無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2001年08月23日(木) What is Okyuto?/『新暗行御史』(尹仁完・梁恵一)ほか

 昨晩、またお隣りさんが煙草を吸い、大イビキをかいてくれたので、またもや睡眠不足。……糖尿治す前に、禁煙したらどうだ。
 少しでも煙草が流れて来ないようにと、たいていカーテンを仕切っているのだが、あまり効果はない。
 あちらさんはあちらさんで、しょっちゅうカーテン仕切られてるので、日が射さなくって(私の方が窓際なのである)迷惑だと感じているようだが、だったら煙草吸うのをやめてくれりゃあいいのである。
 こちらがカーテンの中で寝ていると思ったのか、お隣りさん、看護婦さんに「有久さんは今日退院かね?」なんて聞いてるが、聞いてどうする。厄介ものがいなくなって助かるとでも思っているのか。
 ……いかんなあ、煙草吸わされてると、どんどんドス黒い発想ばっかりで頭が占められちゃうぞ。周囲のすべての人間が敵に見えてくるのである。もし私が何か犯罪を犯すとしたら、まず真っ先に手近な喫煙者が犠牲になると思いますのでご注意を。


 朝食は豆腐の味噌汁、油揚げとひじきの煮付け、牛乳。
 この朝ご飯、入院中、品数が少ないなあと文句ばかりつけていたが、退院すればこうきちんとコントロールしてもらえる食事は望むべくもないのである。
 そう考えると感慨もひとしお。
 朝の運動も今日、明日。付き添いの看護婦さんとの別れももうすぐだと思うと寂しい限りだ。この付き添い、毎日交替で看護婦さんが来られるのだが、今日の看護婦さんは妊婦さん。
 大きなおなかで歩けるのかと思ったら、座って時間を計測するだけだった。このトシになっても女性の扱いは下手なので、ついつい余計な心配をしちゃうのである。もっとも女性の扱いがうまかったらしげにむちゃくちゃ嫉妬されてしまうだろうが。
 歩いている最中のセミの声少なし。空気も随分涼しくなった。
 森の日陰に隠れて出て来なかった猫たちも、道端のあちこちで見かけるようになった。偶然、右と左から犬を連れて散歩してくる人に挟まれて、首をキョロキョロさせながらどちらに逃げればいいか迷ったりしている。……後ろの森の中に逃げろよ。緊急事態に陥ってパニックを起こし、とっさの判断ができなくなるっての、猫も同じなのね。

 昼飯はわかめごはん、豚もものゴマだれ焼き、きぬさや、大根とオクラの煮付け、バナナ。昨日の豚ももの使いまわしだな。
 糖尿病教室はビデオを二本。
 なんと1本はアニメと実写の合成。
 アニメの貝原益軒が突然現代に現れて、糖尿病患者のおじさんを豪華客船に乗せ、「糖尿」の海に乗り出すというムチャクチャな内容。……糖尿の海って、回りみんな「尿」かよ(-_-;)。
 その尿の海の中から「高脂血症」「肥満」「動脈硬化」なんて氷山が現れて迫ってくるのである。で、船のへさきで貝原益軒、タイタニックしてやがんの。……ヤなアニメだなあ。制作会社がわかんないけど、益軒の顔、『一休さん』の外鑑和尚に似てたから東映アニメーションかもしれないなあ。
 以前に見たことのある糖尿病映画じゃ、塚本信夫が昔の同級生に再会するんだけど、インポになっちゃって、果ては車椅子生活になってその同級生に世話してもらうようになるという救いようのない映画だった。その後塚本さんがホントに死んじゃったこと考えると、ほぼ実録的な映画である。……よく出演したよなあ。
 あとの一本は、日常生活の中でいかに楽して運動するかという実に二律背反した内容のもの。「階段を昇り降りするのが辛かったら、降りるときだけでも歩く」とか「信号で立ち止まったら腕を振る」とか、「昼飯どきは遠い店に行く」とか、しょーもないもんばかり。……「きれいなねーちゃんを見かけたらちょっとついて行く」とかいうのが出て来やしないかと思っちゃったよ。
 ……病院ってのは、患者を脱力させるのが目的なんかい。


