無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2001年11月07日(水) 暗号解読/アニメ『ヒカルの碁』第五局/「西原理恵子のご託宣ポストカード」ほか

オタアミ当日まであと17日! 17日しかないのだ!

 今日はどうやら仕事上、ちょっとポカをやらかしたらしい。
 らしいってのは、そのミスに気付かないまま帰っちゃったので、手違いに気付いたのが翌日になったから。ミスの中身はどんなのかってーと、ある仕事の担当になってたんだけど、見事にそれをすっ飛ばしてしまったのだ。
 原因はまあ、予定表にあったスケジュールを私が見落としたってことなんで、悪いのは私なんだが、始末に悪いのは、何度も表を見て確認しておきながら、それでいてミスったってことなんだなあ。
 ただねえ、ちょっとだけ私も言い訳というか、文句言いたいのはねえ、そのミスした原因ってのが、「私の名前が書き間違えられてる」ってことにあったわけよ。
 私はこの日記やネット上では有久とか藤原とか名乗っちゃいるが、これはどちらも本名じゃない。私の本名は、日本でも珍名に属する名字なんで、ウチに来る配達物の半分くらいは文字を間違えて送られてくる。
 もう何十年も間違えられ続けているので、もう慣れっこになって腹を立てたりすることはなくなったけど、ただでさえもともと視力が弱い上に誤字までされちゃうと、「これは自分のことだ」って認識できないこと多いのだ。
 それがあるから、私も注意に注意を重ねてるつもりなんだけれど、やっぱりミスが起きるときは起きちゃうんだよねえ。まあ、すごいミスってわけでもなかったから、一応、フォローはできたけどさ。

 それにしても、怒りはしないが、未だに名前書き間違えられると、淋しい気分にはなる。二十年来の親友に名前書き間違えられた時には、さすがにちょっと二、三日は落ちこんだし。
 一時期、本気で拗ねてた時期には名前書き間違えた相手にはこちらも相手の名前をワザと誤字って返事出したりもしてたんだが、もっと淋しくなってやめた。
 ……え〜、知り合いのみなさん、私から手紙貰って、「名前が違うじゃん!」と怒った経験がおありの方、実はそういう事情があったんです。子供っぽい真似をして申し訳ありませんでした。すみません。
 今はもう、間違えられやすい名字の家に生まれた不運だと言うしかないなあ、と達観してますです。

 でも、世の中不思議だなあ、と思うのは「名前が違いますよ」と言っても「すみません」と謝りもせず、やはり、間違いのまま押し通す人がたまにいることだ。
 (例)
 「いやあ、吉田さん」
 「……私、山田ですけど」
 「ああ、そうでしたね、吉田さん」
 「いや、だから山田ですってば」
 「それはどうも吉田さん」
 「……」
 冗談みたいだが、相手が珍名であるかないかに関わらず、こういう人は実在するのだ。多分、脳の回路が、一度インプットした情報の修正をとことん嫌っているからなのであろう。
 で、日本人の数%は確実にこの類の人間だ。筆頭は誰もがこの人を想起するであろう某「ミスター」(^_^;)。


 6日、イギリスの劇作家、アンソニー・シェーファーが心臓発作のため死去。75歳だった。
 ミステリ作家の実力を評価する基準として、小説にしろ戯曲にしろ、その表現形式をいかに熟知して利用しているかってことを見る必要があると思う。
 そう考えると、この人の『スルース(探偵)』は、「舞台だからこそ」成り立つ作品だったと断言できる。本作はローレンス・オリヴィエ、マイケル・ケイン主演で映画化されたが、実はその「舞台だからこそ生きる」トリックが、映画では完全に死んでしまっているのだ。
 この舞台ならではのトリックがどれだけ凄かったかというのは、一昨年、劇団四季が福岡で日下武史、下村尊則主演で公演されたものを見た観客の中に、芝居が終わって全てのトリックが明かされてなお、その真相に気付いていない者が多数いたという事実でも証明できよう。ロビーに出てきた観客がペチャクチャ喋ってるのを聞いてると、ホントに殆どの人間がよくわかってなかったりするのだ。なにしろ、私と一緒に見に行ってたUさんも、私が解説するまで、自分が騙されてたことに気付いてなかったものなあ。
 更に言えば、この『スルース』を上演するなら、できれば四季とかそんなでっかい劇団じゃなくて、ホントに小さな、メンバーの確保すらままならないようなごく小人数の劇団でやった方が観客が引っかかる確率が弥増すのである。映画版のオリヴィエとケインじゃ、もうかえってバレバレ。でも、私も最初に舞台で見ていたら、見事に騙されてたかも知れない。
 トリックを明かさないでこんなこと書くとどんなんだか気になる人もいようが、ミステリの作法として、真相は明かせないので、未見の方はどうかご容赦。でもこのトリックは形を変えて、押井守が殆どの自作で使ってます。……あのヒト、ホントに演劇マニアだからねえ。
 あ、ネットで検索して、スジを書いてる人いないか探してみてもムダですよ。確かに本人が真相だと思ってること書いてるヒトも何人かいたけど、やっぱり肝心要のトリックについてはみんな騙されっぱなしだったから(^_^;)。

