恋のさじかげん
れのん



 3人の男との現状

「貴女を愛している。」
そう何度も呟くように、誓うように、「未来」は言った。
私は、「現在」からの着信を、そっと切った。
着信履歴から、「過去」が消えて久しい。
もう二度と見ることの無い「過去」の名前。
ややこしい事態はとうに越した。
ただ、私は「未来」を愛せない。
「未来」は私にほんの少しの夢を見せてくれる。
「未来」は私が失ってしまった純粋さを持っている。
「未来」には、未来がある・・・・。
私には未来が無かった。純粋さも無かった。夢も無かった。
だから、「未来」を見ていると眩しいとさえ、思えた。
「未来」は何度も私を掻き抱いて、
存在を確かめるようにして、
髪の中に、頭の中に、言葉を落としていく。
私は、それを受け入れることが、まだ、、出来ない。
穢れてしまった私は、少しも人を愛せない。
愛してしまってから、愛されないことを恐れるあまり、
私は誰も、好きになれそうに無い。
恐い、怖い、こわい。
人に好かれるのが恐い。
人に愛されるのが怖い。
誰かに本気になる自分がこわい。
自分に、自信が、持てない。



2002年09月19日(木)



 今、書けること。

彼との連絡は絶ったままだ。
今度こそ、本当に別れることになりそう。
それでよかった、と思う。
でも、拭い去れないのは、愛されていなかった事実だろう。
彼は私に執着はあっても、
それは愛しているからのそれではなかった。
きっと、離れていこうとする私を、
単純に、モテた歴史しかない彼が、引き止めたかっただけ。
そんな一方的な感情を彼は愛だと言った。
辛い数ヶ月だった。
4月に就職したばかりの仕事を棄てることも考えた。
両親や友達にも、その旨を伝えなければいけない、
不倫の事実を周知のものにするのは辛かった。
けれど、そんな体裁よりも、
私は彼を選ぼうと思ったけれど。。。
彼にはそばに女性が必要だった。
何度も、私を愛していて、将来を考えていて、
妻と別れることを考えていると言ったけれど、
ひとりでなんていられない人だった。
家族と暮らし、安定した状態で無いと、
不倫なんて出来ない人だった。
弱い人だった。脆弱すぎる精神だった。
家族と暮らしている彼と言う存在が、
どれほど独身の私を苦しめたか、
彼は結局、何も理解しなかった。
きっと、親離れできない人だったのだと思う。
誰かに許されること、誰かに受け入れられることを当然と思う人は、
少なくとも、そういう傾向がある。
誰かに許されることも、受け入れられることも、
とても、幸せで、希少なこと。
彼にはそういった気持ちが希薄だったのだと思う。
愛されたら、愛し返さなければいけないなんて思わない。
でも、愛されたら、気持ちをむげには出来なくて、
誠意を持って、接するのが一番。
もちろん、二股はあかんけど(笑)
そして、彼は私の人生に大きな傷跡を残した。
人生を引っ掻き回された。
彼の一挙手一投足が私の心を揺らした。
挙句の果てに、
自分が身軽になってから近づいてきた昔の女友達と、
思いを遂げることになって、
必要なくなった私を紙くずのように捨てた。
私の苦しみぬいた3年半なんて、糞みたいなもん。
家庭を壊さないように、日陰に徹した私のことなんて、
やっぱり、気づかないままに。
彼は、単なる浮気者に過ぎなかった。
でも、そんなこと、もう、どうでもいい。
私は全てを許そうと思った。
ただ、不倫をしてしまった自分の罪は消えないのだけれど。

2002年09月08日(日)



 ほんとうのこと

「よくわかった、ありがと、、、こんな俺でよかったら付き合ってあげて、、、」
(、、、、、、、、、ふむ、人間ってわからんもんやな、、、、)
新しく始まったこの関係は、加速して行きたい。
あなたが、俺を助けてくれるのか、、、、

陽気に生きたい、、、、


彼はそういって、大学時代の同窓生と付き合うことにしたらしい。
ほんの数日で、彼の気持ちは変わる。
耐性の無い人、我慢の無い人、移り気な人。
その程度の男だと、割り切ることにした。
そして、そんな程度の私であったことに、
、、、、泣けた。
馬鹿な3年半を過ごしてきたものだ。
自分を哀れむことしか、出来なかった。
「貴女の幸せのため、身を引く」
彼はそういったけれど、結局は次の女が見つかっただけだった。
それも、また、ありなんだろう。
そして、それもまた、彼の生きかたなのだろう。
冷たい男は、自分勝手で、私を何度も翻弄した。
そして、私自身を愚弄したのだ。そう気づいた。
どんなに強がっても、どんなに嫌いになろうとしても、
私の気持ちは何度でも連れ戻された。
そして、私は嘘をついた。
Tさんとも、Yさんとも、
私は寝ていない。
(もちろん、今後はどうなるのかわからないけれど。)
彼らは、私の心に触れたけれど、
体の関係は望まなかった。
だから、切り離すことが出来なかった。

おかしくなった私は、
もしかしたら、こうなることを臨んでいたのかもしれない。
淡い将来を夢見ることは、彼の子どもや、奥さんへの、
最大級の裏切りになる。
罪悪感にまみれた人生なんて、少しも幸せじゃない。
そして、家族を切り捨ててしまえる彼は、きっと、
私をいつか切り捨てる、
その確信にも似た、恐怖から、私は逃れられる。
これで私は、ひとりの女として生きていける。
とらわれの身ではなく、本当に、
彼から解放されるのだと思った。

私の秘密はまだ続く。
自分の墓場にまで持っていく、そんな秘密が、
実はまだある。

2002年09月04日(水)



 罪深い自分と、やさしい気持ち

ずいぶんと長い間、私は嘘をついてきた。
不倫を守ろうとした結果、私は数多くのものを失った。
後悔はしない。
でも、虚脱感は抜けない。
彼の信頼を失った。だから、彼自身を失った。
ただ、それだけの単純なことだった。
でも、信じてもらえなかったとしても、
そんな事実は無いといえるし、
確かめるすべがあるのなら、証明したいぐらいだった。
地団太を踏んだ。下唇が切れるほど前歯で噛んだ。
けれど、それは私自身の行いのせいだから、
何も言えなかった。
きっと、誤解してると思った。
誤解を解きたいと、いつも思った。
けれど、もう、それも止めた。
誤解を解きたくて語れば語るほど、疑われて、傷付く自分、
私の言葉を信じきれなくて、自分の嫉妬心に傷付く彼を思うと、
何も言わないことが一番、綺麗に別れられる方法だと思った。
それが、例え、永遠の別れになったとしても。
ずっとずっと好きだったけれど、
好きになることにブレーキを掛けすぎた自分を、
少しだけ、哀れにも思った。
人間はバランスだ。背負える重荷も、耐えられる痛みも、
愛する強さも、限りがある。
私は、自分の限度を超えすぎていた?
頑張った自分を静かに癒したいと思った。
ゆっくり寝ようと思う。
朝が来なければいい。
朝に気づかないぐらい、深酒をした。

2002年09月03日(火)
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