無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2004年08月25日(水) 美人プラス1

 まる一日出張。と言っても、仕事と言うか、業務研修である。規模だけなら超大企業だから、もうワラワラとあっちこっちの支店から社員が集まってくるわけだが、中には以前、同僚であった人との再会なんかもあったりする。

 朝方しげに車で竹下駅まで送ってもらって、それから電車に乗りこむ。
 電車の中で、ちょっと居眠りこきかけていたら、細身の美人さんがスッと近寄ってきて、「○○さん(私の本名)ですか?」と声をかけてきた。2年ほど前、ウチの職場に出向してたことのあるUさんである。今日もまた別の支社に出向とか。立場がまだ不安定なようで大変である。
 Uさん、何と言うか、鄙にも稀なる美人さんでいらっしゃるのだが、以前はメガネをかけていらして、髪はひっつめ、いささかケンのある雰囲気であった。それが、今日はコンタクトにされているのだろうか、素顔で髪もゆったりと流していて、こちらがちょっとドキッとするくらいに美しい。なんだか真正面からお顔を見るのが憚られるほどである。……これって「萌え」ですか?(^_^;)
 メガネを外すと美人というのはマンガみたいだけど、あれ、度がキツイメガネかけてる人だとホントにそうなることあるのね。眼の大きさがガラリと変わっちゃうのである。以前から、物腰がやわらかく、言葉も今時の若い人には珍しいくらいに丁寧で、なんかちょっと『らんま1/2』のかすみお姉さんと喋っているような感じであったのだが、今もその雰囲気は変わってはいなかった。……いや、一日出張でちとばかし草臥れそうだと憂鬱であったのだが、なんか出掛けに元気の出る出会いがあったことである。

 出張の内容が「研修」であるから、当然、一日一室に閉じ込められるわけであるが、部屋に入って時間待ちをしていたら、ちょっと目立つ感じの美人さんがスッと私の側に寄って来て、「○○さんですか?」と声をかけてきたので、ビックリした。……似たようなことが続くものである。
 その女性、もう6年くらい昔に、一緒に仕事をしていたKさんで、そのころも若くて美人さんであったのだが、お久しぶりでお会いしてみると、なんかもうモノ凄く「磨き」がかかっているのである。確かしげより一つくらい年下だったはずだから、まだ20代、ご結婚は数年前にされていたとハガキを頂いていたから、多分幸せ真っ盛りの新婚さんであろう。にっこり微笑んだ口元のホクロがかわいらしく、こりゃ同じ職場の男どもにはなかなか目の毒であろう、という風情である。同僚であった時もまあまあ私と気が合って、仕事も楽しかったのであるが、6年経っても私のことを忘れずにいてくれていたとは感激であった。……なのに、実を言うと私の方ではKさんの旧姓、とっさに思い出せなかったのだった。ダメじゃん(~_~;)。こういう女性に対する記憶力がない人間って、得てしてモテないので、世の独身男性諸君はこの点、充分注意するように(でも、記憶力がありすぎる人間もまたモテないので、バランスが難しいのよ)。
 いやまあ、仲がよかったとは言っても、Kさん、同僚時代からストレートにモノを言う方だったから、「私、○○さんとだけは絶対結婚しません」とか言われてたんだが。するもしないも、私、その時点で既婚者だったんだけどねえ(~_~;)。こうもハキハキしているといっそ清々しいくらいで、今思い返せば、あれだけ何の屈託もなく会話ができて仕事のしやすかったことは後にも先にもなく、私としては実にありがたい方であった。今のトンガリさんと取り替えたいよ、ホントに(T∇T)。
 もっともそのころは、もう一人同僚でKさんと犬猿の仲の方がいて(♂)、この二人の間に挟まれて仲裁もしなきゃならなかったので、決して全てが順風満帆だったわけではなかった。そのもう一人の人は数年後にとんでもない不祥事を起こして今は依願退職している。そのことを伝えるべきかどうか迷ったが、もうどこかで風のウワサに聞き及んでいるかもしれないし、ことさらイヤな名前を思い出させて不快な思いをさせてしまうのも悪いので、研修の合間は楽しい思い出話だけに終始した。
 Kさんは倉知淳の『猫丸先輩』シリーズのファンであったのだが(てゆ〜か、私が『日曜の夜は出たくない』を貸してファンにした)、偶然にも今日、シリーズ第二作の『幻獣遁走曲』を私は持参していた。これもまた偶然なのであるが、これ、てっきりなくしたと思いこんでもう1冊買い、あとで最初の1冊が見つかって、2冊所有していたのである。「よろしければ差し上げましょうか?」と言ってお渡しすると、凄く喜んでいただけた。「(この作者のファンだったことを)よく覚えていらっしゃいましたね」と言われたが、そういう「出来事」は覚えていても、固有名詞とかはしょっちゅう忘れているので、口には出せなんだが内心ではかなり恐縮していたのである。


