無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2002年11月07日(木) 吉野作造と鞍馬天狗/『トリック・ザ・コミック』(堤幸彦・蒔田光治・林誠人・西川淳)/『トラマガ』vol.2ほか

 母の命日であるが、父からは何の連絡もない。
 どっちにしろ仕事がビッチリと詰まってて、墓参りに行く時間とてないが。
 どうせ偏屈な父のことだから、あとになって「この親不幸もんが」と文句を言ってくることは予想がつくのだが、だからと言って7回忌も終わったのに私がやることなんて今更何もないのである。

 晩飯は久しぶりに「王将」。
 酢豚がフェアで100円引きということだったのでもちろんそれを頼む。それだけでは物足りなかったので、エビの唐揚げも。いや、ふたつ合わせてもたいした量じゃないのよ。この店、「安さ」が取り柄なんだから。
 しげはセット+私の皿のピンはね。自分が頼んだ餃子は「気分が悪い」とか言って食べない。結局エビはほとんど食われた。……だったら最初からエビ注文しろよ。何でこの世にはこうもエビに執着する女が多いのか。

 この店、こないだから窓際の棚のところになぜか仮面ライダー1号だの龍騎だのガンダムだのザクレロ(渋いなあ)だののフィギュアが置かれてるのだけれど、それがどんどんあちこちに増殖していて、トイレやレジのところにまで侵食しつつあるのである。……誰か作ってるやついるな。店長か? この「王将」とオタクフィギュアとのミスマッチがなんとも言えないムードを醸し出しているのだが、意外とそんな店、探せばもっとあるような気がする。
 みなさんのご近所にもヘンなもの飾ってる店ってありませんか?
 

 マンガ、堤幸彦監修・蒔田光治/林誠人原作・西川淳漫画『TRICK THE COMIC トリック・ザ・コミック』(角川書店・588円)。
 テレビ第一シリーズの中から『母の泉』『パントマイムで人を殺す女』『千里眼の男』をピックアップして漫画化。だも多分、続編が描かれることはなかろう(^_^;)。
 しかしおっそろしく下手な絵だなあ。
 いや、ヘタというよりなんか汚い印象だねえ、コマ割りはゴチャゴチャしてて見難いし、ひとコマひとコマの構図も不安定だし、そりゃなぜかって言うと透視法が全然できてないせいだし(基本なのにな)、キャラクターもドギツイのばっかで特に上田の顔なんか、歪みまくっててコマごとに違うし。コマによっては一所懸命阿部寛に似せようとしたところもあって、健気なんだけど。
 でもここまでヘタだとかえって愛着がわくような錯覚を覚えちゃうからフシギだ。とりあえず小説読むのはカッタルイ、ビデオはいつもレンタル中って人はこれでも読んでみたら? 特に得はさせませんが。


 なんとなく買ってしまった雑誌、『トラマガ』vol.2(インフォレスト・690円)。
 表紙の『ガンバ!』のタイトル文字(なんと誌名よりデカイ)につい惹かれちゃったせいだけれど、中身は斎藤惇夫の原作を忠実にコミック化するというのだから、これはもう、期待するな、というほうが無理な話だ。
 アニメ版で7匹に絞りこまれた(これも『七人の侍』を意識してるのだね)キャラクターを原作通りに戻す。
 つまり、ガンバ、イカサマ、シジン、ガクシャ、ヨイショ、ボーボ、忠太のほかに、アニメ未登場だったバレット、イダテン、オイボレ、カリック、ジャンプ、アナホリ、マンプク、バス&テノールが、アニメのオリジナルデザイン担当した椛島義夫氏の手によって新たに描き下ろされるのである!(実際の作画は一式まさと氏が担当)いやあ、なんか燃えちゃうねえ。でも原作通りに行くとなると、アニメ版ではせっかく命が助かってたあのコが死んじゃうことに……。
 けれどそれでもこれはぜひ完結させてほしいマンガなんである。だから3号雑誌に終わらないで、ちゃんと完結するまで雑誌を続けてほしいんだけど、看板マンガが『ゲームセンター荒らしA』だからねえ。今時平安京エイリアンやってるからねえ(-_-;)。どうにもムリっぽいんだよなあ。


