぜ負ける戦争をしたのか。 朝まで生テレビ!』(田原総一朗)ほか
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