無責任賛歌
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2002年10月26日(土) |
確信犯だったのか柳美里/DVD『ビリイ★ザ★キッドの新しい夜明け』/『新暗行御史』第四巻(尹仁完・梁慶一)ほか |
ついうっかり書き忘れていたが、しげの初心者マークがついに外れた。 なんだか永遠に初心者ってイメージがあったんだが、時間は確実に流れているのである。流れてるだけって気もするが。 今、初心者マークはウチの玄関のドアに二つ並んで張りつけられています(^o^)。
柳美里のデビュー作『石に泳ぐ魚』の改訂版が刊行されることになったとか。 改訂前の小説は、主人公のモデルとなった女性のプライバシー、名誉などを侵害したとして、出版差し止めの最高裁判決を受けたのだが、その際に指摘された「問題の箇所」を全て書き換えたそうで、こうなるとあの裁判は改訂版を出すための布石だったのかなとカングリたくなる。『脱ゴーマニズム宣言』と同じ手だね。 モデル女性の弁護団は「話題性を逆手に取った商業主義だ。女性の苦しみをこれ以上増やさないためにも、出版を自制すべきだ」と訴えているそうだが、当の女性は「もうこの件には関わりたくない」とも言っているらしい。 原告側はこの改訂版についても出版差し止めを求めたが、一審判決で棄却されたという経緯がある。となれば最終的に出版を止めることは出来ないんじゃないかな。裁判自体は原告の勝訴なんだろうけれど、実質的には柳さんの勝ち、ということなんだろう。なんだか後味が悪いな。 とりあえず出たら買って読んでみましょうかね。
しげは職場の飲み会で朝帰りである。っつーかいつも朝帰りなんだけれど、今日は9時過ぎまでどこぞで遊んでたらしい。でも今日はAIQの集まりもあるんだけど、からだ持つのか……と思ったら早速寝室でイビキをかきはじめた。「寝る時間がない」とかしょっちゅう言ってるが、家事がいっこうに進んでないことからそれが全くのウソであることが解るのである。 だからいい加減でテメエが血塗れにしたオレのパンツ洗えって。
DVD『ビリイ★ザ★キッドの新しい夜明け』。 1986年にパルコが製作したスーパーエキセントリック&キテレツな映画がついにDVD化。 いや、これはマジで欲しかった待望の一枚。誰もが認める傑作というのでなく、思いっきりカルトなんだけれど、公開当時からこれは私のフェイバリットムービーのベスト3に入ってるのである。それにしてもまさかこんなマイナーなのが21世紀に復活してDVDになるとは思ってもみなかった。これに出演している役者さんたち、今は有名になっている人が多いけれど、当時は殆どが無名のド新人だったのである。 おハナシもちょっとマトモじゃない。 高橋源一郎の『さようなら、ギャングたち』『虹の彼方に』『ジョン・レノン対火星人』をベースにしてるというタテマエにはなっているが、実際は山川直人監督の暴走大爆発なオリジナル脚本である。 国籍不明の酒場「スローターハウス」(こりゃ間違いなくヴォネガットへのオマージュだろう)は今しも横行するギャングたちに狙われていた。主人公、ビリィ・ザ・キッドは自分を用心棒として売りこむが、既にそこには6人の用心棒たちが集められていた……。
はい、これが『七人の侍』のパロディだってことは分りますね。けど、問題はその集まった七人にあるのです。 ビリィ・ザ・キッド以外の時代考証無視&国籍不明のその6人とは! 宮本武蔵! サンダース軍曹!(あのテレビドラマ『コンバット』のですよ) マルクス・エンゲルス!(カール・マルクスとフリードリヒ・エンゲルスが合体したそうな。確かに「マルクス・エンゲルス」を一人の人間だと思ってたバカな大学生ってよくいたよな) 104!(電話番号案内の「104」です。「人じゃないじゃん」って、人なんだよこの映画では。番号案内は便利なのでなんでもできるそうである。……って意味不明) 中島みゆき!(なんで中島みゆきが用心棒? なんて理屈で考えてはいけない。演じてる方は下記を参照。中島みゆき本人も気に入っているとか) 全くなんなんだよ、このデタラメさは! ここで引いちゃうマジメな人にはこの映画、絶対に楽しめませんね。宮本武蔵が眼光鋭く酒場の床掃除してるオカシサ、ピンときてほしいんだけどねえ。 ……え? 用心棒が6人しかいないじゃないかって? だからマルクス・エンゲルスは一人で二人なんだってば(^o^)。しかもこいつらマジで強いのよ。中島みゆきですら(^o^)。
