無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2003年09月25日(木) 文化の分化/『浪花少年探偵団』(東野圭吾・沖本秀子)/『探偵学園Q』12巻(天樹征丸・さとうふみや)

 Web現代の「あなたとわたしのGAINAX」、摩砂雪インタビューの第2回「アクションの血」、全くガイナックスの方々の発言というものには意気軒昂なものがあるのだが、今回も摩砂雪さん、ハリウッドのCG技術について、「やつらはセンスがない。なんか日本の物真似をやっているけど、演出の詰め方ひとつとっても職人根性がない」。とか、ハリウッド作品への日本のアニメの影響についても、「まっ、いいんじゃないの。好きでやってるのならば。ただ『マトリックス』をつくっている人たちが好きなアニメーションってのは、俺があんまり好きなアニメーションじゃないんですよね」とか、「アクションの真髄をわかってないんですよ。アメリカのような多民族が集まっている国だと、どうしても統一性を持った文化の様式がない分、そこから凝縮されて生まれてくるかっこ良さが出てこなかった」とかもう、言いたい放題である。
 でも実際に的をちゃんと射てると思いませんかね?

 ハリウッド映画を擁護する人たちは、やたらアチラの作品は「エンタテインメントのセオリーに則ってる」ことを強調して誉めるけれども、別にそんなのは当たり前のことなんで、そのセオリーの上に何を積み上げていけるかってのが職人芸なわけよ。則ってるだけで、あとは全部同じ印象のバカ映画にしかなってないのは、その「積み上げ」がないから。みんな似たような「肌合い」になっちゃってることに気付かないらしいのが私にはフシギで仕方ないんだが。
 まあ、なんでも「最初に見た映画」は面白く感じるものだからね、そういうのを初めて見るような若い人がハマっちゃうのはもう仕方ないと私も諦めてるんだけど、これまでそれなりに映画やドラマを見てきてるんじゃないかって思うようないいトシしたオトナがさ、『マトリックス』あたりに群がっちゃうというのはどういうことなのよ? あれの何をどう面白がれというの? 「まあまあだね」ならまだしも、本気で感動したりしてるの見ると、もう「文化」とか「伝統」というものはこの国からなくなってくのかと暗澹たる気分になるよ。
 時代は移り変わるものだ、というのは確かにそうなんだけれども、何かが全くの別モノに変わってしまうということはそうそうない。映画のルーツはたかだか百年だ。百年前の映画に、最新の映画のルーツを、そのプリミティブなスピリットを見出すことは充分可能である。もちろん、全ての映画を見るなんてことはかなわないまでも、ある程度の名作、傑作、駄作を追うことは決して不可能なことではない(ここで「駄作」だって見逃してはならないってとこがポイント)。ヒマツブシにテレビを眺めてたって、そういうものを眼にする機会はいくらでもあったと思うんだけれども、それを殆ど見逃してきて、そのくせ「なんとかって映画はいいですよね?」とか言われても困るのよ。
 「伝統」とか「文化」ってのは、当然、前の時代のものが基盤になって、そこに新しいモノが積み重なったり入れ替えられたりしてじわじわと変化していくものである。自分たちのルーツが目の前に転がってるのに、それからあえて眼を背けちゃうってのは、まさしく「文化の否定」だし、結局は自己否定にしかならんのだけれどもね。

 まあ、摩砂雪さんの意見には頷くところ大なんだけれども、やっぱり「じゃないですか」を乱発した喋りはどうもねえ(~_~;)。まあ私はそれを全部「なんですよ」とかに置き換えて読みましたが。


 体調は少し回復してきたけれども、まだまだ仕事のノリがイマイチよくない。
 疲れて帰宅したあと、気になる用件が一つあったんで、私用の電話。まあ詳細は書けないんだけれども、正直な話、悲しくなるような会話であった。「迷惑かけてないと主張してる人間が実は一番迷惑かけてることに気づいてない」ってことを証明してるようなもんなんだけれど、相手からは私の方がモノが見えてないように見えるんだろうなあ(T.T)。そうでないことを証明しようと思えば、いろいろ相手に支障の出てくることでもあり、それが本来の目的でない以上は、こちらが引き下がった方がよかろうなあとながなが喋った上で結論。


 DVD『カレイドスター』の1巻を見ながら寝るが、4話収録分を見て、今んとこ面白くなりそうな要素だなあと思ったのはやっぱりフールの存在かな。ヒロインの苗木野そらにとって、ピノキオにおけるジミニー・クリケットのような「良心」となるのか、はたまただのおジャマ虫となり果てるのか(^o^)。声優さんが声優さんだけに、どっちに転んでもおかしくないのである。
 カレイドステージのメンバーの声優にあびる優や大森玲子がいたけれども、ちょっと使えねえなあ(^_^;)という面があったとしても、出すなら出すで、もちっと美味しいところのある役に振らないと、ヒロインを苛めるってだけの役じゃ、ホントに使い捨てになってしまうんと違うか。それともベテランが支えて後進を育てるって麗しき伝統、声優の世界でもなくなってきてるんかねえ。