 雑誌『國文學』11月号(學燈社)が、「<時代小説>のアルケオロジー」という特集を組んでいる。
 巻頭、井上ひさしが「吉野作造と鞍馬天狗」と題して、「東大法学部(大正時代は法科大学)時代、大佛次郎は吉野作造の講義を聞いたはずだ」という前提で、みだりに暴力を振るわない鞍馬天狗の穏やかさは、吉野作造の穏健さの影響のもとにあるのではないか、と推察している。
 その見方自体は面白いのだが、井上さん、やや興奮気味に「両者に密な交流があったかどうかを突き止めたい」とまで語ってるのである。これって、先入観入りまくりだから、研究の仕方としてはあまり勧められた方法じゃないんだけどね。仮に吉野作造の影響を大佛次郎が受けていたとしても、鞍馬天狗の優しさがそれだけで説明できるわけではないのである。もしかして、大佛次郎のおかあちゃんが優しかったことの影響のほうが大きいかもしれないじゃないの(^^)。
 この、「誰それと誰それは実は意外な縁で結ばれていた」ってのについ惹かれちゃうってのは「成吉思汗は実は源義経であった」と同じくトンデモな発想なのである。
 仮にもダイガクとやらいうところに籍を置いたことがあってよ、曲がりなりにも「ケンキュウ」とかいうものを経験したことがあったら、こんなハッタリかますことにしかならない調査はするもんじゃない、とたしなめられてるはずなのに、井上さん、こういうところがシロウトなんだよなあ。だからずっとバカにされ続けてるんである。いやまあ、研究するなとは言わんけどね。

 でも私もあまり人のことは言えない。
 芥川龍之介の『羅生門』について、あるとき「この演劇的構造、映画的手法、主人公のアウトロー的性格は初期のピカレスクロマンとしてのチャップリン映画の影響を受けてるのではないか?」とヒラメいて(これが曲者)、散々資料を漁ったのだが、芥川が晩年、チャップリンを天才だと大絶賛していることはわかったものの、『羅生門』以前に、いつどこでどの程度チャップリンを見ていたかを示す資料を探し当てることはできなかったのである。
 だってそのころの芥川って、家の事情で恋人との仲を引き裂かれて、ヤケになって散々遊びまわってたころなんだもの。どの資料読んでも関係者の口が重くってよ(^_^;)。一緒に遊んでたなおまえら。
 だからなんつーか『羅生門』って、「マジメに生きたって意味ないじゃん、悪いことして何が悪いんだよ」というヤンキーの自己弁護みたいな開き直りの小説なワケなんで、人間のエゴイズムを鋭く抉るなんてたいしたテーマないのよ、もともと。
 そこに浮浪者チャップリンことアルコール先生の面影を見出すことは確かに可能なんだけれど可能ってだけだからな(^_^;)。でもハッタリとしては面白いでしょ? いや、つい引っかかっちゃいましたよ。情けない話ですが。

 『國文學』という雑誌がこういう大衆小説の特集を組むことは珍しいのだが、お固いばかりじゃないのよ、という宣伝だろうか。村上知彦が『バガボンド』批評をさせられてるのもなんだか客寄せみたいでアザトイ気はするが、世間の動きを無視するよりはマシかもしれない(関係ないけど村上さん「押しも押されぬ」なんてコトバの誤用しちゃいけませんよ。「押しも押されもせぬ」でしょ? 編集者もどうして校正段階で注意してあげないかね)。

 高橋敏夫、縄田一男両氏による「時代小説50選」、他愛無い試みであるが結構楽しい。こういうものの常として「どうしてアレが入ってないんだ!」というツッコミはしたくなるものだが、まあ偏りがないように努力しているラインナップではある。宮部みゆきや京極夏彦など現在活躍中の作家もちゃんと視野に入れてるところは立派。
 けど、ヒトコト言わせてもらえば、久生十蘭の『顎十郎捕物帳』(吉本新喜劇の人じゃないよ)や、都筑道夫の『なめくじ長屋捕物さわぎ』は入れてほしかったなあ。
 それにしてもとても全部の記事について言及はできないけれど、時代小説ファンにとって今号の特集は資料的にも価値あるものだと思いますです。御照覧あれ。

 でもちょっとだけ気になるのは、今回の特集のサブタイトルである。なんで「アルケオなんたら」とかハイカラな言葉使いたがるかね。素直に「考古学」と言えばいいじゃん。「国文学」って雑誌タイトルすら旧漢字のままで押し通してるクセにねえ。
 私もアルケオプテリクス=始祖鳥って知識が無かったら、「アルケ……? なんやねん」と戸惑うところであった。……って、そういう方面で英単語覚えてるのかよ、おまえは(と自分ツッコミ)。

2001年11月07日(水) 暗号解読/アニメ『ヒカルの碁』第五局/「西原理恵子のご託宣ポストカード」ほか
2000年11月07日(火) 昔の映画も見よう……/『笑わない数学者』(森博嗣)



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