無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2005年02月08日(火) でかるちゃー!/『鬼平犯科帳スペシャル 山吹屋お勝』ほか

 仕事は午前中までで、午後から医者へ。
 職場までしげに車で迎えに来てもらうのはいつものことだが、時間が昼過ぎなので、来れるかどうか朝の段階で予め聞いていたのだが、しげの返事は「間に合わんかもしれん」。
 てっきり「昼間は寝てるから」という意味かと思ったらそうではなくて、午前中、「ダイヤモンドシティに行くから」とのこと。
 「何か買い物?」
 「うんにゃ。カルチャーセンターに通いたいと」
 思わずズッコケそうになったが、そう言えばこないだからどんな講座があって、これとこれとかやってみたいとか話してたのを思い出した。なんでズッコケそうになったかと言うと、しげの顔と「カルチャー」という言葉の間に、ギンヌンガガップほどの溝があるように感じたからである。
 このところのしげは、劇団の方がひと段落ついて、プレッシャーから解放されてホッとしている面もあるのだけれど、同時に「さて、これから何をしたらいいのだろう?」と途方に暮れたような精神状態に陥って、いささか心のバランスを崩してしまったような言動もないではなかったのである。だから、何かやりたいことがあるんだったら、そりゃええこっちゃと思って、「やればあ?」と甚だテキトーに返事していたのであった。
 そういう次第なので、何の講座を受講するのかも今朝まで覚えていなかったのだが、「で、何を習うの?」と聞いてみたら、「太極拳」と答えた。
 今度は聞いてもズッコケはしなかったが(とりあえず見学だけだと言うし)、「なんでまたいきなりそんなのを」と聞き正してみてもあまりはかばかしい返事は返ってきそうになかったので、ともかく、「終わって間に合うようだったら迎えに来てね」と答えておいた。
 ところが、迎えに来た車に乗り込んだ途端、しげは「入会、申しこんだけえ」。
 「……早いな。じゃあ、これから毎週通うのか」
 「うん、毎週火曜日。参加する人の都合で変わるときもあるらしいけど」
 「何人ぐらいおるん?」
 「3人」
 「……そりゃまた、えらい少ないな」
 「一ヶ月受けたらやめてく人も多いみたいよ。今残ってるのはずっと続けてる人みたい。家族だったら割り引きも効くって」
 「平日の昼間だってのに、オレが通えるわけないじゃん」
 「夜開いてる講座もあるけどね」
 しげはどうやら私にも何か一緒に通ってほしそうな様子である。かと言って、どんな講座があるのか、どれくらい時間を取られるのか、費用はいくらか、そんなことが一切分からない状態では何も返事のしようがない。
 「あと、舞台美術の講座があって、こっちはボインちゃん(細川嬢)誘ってみようと思うんだ。忙しくてムリかもしれないけど」
 細川嬢なら確かに興味を示しそうではあるが、なんだかしげ一人が興奮して突っ走ろうとしているように見えなくもない。ほかにもどんどん「巻き添え」が出なけりゃいいがねえ。


 診断の結果はポリープも良性で危険はないとのこと。
 ホッと一息はついたが、医者からは「年に1度は腸検診を受けることをお勧めします」と釘を刺される。ポリープができやすい体質ではあるから、という理由らしい。
 「ポリープが一つ見つかると、確実にほかの場所にもありますから」。……なんて言われちゃったけど、なんだかゴキブリが腸の中で繁殖しているみたいで、気分はあまりよくないのである。


 夜、7時からTNCで『鬼平犯科帳スペシャル 山吹屋お勝』。
 父親の墓参の帰り道に刺客・相川彦蔵(嶋田久作)に襲われた火盗改めの長谷川平蔵(中村吉右衛門)。平蔵の気迫に気圧された彦蔵はいったん姿をくらますが、それは平蔵に恨みを抱く盗賊、霧の七郎(平泉成)に雇われた男だった。
 三ヵ月後、従兄の三沢仙右衛門(橋爪功)と息子・初造(金田明夫)が、平蔵の役宅を訪れる。今度、仙右衛門が山吹屋という茶屋で働いている女中のお勝(床嶋佳子)を嫁に貰うというので、その品定めをしてほしいというのだ。平蔵は、同心・木村忠吾(尾美としのり)を連れて山吹屋を訪れるが、現れたお勝に忠吾も太鼓判を押す。
 なにか腑に落ちぬ心持ちの平蔵は、密偵の五郎蔵(綿引勝彦)に、お勝の素性を調べるよう命じた。五郎蔵は配下の関宿の利八(吉田栄作)を大店の主人に仕立てて山吹屋に差し向けるが、お勝の正体はかつて盗賊だった利八の連れ合いだったおしのだった。おしのは復讐の念に凝り固まった霧の七郎が仙右衛門の命と金蔵を狙うために放った「引き込み」だったのである……。