「スローターハウス」にはほかにも様々な人々がやってくる。果たして彼らの中にギャングはいるのか? ってハナシなんだが、ここでちょっとその豪華なキャストを列記しよう。これだけ見ててもクラクラしてくるんである。
ビリィ・ザ・キッド…三上博史(初主演) シャーロット・ランプリング…真行寺君枝 中島みゆき…室井 滋 マスター…石橋蓮司 宮本武蔵…内藤剛志 マルクス・エンゲルス…戸浦六宏 サンダース軍曹…加藤善博 104…石井章雄(=ラサール石井) ハリィ・キャラハン…原田芳雄 ブルース・スプリングスティーン…塩野谷正幸 レオニト・ブレジネフ…浅葉克巳 テイタム…オーラ・ラニ ZELDA…ZELDA(高橋佐代子・石原富紀江・小嶋さちほ・小澤亜子) 旧日本警察の巡査…神戸 浩 ヒイラ・モンスターの老婦人…北林谷栄 牧師…海琳正道(みたま・まさみち) 金子光晴のイエス・キリスト…山口晃史 あやしい男…細川俊之 ポパイ…日比野克彦(アニメキャラでなく、雑誌である) ポパイのガールフレンド…遠藤京子 177…郷田ほづみ(天気予報である) 佐々木小次郎…鮎川 誠 近所の針小棒大おばさん…木内みどり・北村 魚(きたむら・とと) パンクボーイズ…メトロファルス(伊藤ヨタロウ・バカボン鈴木・光永“GUN”巌・岩瀬“チャバネ”雅彦・ライオンメリィ) 某国立大教授…栗本慎一郎(当時は現職) 女子大生…井上明子 ヒイラ・モンスターの老婦人の夫…奥村公延 ライアン…マーク・オリアーニ ドイツ将校…ゲオルグ・マティス ハリマオ…平田純一 旧日本海軍の水兵…立原繁人(=徳井 優) MP…肥後克広(ダチョウ倶楽部) ぶりっ子の客…清水よし子(ピンクの電話) 製氷機の運送屋…有園芳紀 ニュースキャスター&ナレーター…三宅裕司 機動隊員…小倉久寛 高橋源一郎…高橋源一郎 その他のエキストラ…劇団七曜日
三上博史の出演は、これ以前にはポール・シュレイダーの『ミシマ』があるが、残念ながら日本未公開。実質、これが映画デビュー作となった。軽薄でお調子者でロリコン(・・;)のビリィを、今じゃ考えられないくらいに軽〜く演じていて楽しそうである。 真行寺君枝も『蘇える金狼』などのチョイ役出演はあったものの、これが本格的な役者としての出演第一作。「ぼけぇ!」のヒトコトがステキだ。 室井滋は『やっぱり猫が好き』の前の出演で、ぴあフェスティバルなどで名前は出ていたものの一般的にはやはり無名。戸浦六宏さんは「滋」という名前から男だと思い込んでいたらしく、どう見ても女なので困惑したそうな。 内藤剛志は『戦場のメリークリスマス』『ヒポクラテスたち』などの出演があるが、ブレイクするのはもちっとあとの『家なき子』から。 ラサール石井や三宅裕司、小倉久寛らについては説明の必要もないだろう。みんな当時は新人だったのである。キリコ・キュービィまで出てるんだもんなあ(^o^)。 ほかにも珍しい人が出てるみたいなんだが、何しろ字幕が英語(つまりアルファベット)なもんで、全員はとても解らない。ダチョウ倶楽部の肥後さんや徳井優さんなんか、出てたの今回見直して初めて気付いた。清水よし子もまだ無名で黙って 突っ立ってるだけで、字幕に名前も出てこない。どこのカットに出てるか探してみよう(笑)。
ベテラン陣もみなさん大活躍。 石橋蓮司さんがそれまでの悪役専門からコメディ演技に転向したきっかけになったのがこの映画や『遊びの時間は終わらない』あたりだろう。「オレにはここを離れられないわけがあるんだ……娘が転校したくないって言うのよ」……アンタ、ちょっと前まで悪霊島で猟銃ぶっ放してなかったか(^_^;)。 戸浦さんは『日本の黒い霧』で学生活動家を演じたセルフパロディを実直に好演。死ぬ時ちゃんと赤旗がバックにはためくのである。「マルクス・エンゲルスは死んでも、弁証法的唯物論と唯物史観とマルクス経済学と共産党宣言は死なないぞっ!」……死んだって、とっくに(^o^)。 原田芳雄や北林谷栄などは多分自分が言ってるセリフが何を意味してるのか(観念的なセリフが並べられてるだけでもともと意味なんてないのである)全く分かってないと思しいが、にもかかわらず、そこにリアリティを持たせている演技力はさすがだ。私はこの北林谷栄の演技は『ビルマの竪琴』以上だと考えているんだけど、賛同者いないか。 そしてびっくりしたぞ神戸浩。