 栃木県の秋元美穂ちゃん誘拐事件の犯人として逮捕された藤田竜一容疑者、「女の子に興味があって、可愛かったから誘拐した」と供述し始めているそうである。
 美少女アニメのファンで『ミンキーモモ』なんかが好きだった、ということだが、またこれで「アニメ規制」なんてこと言い出すバカがいやしないかと思っていたら、『ザ・ワイド』で市川森一が「今の少女マンガはひどいですよ。規制していくことも考えないと」なんて言い出しやがる。
 美少女アニメと少女マンガを混同している無知も甚だしいが、結局この人、何を規制の対象とせよと言っているのか。少女マンガと言ったって、『ちゃお』や『なかよし』を指しているわけじゃないだろうが(それともそうなのか?)、じゃあ『花とゆめ』はダメなのか? あるいは『少女を主人公にした青年向けマンガ』ということなのか、同人誌のエロ描写のことを言いたいのか。結局、何が言いたいのか皆目わからず意味不明なのである。
 一般の少女漫画誌に規制されなければならない要素はないし、成年マンガはもともと未成年が読んじゃいけないものである。同人誌のようにマスメディアではないものにまで規制を入れろというのはまさしく暴論。
 そもそも性的な表現媒体が即、性犯罪につながるものではないというのはごく常識なのに、何をトチ狂ったのか。だいたい犯人はもう成人じゃないか。「アニメのせいで犯罪に走った」なんて言い訳が通用するトシじゃないのだぞ。
 ウルトラシリーズでも底の浅い脚本しか書けなかったやつだからなあ。仮にも作家なら、自分の脚本が規制される可能性も考えて発言をせんかい。


 夕食前に運動のための散歩。これが最後の外出になるか。
 荷物が増えるというのに、コンビニで『SPA』や『ダ・カーポ』、『クレヨンしんちゃん総集編』などを買う。
 近道をしようと道を斜めに突っ切ったら、どこか知らない道に出てしまって、1時間以上、迷う。
 思い出というものは最後の最後にできるものである。


 夕食はめだいのマヨネーズ焼き、ブロッコリー、山芋和え、おきゅうと。
 博多以外の方にはこの「おきゅうと」というのがなんなのか知らない人も多かろう。
 「エゴノリ」という海草を乾燥させ、水に戻して煮詰め、金網で裏ごししたあとで薄く小判のような形に引き延ばして、冷やして固めた食ベ物。実際に食べる時には、思い思いの幅に切って、カツオブシやネギなんかを混ぜて、ショウガ醤油や酢醤油で食べる。まあトコロテンみたいなものだけれど、舌に張りつくような触感が微妙に違うのな。あまりたっぷりとは醤油をつけず、ご飯と一緒に食べるのが通常の食べ方。でもスーパーで売ってるのの中には、既に細く切られちゃってるのが多くて今イチ。
 私ゃ太幅に切るのが好きなんでねえ。あまり細いと触感がないのよ、これ。
 今日のも細く切られてあって、醤油も余計にかかっていたので好みではなかった。先祖代々の博多人としては、おきゅうとの食べ方に関してはちとウルサイのである。「うるさいなあ」と思う人は読まなくてよろしい。


 6時から、NHK総合『天才てれびくんワイド/探偵少年カゲマン 総集編』。
 原作マンガも読んだことないのだが、結構古いマンガではなかったかなあ。なんで今ごろアニメ化、という気がしないでもないが、『名探偵コナン』に対抗して、小学校低学年に向けた推理クイズアニメを一つ立ちあげようってところなんだろう。
 推理ったって、ドアにアリの絵が描いてあって、三つのランプにそれぞれ「あ」「か」「り」と字が書いてあるのだけれど、どれを消したらドアが開くか、なんていう他愛のないもの。でもこれくらい可愛げがあると、『コナン』みたいなただのカッコつけミステリよりずっと好印象。
 何より作画が『宇宙海賊ミトの大冒険』の近藤高光さんだよ。昔ながらの漫画映画っぽい絵柄でなつかしいのである。


 マンガ、臼井儀人『クレヨンしんちゃん まだまだあるゾ!オラの秘密!?号』(双葉社・380円)。
 『ブリブリ王国の秘宝』と『雲黒斎の野望』の映画原作に長編を収録した増刊号。
 単行本を全巻買っているわけではなかったので、この二作、今まで読んでいなかったのだが、ようやく読めた。ブリブリ王国、結構原作に忠実に作られてたのだなあ。しんのすけとスンノケシ王子がそっくりという設定が今イチうまく生かせてないなあと思っていたのだが、原作でもそうだった(笑)。
 短編は小さなギャグの積み重ねでうまく落とせているけど、長編は臼井さん、苦手だったんだねえ。
 『雲黒斎』は設定のみを借りただけで、ほとんど原作無視の映画になっていた
のは、あのままじゃ映画として弱い、と監督が考えたせいだろうな。……戦うヒロインがやはりほしいところだしね。
 どんでん返しの後のタイムパラドックス、更には巨大ロボット戦などは全部映画だけのオリジナル。ひろしが「SF初段」という設定も(笑)。
 原作の弱いところをどう補完してあの傑作に仕立て上げていったか、その過程なんかも本郷みつる監督に聞いてみたいもんだ。