 なんだか今日一日で「美人責め」にばかり合っているようだが(他にも2、3人、旧知の美人さんから声をかけられたのである。……なんか、美人の知り合いって多かったんだな、私)、残念ながら、楽しい出会いばかりがあったわけではなかった。
 席に座っていると、後ろの方で、昔どこかで聞いたことのあるような声が聞こえてくる。独り言をブツブツ言っているのだが、振り返って確認するまでもなく誰かはすぐに分かった。以前、日記にも書いたことのあるホモでオタクなストーカー氏である。クビにもならずにまだ職を続けていたのか! とちょっと驚きであった。まさか私がこの研修に参加すると知って追いかけてきたわけでもあるまいが、何も私のすぐ背後に陣取る必要もなかろうに、ワザとその存在をアピールするあたり、「意図」は見え見えなのである。
 その時は完全に無視をしたが、あとでチラッとその風貌を見たら、なんだか凄いことになっていた。だらしなく太って弛んだスタイル、髪は薄くザンバラで、顔色は蒼白で皮膚も鶏皮のように荒れているところにもって来て、目の下に何重ものクマができている。目つきは頗る悪く、一目見て「コイツ逝ってるな」というのが分かる雰囲気なのだ。……いや、ホントにどうしてコレが病院に入ってないのか。衆人監視のもとだから、別に私に何かすることもできはしないのだが、帰りは後を付けられていないかどうか、気になって仕方がなかった。……これでまた、なんか誹謗中傷のハガキとか送りまくるのかなあ、この人。誰もアンタの中傷なんか相手にしてないから、ハガキ代がムダなだけだってのにねえ。


 夕方、鴉丸嬢としげと博多駅で待ち合せ。ホントは映画『誰も知らない』を見る予定だったのだが、30分前で既に満席。客はみんなうら若き女性たちである。……カンヌ効果っていうより、これ絶対、柳樂くん効果だよなあ。そんなに美少年が好きか。
 来て何もせずに帰るのも何なので、紀伊國屋で時間を潰す。歩き回って、すっかり草臥れて帰宅。公演のチラシ案をよしひと嬢に送るが、転送がうまく行かず悪戦苦闘する。……なんかいろいろと疲れることの多い一日でありました。


 先週公開の『NARUTO<ナルト>大活劇!雪姫忍法帖だってばよ!!』が好スタート、公開2日間の成績が、およそ32万6000人の動員、興収では約3億5000万円と、ゴールデンウィークの『名探偵コナン』と比べても87%という快調さで、このままの勢いなら、興収15億円以上も確実とか。
 あいたた、これがそこまでヒットするとは思いもよらなんだ。できるだけ劇場アニメは見に行こうと思ってはいたんだけど、さすがにジャンプ系はノーチェックだった。ある程度トシの行ったオタクにとっては、この夏のイチオシアニメは『スチームボーイ』ってことになるんだろうけれど、本当の意味でのヒット作品は、『ポケモン』『ナルト』『ガッシュ』の3本なのだよなあ。これだけのヒットとなると、子供や腐女子向けだから普通のアニメオタクには関係ないなんてことは言ってられない。つか、今やそれがマットウなアニメファンということになってるのだ、世間では。
 初日には徹夜組も出たと言うから、確実に中高生、大学生あたりまで、『ナルト』や『ガッシュ』のファンは浸透している。かつての『ヤマト』『ガンダム』のブームを支えていたのがこの世代だったことを考えると、世代の格差とかいう言い訳は通用しない。明らかにアニメオタクの主流はこれらの作品に流れているのだ。本当にアニメーションというジャンルそのものを愛しているなら、いいトシしたオトナであろうと、やっぱこれらの作品は見に行かなくちゃならんだろう。「見たい気が起こらない」のなら、もうアニメオタクだとか名乗っちゃいかんね。……そう考えて行くと、「見たい気」だけはある私は、やっぱりアニメオタクなんだなあ。カネが続かねえから現実にはムリなんだが。
 『ナルト』の監督、ずっと気付いてなかったけど、岡村天斎さんであった。それなら子供たちの中にオヤジが混じってても言い訳は立つな。……って行く気マンマンじゃん。でもしげはやっぱり興味持ってくれないんだろうなあ(+_;)。