 なんやかやと、この『スルース』一作で語られることの多いシェーファー氏だけれど、映画の脚本も多数手がけている。
 新聞記事にはアルフレッド・ヒッチコック監督の『フレンジー』しか紹介されてなかったが、あのアガサ・クリスティー原作、ピーター・ユスティノフ主演によるエルキュール・ポアロシリーズ『ナイル殺人事件』『地中海殺人事件』『死海殺人事件』三部作の脚本を担当していたのが彼。前作のアルバート・フィニー主演、ポール・デーン脚本、シドニー・ルメット監督の『オリエント急行殺人事件』が本格ミステリ屈指の傑作だったために、どうもこの後期のシリーズは過小評価されがちなんだが、それは主演が原作のポアロのイメージから程遠いのと、監督が二流に落ちたせいで、脚本そのものはキッチリ本格ミステリしてくれていて悪い出来ではない。
 ただ、あまりにもキッチリとセオリーを踏んで観客に対してフェアに臨んでいるせいで、『スルース』のような表現媒体そのものをトリックに利用するような大ワザは使えず、ちょっとミステリに馴れたヒトなら、犯人もトリックもすぐにわかってしまうというちょっとした欠点はあった。このへんのDVDも既に既発なんでほしいんだけど、ビデオはもう持ってんだよなあ。
 あと、『アマデウス』の劇作家ピーター・シェーファーとは双子の兄弟。『アマデウス』も一種のミステリとして見れるし、二人揃って相当なマニアだったのだ。年を召していたとはいえ、残念なことである。


 今日もなんとか早目に帰れる。
 帰宅してテレビをつけたら『スクライド』のラストのあたり。
 しげはどういうわけかすっかり疲れていて、一緒にアニメ見ようかと誘ってもノってこない。
 こないだからしげは「今一週間で楽しみにしてるアニメは『ナジカ』と『テニプリ』」と言ってたから、てっきり一緒に見るもんだと思っていたのに、アテが外れた。
 初めから一人で見ると思ってみるのと、二人で見るはずが一人になって見るのとではこちらの気分のノリも自然と違ってくる。なんだかいつも以上にちょっとしたセリフの陳腐さが気になって、なかなか楽しめないのであった。

 アニメ『シャーマンキング』第十九廻「2人のビッグソウル」
 負けたらシャーマンキングへの道が閉ざされてしまうっていうのに、葉はいつも通りのんびりした態度。まん太があせってせっついてもどこ吹く風ってのはもとからの葉のキャラクターなんだろうけど、相手になる道蓮の方が「俺は絶対シャーマンキングになる!」なんて必要以上に力んでるんじゃ、初めから勝負はわかりきってるじゃないの。盛りあがらないよなあ。
 飄々としてるけど強いってキャラクターを主人公にするんだったら、基本的に対決ものは御法度なんである。弱そうに見えて強いってのがその魅力なんだから、階梯を一歩一歩上がって行くような「努力もの」とは水と油じゃないか。こうえいうところ、何でも対決ものにすりゃウケるという「ジャンプ」の手抜き編集ぶりが露骨だ。月影兵庫みたいに放浪ものにした方がずっとキャラが生きるのに、どうしてこう同じような展開ばかりさせるかなあ。
 ああ、あと細かいとこだけど、「摩多霊園」ってネーミングセンスはなんとかならんのかな、ギャグマンガじゃないんだから。


 『テニスの王子様』を見ている間に、ウトウトして私も眠る。
 仕事があるしげは「8時半に起こしてね」と言ってたが、つい寝過ごすところだった。しげ、ぎりぎりの時間に慌てて出かける。
 『ヒカルの碁』第五局「覚醒の予感」。
 うっかり寝ちゃったけれど、これはビデオに録画しておいたので、改めて見返す。女の子人気のたかい加賀だけど、私は女じゃないので関心はなし。連載当時からこのキャラ、あまりいらないなあと思ってたんだけど、物語が複雑になってる今の原作と比較すると、キャラの底の薄さが目立つ。
 塔矢アキラに同情を受けたからって、将棋に走ったり「塔矢に勝った」とか感情的になって嘯いてちゃ、ヒカルのライバルとしても仲間としても座りが悪くなるのは仕方がない。キャラを立てるためとは言え、あの扇子もリアリティを完全に無くす原因になってる。スタッフもそのへんを感じているのか、キャラクターデザインが濃いわりには、加賀は原作ほどには動かない。原作つきアニメの難しいところは、人気キャラほど動かしにくくなるということだろう。