 マンガ、酒井直行原作・田巻久雄作画『獣世紀ギルステイン』1巻(小学館・580円)。
 『AMON』のデビルマンやデーモンのデザインを行った造型家の韮沢靖がギルステインほかの「躯殻獣」のデザインを担当。でも私はあまり韮沢さんのデザインには魅力を感じてないんだよねえ。マンガのキャラクターには単純な線の持つ魅力ってものがあるのであって、やたら細部に拘ってリアルにしたって、ゴテゴテするばかりで本当の迫力は出ないのである。
 ギルステインも「ドタマ禿げててヒビ入ってるよ」としか思えないし。
 実際の作画を担当してる田巻さん、山本貴嗣さんのアシストやってた人だよなあ。絵柄がよく似ている。ということはこの人も劇画村塾系かな? よく知らないけど。
 北極の永久氷床の中から発見された未知の病原体、カドケウス・ウィルスは、一瞬にして宿主の体格を増大、怪物化させる。しかし、その「ギルステイン症」に感染するのは、15歳の少年少女に限られていた。政府は少年少女たちを施設に隔離し、ウィルスのメカニズムを探るため彼らを殺し合わせる……。
 まあ、(『デビルマン』+『バトルロワイヤル』)÷2って感じだねえ。
 謎のカギを握るのがウィルスと一緒に何万年も閉じ込められていた少女「サラ」なんだけど、これのクローンを作って……って『エヴァンゲリオン』も入ってるじゃん。
 あまり寄せ集めでマンガ作るもんじゃないぞ、という気もするけれど、今のところそうつまらなくはない。掲載誌の『サンデーGX』、ハマって読めるマンガが意外に多いぞ。少なくとも『コミックバンチ』よりはずっと読み応えがあるよ。


 マンガ、尹仁完(ユン・インワン)原作・梁恵一(ヤン・ギョンイル)作画『新暗行御史』(小学館・580円)1巻。
 オビに井上雅彦絶賛、とあるけれど、なるほどこれは面白い。
 韓国のマンガということで取っ付きにくいと感じる人もいるかもしれないが、ちゃんと右開きでフキダシも縦長の楕円、コマ割りも日本のマンガと同じで、読みづらさは全くない。
 「暗行御史(あんぎょうおんし)」は「アメンオサ」と読むそうだ。皇帝の勅使のことで、韓国の「水戸黄門」みたいな役目を負っていたとか。それに作者は現代的なアレンジを施し、一種の陰陽師みたいなゴーストバスターに仕立て上げた。
 暗行御史の「しるし」である「三馬牌」。それは悪を凝らす「幽幻兵士」を蘇えらせることができる。
 この設定だけを聞くと、単純な勧善懲悪物語に見えるけれど、この暗行御史、結構ヒネクレ者で、自分が「正義の味方」みたいに思われるのが大嫌いなのである。虐げられた民衆が「いつか暗行御史が助けに来てくれる」なんて虫のいい希望を持ったりしているのも気に食わない。
 で、助ける前に一言いうのだ。
 「これから起こることはすべて偶然だ。だから二度とこんなことが起こるなんて思うなよ」
 照れてんのか、お前は! ……水戸黄門と言うよりゃ木枯し紋次郎に近いかな。この辺は多分、作者の脚色だろうな。
 特に第1話はどんでん返しもうまく効いていて傑作。
 第2話から登場するもう一人のヒロイン、成春香(ソン・チュニャン)は18世紀に成立した朝鮮の小説の主人公を借りたもの。身分の違いを越え、領主の虐待にも負けず、暗行御史の恋人、李夢龍(イ・モンニョン)との恋を成就させたハッピーエンドの物語を、なんとアンハッピーエンドに作り変え、春香が「もう一人の暗行御史」となるまでを描く。
 韓国は儒教モラルが今でも強く伝統として継承されている国である。しかし、真に「自由とは何か」ということを考えていけば、従来の道徳観に対しても現代に生きる者として批判を加えざるを得ないと作者たちは考えたのではないか。
 古典に取材しながら、ラストを全く作り変え、春香を悲劇のヒロインとして描いたのは、「列女は二夫にまみえない」という儒教の倫理観からも春香を「自由」にしてあげたいという思いの表れではないか。原作の春香はただ待つだけの少女だが、この『新暗行御史』の春香は、自ら「山道(サンド)」(護衛)となって戦い、民を救う少女なのである。
 ううん、やっぱり宮崎駿あたりの影響もあるのかなあ。
 でも原典と何が一番違うっかっていうと、数多く映像化されてきている春香だけれど、ボンデージスタイルの春香は前代未聞ってことだろう。
 ……このマンガ、韓国で出版したらかえって大反響になるのではないか。


 ちょっと夜更かしして、『ここが変だよ日本人』、霊能力者特集を見ながら寝る。でも、ヤラセがミエミエの展開で興醒め。
 ……だからどうして外人の霊が日本語で喋るんだよう。

2000年08月23日(水) 若いって、イタいことなのよん/『エノケンと呼ばれた男』(井崎博之)ほか



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