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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2004年08月23日(月) 第10回広島国際アニメーションフェスティバルグランプリ……『頭山』!

 前々からこの日だけは、と有休を取って、第10回広島国際アニメーションフェスティバル最終日に行く。本当は全日行きたかったけど、そうすると仕事を三日も休まなきゃならなくなる。トンガリさんじゃあるまいし、さすがにそこまではできない。それに五日間アニメ見続けって、40の坂越えるともう体力が続きませんて。

 この日記、エンピツの「アニメ/漫画」の項目に登録してはいるものの、あまりその手の話題が少ないので、今日はちょっとだけ汚名返上である。けれど、じゃあ他の日記でヒロシマ2004のこと扱ってるかっていうと、一昨年の第9回も殆ど見かけなかったのだな。毎回大盛況のイベントだというのに、一般的なアニメオタクの関心はまだまだ薄いのである。
 今年なんかな〜、10回記念大会で、名誉委員長があのリチャード・ウィリアムズなんだぞ! ウィリアムズさんが、目の前でアニメの作り方について質疑応答に答えてくれるのだ! これで小躍りしないアニメファンって、何なんだろうって思っちゃうよ、マジで。
 リチャード・ウィリアムズと聞いて、ピンと来ない人には、『ロジャー・ラビット』のアニメーション監督さんだ、と言えば通りがいいだろうか。私が最初に知ったのは、『ピンク・パンサー2』のオープニング・アニメーション監督としてである。『2』と『3』だけしかウィリアムズ氏は担当していないのだが、なにしろ、ピンク・パンサーの生みの親であるフリッツ・フレリングよりも“上手く”動かせたのだから、その実力のほどは超一級と言っていい。『OO7/カジノロワイヤル』『何かいいことないか子猫ちゃん』のオープニングもウィリアムズ氏。ピーター・セラーズ出演の作品やらブレイク・エドワーズの映画を見に行ったら必ずこの人の名前がクレジットに出るので、それで覚えてしまったのである。未見の方はどれか一本でも御覧いただきたい。「アニメーション」とはこういうものを言うのだとご納得いただけよう。

 今日はしげを置いての単独行。当然さみしがって朝方グズグズ言うのだが、付いて来ても楽しいデートにはならないので(コミケにノンケの彼女を連れて行くがごとし)、しげは今日は引きこもりである。黙って勝手に行っちゃうのも何なので、朝は一応起こして、博多駅まで車で送らせる。
 新幹線で広島まではわずか1時間10分。20年前に行った時は2時間以上軽くかかってた気がするが、新幹線も速くなったもんだ。広島に着いたら外は大雨。会場のアステールプラザへは、バスで行くつもりだっちょっとした距離もあったので、タクシーで行くことにする。
 大ホール、中ホール、小ホールと分かれて、同時刻にイベントが行われているので、どれか一つに絞らなきゃならない。結局、私のたどったコースは以下の通り。

 9:15 大ホール 長編アニメ『ベルヴィル・ランデブー』(監督シルヴァン・ショメ)
 ↓
 11:30 中ホール ジョン・ハラス&ジョイ・バチェラー回顧特集
 ↓
 14:15 中ホール 第10回大会記念シンポジウム
 テーマ「長編作品制作の心得」
 パネラー 高畑勲、ジミー・T・ムラカミ、マルセル・ヤンコヴィッチ、ネルソン・シン
 ↓
 18:00 大ホール 表彰式、閉会式、受賞作品上映

 それぞれのイベントについて、いちいち感想を書いてたら、また徹夜することになりかねないので省略。どれも「すっげえおもしろかった」でカンベンして下さい。
 何が一番楽しかったかって、高畑勲氏が「長編アニメの制作がどうこうより、スクリプトのしっかりした短編アニメがもっと作られるべきです!」とコンペのテーマを無視して引っ掻き回してワヤクチャにしてたのが一番笑えた。いや、マジメだからそうなったんだけどね。

 閉会式、座る場所を間違えて、ディレクター席に座ってしまう。目が悪くて看板が見えなかったせいで、ワザとじゃない。気がついたら周りが外人さんばかりだったので、ようやくおかしいと気付いた。式の合間に立って移動したけど、なんか心臓がバクバクしました(^_^;)。怪我の功名で、ちゃっかり山村浩二さんにサインもらっちゃったけど。

 審査結果は以下の通り。今んとこ、一番早いネット情報かな。
◎ グランプリ 『頭山』“Mt. Head”  監督 山村浩二(日本)※
◎ ヒロシマ賞 『ルイーズ』“Louise” 監督 アニタ・ルボー(カナダ)※
◎ デビュー賞 『鬼』“The Demon”  監督 細川 晋(日本)※
◎ 木下蓮三賞 『ライアン』“Ryan”  監督 クリス・サンドレ(カナダ)※
◎ 観客賞   『サウス・オブ・ザ・ノース』“South of the North” 監督 アンドレイ・ソコロフ(ロシア)※
◎ 国際審査員特別賞
『ノーティス』※、『ロム・サンズ・オンブル』、『ストーミー・ナイト』※、『ループ・プール』※、『ノー・リミッツ』※、『フィッシュ・ネバー・スリープ』
◎ 優秀賞
『ティクハヤ・イストリア』、『ニブルス』、『ザ・トラムNO.9・ゴーズ・オン』※、『インスティンクト』、『ピコール』※、『ガード・ドッグ』、『プロ・ラコフ』
※ 閉会式で上映された作品

 「また『頭山』?」と思った方もいらっしゃるだろうけれど、決して日本人作家への身贔屓ではないことは、実際に本作を御覧になっている方にはご首肯いただけよう。だいたい今回の審査委員に日本人はいないし。こうなるとアカデミー賞“だけ”が受賞させなかったことの方が、あの賞の胡散臭さを逆に浮かびあがらせる結果になっているのである。
 閉会式では、フェスティバルディレクターの木下小夜子さんも表彰されて、夫の故・木下蓮三氏の遺作を引き継いで完成させた『琉球王国』も上映。メッセージ性が強すぎるのはホントは好みではないのだが、「沖縄の悲劇」は現在も続いているので、語り過ぎということはないと思う。
 木下さん、コメントで、「広島市長さんがフェスティバルの意図を評価してくれたのが何より嬉しい。つまり今後も開催し続けるのだと解釈しました!」と語っていたのが、印象的。日本人はなかなか気付いてくれないけど、この大会、ASIFA(国際アニメーションフィルム協会)の主催になる、アヌシー、ザグレブと並んで権威のある大会なのだ。にも関わらず継続がいつも危ぶまれてるってのが、この国のアニメに対する認知度の低さを表しているのである。
 再来年、きっとまた開かれると思うので、本気でアニメを愛してる方々は、ぜひご来場下さいませ。世界各国のアートでエンタテインメントなアニメーションの豊穣さに心打たれることと思います。

 帰りの新幹線の中で読んだ本、リチャード・ウィリアムズ『アニメーターズサバイバルキット』、ご本人のサイン付き。感涙(T∇T)。

2003年08月23日(土) 恋から自由であるということ/映画『呪怨2』
2001年08月23日(木) What is Okyuto?/『新暗行御史』(尹仁完・梁恵一)ほか
2000年08月23日(水) 若いって、イタいことなのよん/『エノケンと呼ばれた男』(井崎博之)ほか



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