 さて、またまた来ましたヘンなメール。
 差出人はsato_natsukoさん。
「初めまして。浮気相手を探している主婦です。」だそうな。

〉いきなりのメール失礼致します。
〉どうも初めまして。奈津子といいます。
〉結婚して4年、目下26歳です。
〉受付やってたんですが、何故か26歳年上の社長に目をつけられて
〉結婚しました。でも、えーとですね、主人の年齢が年齢なので
〉私、セックス面でとても満たされない日々を送っています。。
〉もとから人並み以上にエッチが好きってのもあるんですけど、
〉いますっごくしたくてしょうがないんです。。
〉どうしても我慢ができなくて、ネットで相手を探していたところ、
〉近い場所に住んでるらしい貴方を見つけて
〉こうしてメールしている次第です。
〉主婦という立場上、秘密厳守での関係を持ちたいと思っているのですが、
〉そちらとしては何か希望する条件はありますか?
〉私、仕事はしてないんですが、お金とか全然平気です。
〉絶対にお互いの生活には立ち入らない約束を守れる人メールください

 本文の一部をGoogle検索かけてみたら、391件、ヒットした。名前は必ずしも奈津子さんじゃなくて、美紀さんになってたり千夏さんだったり多恵子さんだったりなぎささんだったりするようだけれど、文面は同じ。受け取った人も、全国各地にお住まいのようで、どうやらこの奈津子(代表)さんは北海道にいても九州を「近所」と言えるくらい、足が長い人らしい。正体はダイダラボッチだな。とてもじゃないけど、奈津子さんにご満足いただけるようなモノは持ってないので、お相手はご勘弁願いたいところである。
 ここまでロコツだと、受け取った人もすぐにインチキだとわかるようで、返信したらどうなった、というところまで書いてる人はいない。その点、前回の「名前も件名もないメールが来ましたが、一応返信します」というやつに比べると「芸」がない。今回の詐欺メール、いささか効率が悪かったんじゃなかろうか。
 ……しかしねえ、こんなにウソがヘタだとねえ、なんかもっと信憑性のある、マシな文章が書けんのか、という気がしてくるんだよねえ。もちっと設定考えろよって言いたくなるような。もっとも、不特定多数に出すわけだから、どうしても不自然さが出るのは仕方がない。「相手の名前が呼べない」というのがこの手のメールの一番のネックだもんね。さらに、女性にまでこういうのを送っちゃってるから、もう「バレいでか」ってなもんなんだが、よくもまあ、これだけ堂々とばら撒けるもんだとある意味感心はする。だいたい「セックス」をキーワードにすれば騙されて引っかかるやつがいるだろう、と考えているっていうのが、心底人間というものをバカにしているのである。違法サイトにアクセスさせるのが目的だから、たとえ詐欺かもしれないと考えながらもやっぱり興味を引かれてしまうくらいスケベなヤツを想定して送ってんだろうけどねえ。実際、もしもこんなのに引っかかるやつがいたら、そいつはモノホンの変態だと思う。ま、一万人に一人くらいの割合でもいれば成り立つ商売だろうから、それくらいの割合でならいるんだろうね、変態。
 ……変態発見機としては役に立つか、こういうメールも。いっぺんそんなの作って、送ってみようか……って、もしかしたら私と同じこと考えたヤツがいて、イタズラで送られてきてんじゃあるまいな、これ!?

 ともあれ、今日は最後まで「女性」に縁のある日でありました。いい日なのか、コレ。

2003年08月25日(月) 世代の違いってことじゃないと思うけど/『ASTRO BOY 鉄腕アトム』1巻(手塚治虫原作・姫川明)
2001年08月25日(土) 夢は宇宙/『なつのロケット』(あさりよしとお)ほか
2000年08月25日(金) 唐沢本の感想書けなかったけど面白いぞ/『垂里冴子のお見合いと推理』(山口雅也)ほか



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