無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2002年06月14日(金) 狂ったヒトふたり。片方は軽いけどね/映画『模倣犯』

 今日はマトモな神経を持った人間なら、繁華街に近づくことを避けたことだろう。
 言わずと知れたサッカー・ワールドカップ(W杯)のことである。
 このあたりがねー、ホントは潮時だと思うんだけどねー、悪い予感が当たって、日本がチュニジアに勝っちまいやがった。よりによって新聞の一面にデカデカと載ってやがるんだぜ、一面。日本全国、何か勘違いしてないかい?
 これでまたしばらく、ウチの職場でもサッカーの話題が喧しくなることだろうな。それは別に構わないんだが、こっちにネタ振ってくるのはやめてくれ。私ゃ、中田英寿以外のサッカー選手なんて、ペレとベッケンバウアーしか知らんのだ。私がサッカーに全然興味がないって顔をすると、「こいつ人間か?」みたいなジト目で見られるんだからたまったもんじゃない。
 私を興奮させたいんなら、宇宙人とのファーストコンタクトのニュースでも知らせてくれ。だいたいおまえらだって、ついこないだまでサッカーのサの字も知らなかった俄かファンだろうに、どうしてそこまでサッカーのオーソリティーみたいなデカイ面ができるのだ。知ったかぶるな。酢豆腐でも食わしたろか。~凸(-~~- )

 全国各地では、繁華街に警官が出張る騒ぎになったところも多かったようだ。
 「サポーター」なんて包帯みたいな名前付けられて喜んでる馬鹿も多いが、何をサポートしてるんだ。川や池に飛び込んだり、店のショーウィンドーぶちやぶったり、電柱や信号機にぶら下がったりするのの、どこがサポーターなんだ。ただの猿ではないか。
 けれど、そういう猿が大挙して出現してくれないと、イベントは儲からないんだよね。純粋にサッカーを楽しみ応援するファンの方々は猿どもの暴挙を苦々しく思っておられることと思うが、猿どもがゼニを落としてくれないと、ツケはあとで市民、国民に負担させられちゃうんである。
 マジメに考えて、ゼニを落としてくれるついでにサッカーの評判も落とすのと、落ちついて観戦はできるけれど客席は閑古鳥が鳴いてて全然盛りあがらないのと、ハテ、どっちがいいのかね。


 この騒ぎのおかげで、いろんなニュースが陰に隠れてしまっている。
 いや、政治の話も私にはどーでもいいんで、もっぱら下世話な方面ね。
 大阪教育大付属池田小学校での児童殺傷事件の犯人、宅間守被告が、捜査段階での供述で、「児童のめい福を祈るとか悪いことをしたとかいう気持ちはない。百人殺そうが千人殺そうが、私は自分のことしか考えない」とか、「事故で大勢死ぬのと私に殺されたのと、何も変わりはないのに、マスコミは騒ぎすぎだと思う」などと語っていたことが公判で明らかになった。
 ご遺族の方はもう怒り心頭に発する証言だろうが、皮肉なことに、これで宅間被告が近来稀に見る正直者であることが証明されてしまった。ここには一片の虚飾も虚偽もない。宅間被告は全く嘘偽りなく自分の気持ちをストレートに語っている。
 しかもその分析がまた正鵠を射ているんだよね。だって、今や日本人はみんなサッカーに狂っていて、池田小の事件のことなんて、遠くで起こった交通事故並にしかもう見ていないから。今のサッカー狂いに対して、「少しは頭冷やせよ」と言ったところで馬耳東風だろう。まさしく「(ずっと前に死んだ)児童のめい福を祈るとかいう気持ちは(オレはサッカー見てなきゃならないから)ない。(自分に関係ないヤツが誰かを)百人殺そうが千人殺そうが、私は自分のことしか考えない(から気にしない)」心理状態にないか。
 不謹慎な発言であることを承知の上で言うが、なんかデカイ事件が起きて、世間のサッカー熱を吹き飛ばしてくれないもんかね。こんなもんを国民的行事にしてしまっちゃいかんという気がマジでしてきたぞ。


 も一つ、これはオタク関連のニュース。
 テレビ『ウルトラマンコスモス』の主役、杉浦太陽が、二年前の2000年9月、弟の友人の専門学校生が自宅から4万円の現金を盗んだことを理由に暴行。更に迷惑料として自分の口座に45万円を振り込ませたということで逮捕された。
 爽やかそうな顔してて、エライヤンキーなことやってたんだなあ。
 TBSは早々と番組の打ち切りを決めたそうだけど、一応、最終回までは収録がすんでいたそうである。するってーと、杉浦太陽がカムバックするまで、コスモス最終回は幻のフィルムになるってわけかな。けれどこれは差別の問題に絡んでるわけじゃなし、復帰した時に「申し訳ありませんでした」とアタマ下げときゃ、ミソギはすんだってことになるのが芸能界ってとこだから、いずれ解禁になるでしょうよ。慌てて今見とかなきゃならないほどの番組でもないし(隊員のユニフォームがだぶつき過ぎてて女性隊員のボディーラインがわからんじゃないか)、それこそ大騒ぎすることもなかんべさ。
 芸能人の何人かが、「先に金取った方が悪い」とか擁護してるらしいけど、じゃあ、「カネ脅迫して取っていい」ってことになるの? ただのバカなのか、それとも何らかの裏事情を知ってての発言なのか、わからんねえ。
 いっそのこと、今までのフィルムも全て杉浦太陽の出演シーンだけ他の役者に差し換えて作りなおしたらどうだい。で、その代理の役者がまた不祥事起こしたりしてたら笑えるんだが。