 マンガ、東野圭吾原作・沖本秀子作画『浪花の熱血先生と教え子探偵団の事件簿 浪花少年探偵団』(秋田書店/サスペリアミステリーコミックス・540円)。
 その昔(^o^)、NHK『ドラマ愛の詩』で、山田まりや主演で映像化された短編シリーズのマンガ化。原作小説自体読んでみたいと思いつつ、まだ見当たらないのでマンガで我慢。
 一昔前に、講談社から有名ミステリをマンガ化した「コミックノベルス」なるものがシリーズ出版されてたことがあったが、ハッキリ言って、単行本1巻に原作小説をまるごと収めるのにはムリがあり、どれも原作の魅力を伝えるのには程遠い出来になっていたのには落胆させられていた。
 中城健の『刺青殺人事件』(原作・高木彬光)は画面に動きというものが感じられず、名探偵神津恭介は眉目秀麗に描かれているわりにはどこかもっさりとしていたし、望月あきらの『アルキメデスは手を汚さない』(原作・小峰元)は、既に『ローティーンブルース』を描いていたころの鮮烈さを失っていた。まあ悪くない出来かな、と思ったのは古賀新一の『陰獣・人でなしの恋』(原作・江戸川乱歩)くらいのものである。
 あのころに比べると、最近の原作付きミステリーのレベルアップには眼を見張るものがある。ページ数に「ゆとり」が生まれてきてるってのもあるだろうけれど、マンガ家さんたちの作画技術、演出力が格段に進歩しているのも大きな理由だろう。
 沖本秀子さんの描くしのぶセンセは、ムネは山田まりやほどにはないかもしれないが、一文字にキッと結ばれた口元がぐっと魅力的である。必ずしも「名探偵」というほど頭が切れるわけでもなく、教え子たちに手助けされながらようやく事件の真相に辿りつくようなありさまだが、そこがかえって「人“情”的」でよろしい。乱歩の『少年探偵団』はやはり「東京」が舞台であってこそだが、「学校」を舞台とした大阪の少年探偵団の活躍は、こういう浪花っ子のセンセを仰いでこそ映えるんだなあ、と、この設定には感心すること頻りである。
 願わくは、続編の登場を希望したいのだけれど、最終話でしのぶセンセ、……ちゃったからなあ。いやもちろん「復帰」は可能な設定なんだけれどもね。


 マンガ、天樹征丸原作・さとうふみや漫画『探偵学園Q』12巻(講談社/少年マガジンコミックス・440円)。
 しかしホントに天樹さん、「ダイイング・メッセージ」が好きだねえ。
 『魔矢姫伝説』にも『光と影の絆』にも、どちらにもダイイングメッセージが出て来る。
 もう私だけじゃなくて、ミステリの専門家がみんな指摘してることなんだけれど、この「死者の伝言」くらい、ミステリのトリックの中で不自然なものはないのである。「犯人に気付かれずにメッセージを残す」ことの困難さをどうクリアするかってことなんだけれども、結局、シチュエーションそのものを操作して、メッセージを残すタイムラグを無理矢理作らないと、お話が成り立たなくなるのである。『魔矢姫』でも、ある事情から犯人が被害者を「即死しないように殴った」ために、そのタイムラグが生まれたって説明なんだけれども、そんな器用な殺し方がそう簡単にできるかい(^_^;)。被害者が呻き声を出して周囲に気付かれない程度で、しかもダイイングメッセージを書き残そうって意識はあって、手も動かせる状態なんて、なんて都合のいい状態。つかありえるのか。
 『光と影の絆』の「フリーメーソンの暗号」ってのも、「それなりにてこずるダイイングメッセージ」なんてハッタリかましてるけど、見て恥ずかしくなるくらいに簡単過ぎる暗号。下手すりゃ『名探偵カゲマン』よりもレベル低いぞ。でもネット散策してみると「ヒント言われてやっとわかった」なんて書き込みが堂々としてあったりするのよ。つか、そのヒントである「N」に注目しない方が犯人が誰か特定できちゃうんだけど。
 いや、暗号のレベルが低いってことが問題なんじゃなくて、読者のレベルをやたら低く見積もってるところがちょっとなあってことなんだけど。
 『心霊カメラでスクープ』のトリックについては、もうこれやめようよと言いたくなった。某有名アニメでも『Q.E.D.』でも使ってたやつだよ。節操がないというかなんつーか……(-_-;)。

2002年09月25日(水) まあ、冷静な人間なんていないんだけど/『小説ウルトラマン』(金城哲夫)ほか
2001年09月25日(火) リアル・ホームズ/『トンデモ本の世界R』(と学会)/『けだものカンパニー』3巻(唐沢なをき)
2000年09月25日(月) 日記のネタはどこにでも/ビデオ『労働戦士ハタラッカー』ほか



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