神戸浩に初めて出会った時の衝撃、これはとても言葉では表せない。「あまくない、あまくないぞぉー」「かねこみつはるって、まだいきてましたっけ?」。神戸さんと主に絡んだのは、原田さん戸浦さんだが、この芸達者の二人にして、どう演じたらいいかわからなくさせてしまったあの独特の個性。往年のタコ八郎もかくやというあのボケ演技、トロンとした目に半開きの口、テレッとした喋り、私はこの人がホントに知恵遅れなのかヘンな人なのか病気なのか演技なのか全然知らないのだが、ともかく「面白い」としか言いようがないのである。ああ、いったいこの人の面白さをどう表現したらいいのか。無理やりたとえて言うなら、生チャーリィ・ゴードン! もっとも神戸さんに天才になった時のチャーリィは演じられないかもしれないが。「そうねー。まあねー。だいたいねー」。
ZELDAの歌う主題歌『黄金の時間』も珠玉の名曲。 あの清廉な声、なのにどこか切なく、そして聞く者に元気を呼び起こす不思議なメロディーライン。
もはや これまでと あなたを見失ったのは サハラの砂漠 あれから 私はずっと あなたを探しつづけている 鬱金の夜が明けるまで 闇の毛布にくるまって 黄金の時間(とき)は止まったまま 風の嘆きだけを残す 太陽が焦げつき 海があふれ 風がヤキモチを焼く 地球のどこかにあなたが隠れているはず だから…… こんなに陽射しのよい日には 遊び相手が欲しい 帽子と双眼鏡を持って 消えてしまったあなたに会いにゆくの
(耳で確認してるので歌詞にちょっと間違いがあるかも。全歌詞を知ってる人がいたら教えてください) 「黄金の時間」とはルイス・キャロルの「黄金の午後」をモチーフにしているのかもしれない。しかし何よりもこの言葉が胸を打つのは、これが、寂しいくせにそれをオクビにも出さず地球を経巡る覚悟をした少女の物語であるからだ。これだけ壮大な、一つの叙事詩と言ってもいいほどのラブソングを、私は他に知らない。うう、聞くだに泣けるぜ、くそう。人を愛するってんなら、ここまでやらなきゃなあ。 でもどこのカラオケ屋に行っても入ってないんだよこれが(T.T)。
ここまで完璧に私のシュミに合った映画というのはそうそうない。ああもう、この映画について語り出したらもう終わんないこと解りきってるから、このへんでやめよう。 でも最後に一つ、美少女好きな人には嬉しいお知らせ、マスターの娘・テイタム役のオーラ・ラニちゃんにはきっと思いっきり萌えられると思いますよ。いやもう、ちょっとナマイキなところはあるけれど、サラサラの金髪にまん丸な瞳とおハナがかわいーのなんの。どこをどうしたら石橋蓮司からこんな可憐な(しかもなぜか外人)の女の子が生まれるというのだ(^o^)。
寝腐っているしげを叩き起こして、赤煉瓦記念館へ向かうが、寝惚けたしげ、道を間違えて5分遅れて到着。 チケットとチラシが完成、ノルマが今年も課せられたわけだが、さて、どうやって捌こう(-_-;)。職場の人間はアテにできなあいしなあ。トモダチも少ないしなあ。……何を自分で自分を淋しくするようなこと言ってるかな(T∇T)。 会議のあとはいつもの居酒屋で飲み会、食うだけ食う。なんだかやたら喉が乾くのでウーロン茶ばかり追加。 やっぱりぴんでんさんのヤンキー化計画が話題に上るが、ヒキョーなぴんでんさん、嫌がる獅子児さんまで巻きこもうとする。でも二人で金髪でユニット組んだら、ちょうどローレル&ハーディみたいで似合いそうだが(^o^)。
マンガ、尹仁完原作・梁慶一作画『新暗行御史』第四巻(小学館/サンデーGXコミックス・580円)。 前巻あたり、ちょっと話がダレ気味になってたけれど、ミス黄(ファン)の登場が一気に沈滞ムードをふっ飛ばしてくれましたね。おねえ様、ステキだわあ♪ 一粒で二度美味しいというか、純情可憐な眼鏡ッ娘とせくしいだいなまいとなねーちゃんを演じ分けるとはなんという芸達者。クラリスと峰不二子の合体バージョンって……そんな人間おるか(^_^;)。
2001年10月26日(金) それは愛ゆえの殺人か/『孤島の姫君』(今市子)ほか 2000年10月26日(木) さすがに櫃まぶしは英語字幕になかった/映画『ラヂオの時間』ほか
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藤原敬之(ふじわら・けいし)
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