 今日はしげの仕事が休みになったので、夜、映画を見に行くことにする。
 けれど、9時台の映画まではまだまだ時間があるので、父の店によって、散髪をしてもらう。
 野球好きでもサッカーには興味がない父、「映画に行くとや? ばってん今日は天神には出ん方がよかぞ」と言う。話によると、先日、日本が勝ったときもやっぱり「打ちこわし」があったらしい。
 天神にもあちこちに大画面のクリアビジョンがあるが、ほとんどサッカーを放映していないそうである。映せば、日本が勝った途端に石だのなんだの画面にぶつけたりするからだそうだが、賢明な判断だろう。
 父も「バカが多すぎる」と憤慨している。……やっぱなあ、この騒ぎにシラけテル人間って、案外多いと思うぞ。 


 映画は久しぶりに大野城のワーナーマイカル。
 サティの4階にあるので、上映時間まで時間がつぶしやすい。
 しげの大好きな「銀だこ」、ここでも売っていたが、買って食べてみると、しげの舌には合わなかったそうな。
 「香椎の銀だこのほうが美味しかった」……って、タコヤキにそうたいした差があるのかって。

 映画『模倣犯』。
 宮部みゆきの原作は未だに読んでいないが、私以上に審美眼のハードルの高い
しげが、珍しく「面白いよ」と言っていたので、ホントに面白いんじゃないかと思う。
 私も、原作を読んでから映画を見るか、映画を見てから原作を読むか、往年の角川映画のキャッチコピーのようにしばし悩んだが、映画のスタッフ・キャストを知って、「原作を読むのはあとにしよう」と思った。
 もちろん、森田芳光と中居正広が組んで、ロクな映画ができるはずがない、と踏んだからである。面白い方を後回しにするのは自然な発想だろう。

 冒頭、なんだかよく判らないデジタルな映像の合間に、「……模倣犯……模倣犯……」と、これも人間の声を機械を通して加工したらしい音が流れる。何つーか、ミエミエのアナロジーで、これだけで幻滅してしまう。
 実際、本編中にもやたらデジタルな映像が使われてるんだけれど、これがウルサイばっかり。しげは見てて目がチカチカしてキツかったらしい。
 カントクはさあ、デジタルな価値観が人間性を侵食している象徴として作ったオープニングだ、とかなんとかコリクツこねてるんじゃないかと思うけど、単に目がチカチカして気分が悪くなるだけだって。「ポケモン事件」のマネかよ(多分そんなとこにまで知恵が回ってるとは思えんが)。
 事件を二度なぞるのも、斬新な演出のつもりかもしれないが、別に珍しいものでもない。もともとぶつ切りになってた話を二度繰り返されたって、ただひたすらクドイだけだ。このカントク、今まで映画撮ったことないんじゃないか。

 何がダメって、主役の中居ほか1名が、ただの「本人はアタマがいいと思いこんでるけれど、実は中身のない、えらそうにしてるだけのバカ」だってこと。サスペンスも何も感じさせないどころか、見ていて不快だ。犯罪は雑だし、証拠は残しまくってるし、あまつさえ、事件の直後に堂々とテレビに出るし、全身で「私は犯人です」と言っているようなもの。ミステリーの知的興奮はどこにある。
 世間がまた、中居が犯人だってことに気付かないってのも不自然すぎる。だって、中居、演技力なんてまるでないんだから。
 ワキの役者は結構いい人揃えてるんだがなあ。キャラクターがあれだけ薄いのに、山崎努も木村佳乃もよく頑張って演じてくれてるよ。森田カントク、せめて脚本をプロに任せとけばよかったのになあ。
 パンフレットを読んでみても、監督が、その場の思いつきで、演出をコロコロ変えていった様子がよくわかる。それがハマってりゃいいんだけど、ほとんどが外してるか、あるいは意味不明。
 犯人が、魚を釣り上げるシーンに「軍靴の音をダブらせてくれ」って音響監督に頼んだそうだけれど、その理屈が「魚を釣るのも戦争と同じだ」からだそうな。……イカレたか?
 ラスト、中居が木村佳乃から「あなたは模倣犯よ!」と言われて「オレはオリジナルだ!」と言い返して墓穴掘るシーン、ミステリーの幕切れとしてはあまりに陳腐じゃないか。火サスや土ワイ以下じゃん。この監督、ミステリーを読んだことないんじゃないのか。
 しかも、なぜか突然、中居は爆死。自分が犯人だとバレるとは思ってなかったのだから、自殺の準備を予めしているはずがない。つまりそれって自然発火?
 わはは、プラズマだプラズマだ(^o^)。宙に舞い飛んだ首がテレビカメラに向かってニヤッと笑い、血飛沫が木村佳乃の顔にかかるって……『パノラマ島奇談』がやりたかったのかよう。
 ほかにも欠点をあげつらっていったら、キリがない。これくらいわかりやすい欠点だらけのダメ映画も、近来稀に見るほどではないだろうか。
 ところが、これだけクソな映画でも、マジメに誉めるアホウはいるようなんである。……中居のファンか?

2001年06月14日(木) ミステリー波止場の片足/『あひるの王子さま』1巻(森永あい)



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