 FBS『ザ!世界仰天ニュース』。
 詐欺師の手口を紹介している番組だが、たいていはまあ何十年も前から使い古された、なのに今でも引っかかるヒトが多い、老人相手の詐欺ものばかり。
 けど、1999年限定で香港であったという「千年蟲」事件は言わば「流行新語」を利用した詐欺で、なかなか面白かった。
 言うまでもなく「千年蟲」とは「YK2」、例の2000年にコンピューターが誤作動するかも、というアレのことだったんだけど、中国人の中には「千年蟲」ってのを本当に何かの病気の原因になる虫だと勘違いしてたヒトも多かったらしい。で、「千年蟲」に効く薬を売りつける詐欺が現実にあったとか。
 ……って、そのネタ、唐沢なをきの『電脳炎』にあったじゃん。日本人が勘違いするならわかるが、なんでそのコトバ作った中国人自身が勘違いしてんだよ。前々から思ってたけど、国民性なのかどうだか、中国語って、なんか大雑把で語彙力少ないよなあ。


 FBS『レッツ・ゴー!永田町』。
 もう何回目なのかな、初めて見たけど、現実の政治をこうストレートにパロディにしたドラマも珍しいなあ。田中角栄が首相だったころはやたら多かったけど、今こんな番組が企画されるってこともやっぱり小泉人気の表れなんだろうな。
 でも、和泉首相の岩城洸一ってのはちょっと違うんじゃないかと思うんだけど、田坂外相の室井滋はもうクリソツ。いや、ベースはモノマネなんだけど、首を傾げて振り返るとこなんか、つい笑っちゃったよ。
 ドラマは何となくショボそうだけど、気が向いたら来週も見てみようかな。


 しげの日記がこないだから漢字変換しないままで書いてるもので、殆ど意味が解らない。
 ただでさえ、文章化しないで単語を羅列するだけなのに、下手に意味のあるコトバに変換してくれるので、かえって何のことやらわからなくなるのだ。昨日のもやっとの思いで判読した。
 
 送り。(←「自動車で私を職場まで送ってくれてたことを指すと思われる)
 サム。(←「寒い」だな。いきなリ外人の名前が出てきたら驚くぞ。サムと何かあったのか)
 ロワイヤル、本、スタンド。(←「ロイヤルホストに行って、本屋に寄って、ガソリンスタンドに行った」ということらしい)
猫の用にさまよう。(←「ように」だな)
デザート作戦失敗。(←よくわからんがデザートを食べそこなったらしい)
ね。(←「昼寝した」と言うことだな)
向かい。(←私を職場まで「迎え」に行ったことを指す。日本語は正確に使え)
勝つ。(←「トンカツを食った」と言いたいらしい)
まま。(←「まあまあ」か? 何について言ったものか意味不明)
損だけ?(←「今日はそれだけで書くことないかな?」と言いたいのだろうか)
ア、お手紙。(←どうやら私の友人から、手紙がしげ宛てに届いたことを指すものと思われる)
お間ムリ。(←最初「おかんむり」かと思ったが、その友人の封書に、「交通安全のお守り」が封入されていたのだった)
つける場所探す。(←車のどこにお守りをつければいいか、場所を探した、ということ)
お返事書こう。(←これはそのまま)
お休み。(←さっさと寝なさい)

 ……時間が経ったら、私でも判読できんぞ。備忘録のために始めたくせに、日記を暗号にしてどうすんだよ(-_-;)。


 「西原理恵子のご託宣ポストカード」。
 二日続けてサイバラかい(^_^;)。
 なんでもケータイ用に描いたイラストが横長で使えなかったので、急遽ポストカードにしちゃったそうだが、まあ、一般的な感覚だと人に送れるモノが一枚としてないのがやっぱりすごいなあ。逆に言えば、このハガキを送られて怒らない人は真のディレッタントであろう。
 友達に「金額でゆうと二千円くらいの友情。」ってハガキ送ったら怒るかな、とちょっと考えて、劇団のメンバーも含めて、私の友人にそんなケツの穴の狭いヤツはいない、ということに気がつき、ホッとした。私は実に友人・知人に恵まれている。
 蛇足的説明だけど、この「金額でゆうと」ってのは当然「山下清」の「軍隊の位で言うと」のパロディね。
 AIQのみなさんには、年賀状がわりにこの中の一枚をお送りすることも考えたが、多分みなさん、ご自分で買っていらっしゃるだろうから意味ないか。元日に「夕ぐれまでいじりたおす日。」(ナニをいじるかは自明)なんての送られたら、みなさん狂喜しそうではあるが。
 悲しいことに、職場のつきあいでこういうギャグにつきあってくれそうなイキな人が殆どいない。上司に「明日はきっと今日より悪い日」なんて送ったら本気にしそうだしなあ。つくづくツマラン職場に就職したものである。
 以前出してたシールもそうだけど、こういうギャグに対して喜ぶ人と顔を顰める人と、人間は確実に2種類に別れる。喜ぶ人がどんどん増えてけば、世の中ずいぶん住みやすくなるんだけどなあ。

2000年11月07日(火) 昔の映画も見よう……/『笑わない数学者』(森博嗣)



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