 スペシャルでの復活だけれど、池波正太郎の原作は使い切ってしまっているので、今回は以前映像化されたもののリメイク。それでいいなら、これからも人気の原作をリメイクしていけば、現在「テレビ時代劇唯一の良心」であるこのシリーズ、まだまだ続けて行けるだろう。
 何度か日記にも書いているが、正直な話、池波正太郎を私は時代劇作家としてはそれほど高くは評価していない。と言っても比較対象としているのが岡本綺堂の『半七捕物帳』だから、こりゃハナから太刀打ちできるものではないのだが。言っちゃなんだが池波さんの作るドラマって、ハラハラドキドキする要素がほんとに希薄で、手垢がついたような人情話が多いんだよね。山本周五郎と比較しても骨格の甘さが目立つんである。そのあたりの弱さをカバーしてるのが「料理ウンチク」なんだけれど、それだけで作品評価をするのもどうかと思うしねえ。
 けれどキャラクター造形は念入りに練られていて、血肉が通った味のあるキャラクターを多く生み出している。全然面白くないというほどではないのだ。池波さんは、自作の映像化に際して時代考証にかなり拘っていた、という話も聞いているし、実際、出来上がった映像を見ていると、凡百のエセ時代劇にはない「江戸」の魅力がやはり横溢はしているのである。最近の時代劇じゃあ、町中を歩く物売りの声すら流さない作品が増えたが、私も「石見銀山、ねこいらず」なんて声が聞こえてくると嬉しくなってしまうのである。
 刺客に襲われた平蔵が、草履を脱いで、腰を落として股割りになるのもいい。これだけで他の時代激とは出来が違うことが一発で分かる。そういうディテールに拘っている「絵」が次から次へと繰り出されるのだから、確かに感激しないではいられないのだ。
 にもかかわらず、どうしても違和感を拭えないのは、やはり脇やゲストでどうにも「時代劇っぽくない」役者が増えてきていることである。尾美としのりが出てなきゃ、私ゃこのシリーズもっと熱心に見てると思うんである。吉田栄作もどうにもヅラと顔が似合わなくってよ。多少地味でも構わないから、次作があるなら、江戸の雰囲気を演じられる人にゲストに来てもらいたいと思う。



 しげの火曜日の日程は、あと「ぽんプラザホール『火曜劇場』」の観劇である。
 「学校や会社帰りに気軽に見にいける平日公演を定着し、実験的な新しい演劇等を試演する機会を提供するため、火曜日を中心に有料公演をする」というコンセプトのもので、ほぼ毎週、地元の複数の劇団が交代で公演を打っているのである。先週見た「制作集団アントンクルー」の芝居もこの「火曜劇場」の企画。ウチの芝居を手伝ってくれた富田嬢、堤嬢の「改・FREE’ズ+」も名を連ねている。
 ひと公演の料金はそれぞれ千円から二千円前後だが、各団体の公演を1回ずつ見られる通しチケット「ファイヤーパス」なるものもあって、これをしげは購入しているのである(「『火曜』だから『ファイヤーパス』なんだね」と私が言ったら、しげは「おお、そうだったのか!」と目を丸くしていた。相変わらずマヌケである)。
 芝居によっては帰りの時間がかなり遅くなるようなものもあったので、私はファイヤーパスは購入しなかった。今回の芝居もタイトルだけを聞くと面白そうではあったのだが、今月は見たい映画も多いので、先立つもののことを考えて控えることにした。
 すると帰宅してしげが、今日の芝居はこうだったああだったとうるさいこと。こちらが何かしていてもしょっちゅうを声をかけてくるのだから閉口する。こんなことならしげに付いていって、自分も見ればよかったかもしれない、とちょっと後悔する。

2004年02月08日(日) 入院日記7/お散歩の日
2003年02月08日(土) 敬三の乗る船/映画『シミキンの無敵競輪王』/『ワンピース』27巻(尾田栄一郎)
2002年02月08日(金) サルでもわかる『ハリポタ』/『パワーパフガールズ』2巻(クレイグ・マクラッケン原作)ほか
2001年02月08日(木) ザッツ・エンタテインメント!/2000年度キネマ旬報ベスト・テン



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